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088.【誤解】と【理解】、その狭間(2022.05.08)

 いつもご覧いただきまして、誠にありがとうございます。中村尚裕です。


 私、【表現】者であるからには、【観客】の皆さんから【理解】をいただけるように努力しているわけです。

 ところがまあ、【表現】の意図が思うように伝わらないことというのは当たり前のようにありますもので。これは【表現】物に限らず、日常のコミュニケーションについても同様です。『言ったつもり』や『言ったはず』が伝わっていないのはもとより、相手の受け取り方が自分の望んだものと違う――というのも珍しくありません。

 これを「【誤解】だ!」と訂正すること数多。さすがに学んだところでは、人の【理解】の仕方というのは百人百様、【価値観】と同様に【個性】が色濃く出る――ということ。


 よくよく考えてみれば、人が【表現】意図を伝えるにあたっては、【表現】と【解釈】という工程が入るものです。これは我が身を振り返ってみれば、否定のし難い事実です。これは【持論】ですが、何せ自前の意図を『完全に』【表現】することは不可能ですので。

 なぜなら、思い浮かべたイメージをそのまま完璧に作品へ転写できる創作者――というのは、私の知る限り存在していません。これは言語のみならず絵や映像にしてもそうですが、何よりイメージがそのまま転写できるのであればそこに悩みはなく、悩みがないからには【表現】の進歩はあり得ないわけですから。


 よって【表現】に当たっては『【表現】意図を、【作者】が表現媒体に合わせてエンコードする』、つまりは【表現】という工程が入りますし、その【表現】を相手が読み込むには『エンコードされた【表現】意図を、相手の中でデコードする』、つまりは【解釈】という工程が入るわけです。

 このデコードにあたっては、それは【誤解】の余地も生まれようというもの。何せ【解釈】というデコードに当たっては、相手の中にある【知識】や【認識】しか使えません。加えて【認識】には【価値観】すなわち【個性】が大きく影響しますから、どうやっても機械的な完全は期しようがない――ということになります。


 ということで、私の達した【認識】は『全部を伝えようとすると、そこには失敗しか存在しなくなる』と申すもの。裏を返せば『【表現】する際には【歩留まり】(つまりは部分的な失敗)を受け入れて、【冗長性】を持たせた分だけ伝達の成功率は向上する』ということになりますね。


 そういう経緯があって、『全員に【誤解】の余地なく伝わる、正確無比な【表現】』というものの存在を、私は信じておりません。

 逆に『一つ一つの【表現】は曖昧さを残していようとも、【表現】を重ねて【冗長性】を持たせていって、許容範囲にまで【誤解】を減らす』という考え方に実用性を感じるようになったところがあります。

 実際に『単体では【誤解】が10%生じる【表現】』であろうとも、10個【並列】に存在させて【冗長性】を追求したなら、『全体としての【誤解】』が発生する割合は10%(0.1)の10乗、つまりは10のマイナス10乗、100億分の1のまで減らせるわけですから。


 要は眼の前にいる相手や、多くとも興味を持ってくれる【観客】の皆さんに通じればいいわけで。必ずしも全人類を相手取るわけではありませんし、必要なら【表現】を調整することも不可能ではないわけです。


 そう考えてみれば、今度は『伝わりやすい【表現】』を追求するにもハードルは下がることになります。

 一言で全部伝えようと意図してガチガチの【表現】にこだわる必要はなくなりますので、ならば一つ一つの【表現】が多少曖昧であろうとも、『複数の【表現】を重ねて正確を期す』というアプローチが使えることになるわけです。そうなれば【表現】のハードルが【作者】と【観客】いずれの立場にとっても下がるように仕掛けることが可能になりますし、何より相手の【多様性】に怯える必要がなくなります。


 もちろん【作者】の側としても、これで手を抜けるわけでは決してありません。

 『伝わりやすい【表現】』を狙うなら、今度は【作者】側として『【表現】する内容を整理・要約すること』は必須です。どんな状況が前提で、何を伝えたいのか。そこで【作者】として抱いておくイメージは本当にそれでいいのか、などはもちろん自分自身に問い続ける必要があります。【冗長性】は、『無節操なオタク語りが許される免罪符ではない』のですから。


 要は『力の注ぎどころ』を、『より【表現】の本質』へ持っていきやすくなるための考え方――と、少なくとも私はそう受け止めているのでした。


 よろしければまたお付き合い下さいませ。


 それでは引き続き、よろしくお願いいたします。


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