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067.【登場人物】の造形(2021.11.27)

 いつもご覧いただきまして、誠にありがとうございます。中村尚裕です。


 私、【登場人物】が『【作者】に言わされている・動かされている感』というお話を眼にしたことが何度かあります。


 【観客】の身からしてみれば、【登場人物】も一個の独立した人格です。そこには【行動原理】があり、その【行動原理】が成立した経験や環境といった、要は『人格を形成する背景』が存在する――そのはずなのです。


 私の見るところ、【観客】が『【作者】に言わされている・動かされている感』を感じる根っこには、『【登場人物】の【行動原理】に合わない(と【観客】に映る)言動を、作品の都合上で取らされてしまうこと』があるのでは、と映るところがあります。


 もちろん実在の人物は完璧ではありません。言動に【一貫性】が込もっていないことも少なくはないわけです。ですが高度に理性的な人物ほど、【行動原理】に忠実で言動に【一貫性】を宿していることもまた確か。また観察するところ、【一貫性】を覆す場合でも、その裏には『当人なりの都合』というものが存在します。即ち、『(主に眼先の)都合を優先する【行動原理】』は存在するわけです。


 となれば、詰まるところ【登場人物】にも【行動原理】が在った方が、説得力は備えやすい――ということになります。


 さてこの【行動原理】、どうやって成立するのか――というところに考えを巡らせてみましょう。人格や【価値観】の成立過程を考えてみれば、ある程度の見当はつきそうです。


 人格は、まず生来の気質があるとして、同時に“過去”の出来事からも影響を受けつつ形成されていきます。

 生来の気質は、肉親の性格が大きく影響しそうですね。これは設定書き、それも先頭に表されることが多そうです。つまりここは【作者】の皆様も気付きやすいポイントでありましょう。


 次は“過去”の出来事、ということになります。

 さてここで、【登場人物】の“過去”に何があったか、ということになりますが。

 ここを掘り下げて考えてみましょう。【登場人物】が【物語】開始時点まで生きてきたのは、【物語世界】です。つまりは『【物語世界】の成立過程』、少なくとも【登場人物】の人生分は人格形成に影響があるわけです。また【物語世界】における【価値観】や社会常識なども、人格に影響を与えていて不思議はありません。

 この時点でお察しの方も多いかと推察しますが、『【登場人物】の【行動原理】は、【物語世界】の影響を受ける』ということになります。もちろん【物語】の背景となるであろう、『【物語世界】の直近において起きた出来事(【登場人物】のこれまでの人生相当)』も【登場人物】の人格形成に大きく影響を及ぼしているはずです。なぜなら、これらの出来事は、『【登場人物】が【物語】を進行させる動機』を形成しているはずであるから――です。

 ここで【物語】は、『【登場人物】の【行動】』によって進行します。つまり『【登場人物】の【行動原理】が【物語】に影響を与える』わけで、これは『【登場人物】の“未来”』に相当すると申せましょう。


 つまり、『【登場人物】は“未来”において【行動原理】に基づき【物語】を動かす』わけで、しかも『【登場人物】は“過去”において、【物語世界】の影響を受けながら人格と【行動原理】を形成している』わけです。


 逆算してみましょう。

 『“未来”に相当する【物語】は、【登場人物】の【行動原理】によって描かれる。しかもその【行動原理】は、“過去”において【物語世界】の影響を受けつつ形成されている』ということになります。


 何を申したいかと言えば。

 『【物語】(“未来”)と【登場人物】の【行動原理】、および【物語世界】(“過去”)は、【作者】の中では互いに影響し合って成立していく』ということです。

 つまり『【物語】の都合』を通したければ、【物語】を駆動する『【登場人物】の【行動原理】』が前倒し(【物語】上の時系列で)で決まらなければ不自然と映りますし、その【行動原理】は【物語世界】やそれまでの【物語】展開を踏まえていなければ、これもまた不自然と映るわけです。

 また【物語】は、【物語世界】の在りようを受けて成立するはずです。逆算すれば、【物語世界】は【物語】に応じて設計される――と観ることもできます。

 要は三者、【登場人物】も【物語】も【物語世界】も、他の要素を置いて先に完成させる、ということは難度が高いのです(あり得ないとは申しませんが)。


 そんなわけで、【登場人物】が『【作者】に言わされている感・動かされている感』を醸す背景には、『【登場人物】【物語】【物語世界】の分断』が在るのであろうな――と考える私なのでありました。


 よろしければまたお付き合い下さいませ。


 それでは引き続き、よろしくお願いいたします。

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