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080.【役作り】を考える(2022.05.21)

 いつもご覧いただきまして、誠にありがとうございます。中村尚裕です。


 私、創作に当たって映画――特に良質な(と私が感じる)洋画から多くを学ばせていただいたことは普段からよく申し上げていることですが。

 これら映画やドラマ、あるいは演劇などでよく耳に(眼に)する考えが【役作り】というものです。よく演者さんが役になり切るべく、思考回路や心理の移ろいを入念にシミュレートする行為ですね。


「この状況なら、登場人物はこのような思いを抱くはず」

「いやいや、この状況なら登場人物はこう考えてこう動くはずでは?」


 このようなイメージを想起なさった方もおいでなのではありますまいか。


 私はこの【役作り】、小説を始めとした【物語】全般においても、【作者】の技量を如実に表す一要素――と考えております。と申しますのも、『【作品】全体の【説得力】にも関わる要素』と認識しておりますからで。


 実は、この【役作り】、果たして演者さんだけのものか――と考えた方もおいでのはず。

 ここで私としては、視界をもっと広げてみることをお勧めしたいところです。


 例えばマンガやイラストといった【絵】に関わる【作者】であれば、さてどうでしょう。想定される状況に応じて、表情はもちろん変わるもの。それは顔に現れるものに限らず、姿勢や仕草にまで及ぶ――と申しますのが私の考え。

 それが何より証拠には、私が「上手い」と感じる方々の多くは佇まいそのものに表情を持たせます。棒立ちということは少なく、【絵】で想定される状況に応じた“芝居”が込められていることが大半です。

 この辺り、アニメーションを想像していただくと腑に落ちやすそうではあります。絵に“芝居”をつけるアニメータの皆さんは、一枚一枚の絵に“芝居”を込めているわけですね。でなければ説得力のある動きになるはずはありませんから。


 では――と、お考えになった【作者】さんも少なくないのではありますまいか。脚本は、もっと応用して小説はどうか――と。


 もちろんこの点、小説においても【役作り】の重要性に関しては例外ではない――と申しますのが私の考え。

 登場人物の心理の移ろい、心の成長、こういったものを扱うからには、登場人物が揃いも揃って無表情――というのは決して自然とは申せません。もちろん表情は顔に限らず、言葉にしても仕草にしても、要は登場人物の“芝居”全般に渡って現れるものでありましょう。


 つまりこの【役作り】、【物語】というものの【作者】全般において、向上を志す上では遅かれ早かれ必要なこと――と私は考えているわけです。


 のみならずこの【役作り】、単に表面的な表情やら心理だけでは収まるものでもない――と私は考えております。

 身を置いた状況をどう捉えるか、どう認識するか――この一点に注目するだけでも、登場人物の“芝居”は変わってきます。申してみれば『状況に対応する“行動原理”と、そこから生まれる言動の数々』にまで【役作り】とその考察は及ぶはずです。


 例えば登場人物として、『部下の心に寄り添う、人心掌握に長けた【好人物】』を描くとします。この【好人物】が、『部下や現場の苦労を踏みにじって何とも思わない【ブラック上司】』の言動の数々を目撃したなら、さてどうでしょう。【ブラック上司】の言動を観察し、その端々から部下や現場を軽んじていることを読み取り、その結果として不快の念を抱くのではないでしょうか。


 ここで仮にこの【好人物】が、【ブラック上司】の言動を前にして何も思わなかったら、さてどうでしょう。

 ブラックな言動の数々に気付かないならば、人心に関わる領域で『鈍さ』を露呈することになりますし、またブラックぶりを見抜いていながら何も思わないのであれば、『部下の心に寄り添う』とは言い難いことになります。であれば、この【作者】と【作品】は『人心掌握に関わる部分』で『【役作り】の甘さ』を表面化させたことになります。


 また、これは主要登場人物に限ったことではありません。

 この【ブラック上司】がのさばっている部署、ここの業務に関わる描写にしても同様です。

 例えばこの部署が軍需物資の調達と輸送を担う兵站部門であったなら。手配に関わる納期管理は最重要クラスの優先事項ですね。

 これが【ブラック上司】なら、例えば自分一人の都合で納期を圧迫しかねませんし、もちろんその影響で現場と部下は神経を尖らせることになるはずですね。これでいきり立つ部下がいないようであれば、今度は『その部署は、とても高い能力を有しているとは言い難い』――ということになるわけです。


 もちろん【作者】や【作品】の作風やこだわり次第で影響度は変化するわけですが、上記のポイント一つ取っても【役作り】の技量は伺えてしまう――ということになります。


 こういったところにまでこだわり抜いたならば、その時は『美は細部に宿る』と評価されるのかも知れませんね。


 と、このような次第で今日も【役作り】に励む私なのでありました。


 よろしければまたお付き合い下さいませ。


 それでは引き続き、よろしくお願いいたします。

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