表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】ベランダの秘密基地 〜しゃべる猫と、家族のカタチ〜  作者: 木村色吹 @yolu


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/67

第44話:僕らの反撃は続く

 僕と兄、カメさんだけとなった研究室は、一瞬静まり返る。

 だがすぐに檻の奥の犬と猫たちが大騒ぎだ。


「かえる!」の声の大合唱である。


「みんな、今、お迎えを呼ぶから良い子で待ってて!」


 僕は言うけれど、全く大人しくはならない。

 当たり前だ。こんな狭い空間、早く出たいに決まってる。


 早く早くとせがむみんなに、兄と僕は笑うが、兄が()()()()説明を始めた。


「まず、お前たちの家がわからん。それの検索に時間を要するのと、この研究室はそれほど安全じゃない。だからすぐには出せない。オヤツやるから、いい子にしてくれ」


 兄が棚から引っ張り出したのは、にぼしとほねっこだ。

 それを頬張る彼らを見て、僕らは正解を選んだんだ。

 こんなに嬉しそうな彼らを見ながら、兄も満面に笑顔を作っている。


「しかし、意外とむこう、動き早かったな」


 兄が僕に言う。それに僕は笑ってしまう。


「兄さんの中で、これは想定内でしょ?」

「まあな。AAだけってのは、ほんと助かった」


 僕らは最悪も想定済みだった。

 全ての動物が移動している可能性も踏まえて動いていたのだ。


「兄さん、予定通り、ここの子達の手配をお願い。僕は車を探すね」


 そう言ったところで、井上さんの声が聞こえてくる。


『カケルくん、カンタ隊長が報告だって』

「え? カンタが? うん」

『聞こえるか、カケル!』

「車のなかだから、みんなに気をつけてよ」

『わかってるって。大学から3台車が出たんだ。全部それは停めてある。というか、動かせないようにした』

「もう!?」

『俺は仕事早いんだぜ?』

「さすがだな」


 兄に、車をすでに確保済みだと伝えると、驚きながらも親指を立てた。

 兄は今、この研究所に不満のあった先輩方を招集しているのだ。電話であるのは兄らしい。

 ラインで一度連絡は入れてあるが、再度お願いのよう。

 いくら根回しをしていたとはいえ、兄の行動は好ましくは思えなかったはずだ。

 その謝罪とお願いに兄は動いている。


 ………やっぱり兄には頭が上がらないや。


 思っている隙にスマホが震えた。


『あ、あたし! で、車なんだけど、どれに積まれたかはわからないみたい。今、ラインに住所送ったから、そこから一番近い場所、お願いできる? 自転車で15分ぐらい。私たちは一番遠くから攻めてく』


 了解と返し、ラインを開くと、ツイッターにつながる。


「なるほど」


 井上さんのフォロワーさんが、襲撃の車をツイートしてくれている。

 複数の目が彼らを追っているのは間違いない。

 現場の状況が随時ツイートされており、現場の住所もある。


「やっぱり、SNSは怖いねぇ……」


 僕はキャリーバックを片手に集まりはじめた先輩方に頭を下げて、リュック片手に研究所を出る。

 命からがら逃げ出した研究所の彼らがいるのだが、ラグビー部と柔道部、剣道部の面々が取り囲んでいる───

 思わず、呆然と見てしまう。

 ラグビー部の1人と目があった。

 その男性はキラリと笑顔を作り、僕に親指を立てた。


「カケルくん、維くんから頼まれたんだ! 俺たちが見張っているから、存分に動物たちを救ってきてくれ!」


 兄はこの先輩の影響もあるのだろうか……。

 そんなことを思いながら、自転車にまたがり、さっきと同じ裏口から出るが… ……


 マスコミが増えてる……!!!!


 だけど、そこに構っていられない。

 なのに、いくつもの腕とマイクが伸びてくる。

 質問は「()()()()()()()」ばかり。



 裏口の警備員さん1人2人じゃ手に負えない!!!!



 どうしようかと人の波に押されながら、カラスの鳴き声がする。

 日差しに目を細めて見上げると───




 ───カンタだ!

 しっかりカンタが上空で待機しているじゃないか!




 僕が手を上げ、ぐっと拳を作る。


 それだけでいい。

 もう、これだけでいい。


 黒い影が素早く舞い降りてくる………


 黒い雨が降る。


 僕を囲む人間に向かって、カラスが落ちていく!


「ちょっと、なにこれ!」

「おい、カメラにフン、落とすなっ!」


 頭を蹴られ、羽が邪魔をし、さらに鳴き声。

 ヒッチコックさながらの光景に、思わず見入る僕がいる。

 鳴いては蹴るを繰り返すうちに、僕の周りからマスコミが距離を取りはじめた。

 全く襲われない僕に、周りが気付き始める。


 この目は知ってる。



 奇異を見る目───



 一瞬にして静まり返るマスコミの人たちに、これが異様な光景なのだと再認識した。




 だけれど、僕は家族を取り戻したい。




「通してください」



 僕が言うと、ススっと自転車の先に舗装が現れる。

 まるでモーセのよう!


 ……ま、両肩にカラス1羽ずつと、自転車カゴに2羽とまってれば、避けるよね。


 僕はリュックを背負い直し、自転車のペダルを踏み込んだ。



 ハチコとモップが待ってるんだっ!!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ