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056.【広報】の水面下(第4回・完結)(2022.08.13)

 いつもご覧いただきまして、誠にありがとうございます。中村尚裕です。


 私、「【作品】の【広報】をどうしたものか」という旨のお悩みをよく耳に(眼に)します。

 そこで、ここしばらく【広報】を【我流】で掘り下げてきております。

 

 前回は、“優秀なセールスマン”の“売り方”に関する【考察】を発展させて、そこに【価値】の【認識】を絡め、『“自分の人生という【ストーリィ】”に取り込んでこその【価値】』として【考察】してみました。この時、『【作品】の【周辺体験】までを一括りの【体験】とする』考え方にも可能性が、しかも小さくない可能性が見えてくる、と私は考えます。

 今回はこの『一括りの【体験】』を【広報】へ結び付けていくことを【考察】して参ります。『【作品】とその【周辺体験】によって【観客】に【満足】を提供する、言うなれば【総合世界観】という【体験】の一翼』として【広報】を捉える考え方ですね。よろしくお付き合いのほどを。



 さて、ここまでの【考察】を踏まえた上で、原点のお悩みである『【作品】の【広報】』へ眼を向けてみましょう。

 よく【認識】されがちな姿、『【作品】単体の売り込み』を目的として展開される『【作者】側が自ら働きかける【プロモーション】』です。さてこれはどう映るものでしょうか。

 私にはこれ、『【観客】個人のニーズを考慮しない、“一方的な押し売り”』と映ります。もっと掘り下げるなら、『“一方的な押し売り”に頼らなければ売れない、という証拠』を自ら宣伝しているようなもの――とも映りますね。

 また、このような“押し売り”の【広報】が、『【作品】とその【周辺体験】から成る【総合世界観】』に対してどのような悪影響を及ぼすか――という点も見逃せません。良くても『邪魔物』、下手をすれば『ぶち壊し』ということにもなりかねませんね。


 つまりは『【広報】は、それ自体で【作品】たるべし』ということです。さらに言えば、【作者】本人も『【作品】群を束ねる【親作品】』であることが望ましい――ということになります。


 ここまで考えを巡らせた時、あるいはこう思い付く方もおいでかも知れません。

「じゃ、【作品】本編そのものに【周辺体験】を取り込んでしまえばいいのでは?」

 例としては、『【作品】本編そのものに「こう思って!」という【作者】の願望を山盛りにすること』が考えられますね。思うところあって、具体例については割愛します。


 私としては、この考え方には同意できません。むしろ強く反対いたします。

 なぜか。

 【体験】を発信する主体・主役が、【作品】本編と【周辺体験】では全く異なるからです。前者に関しては【作者】が主体・主役ですが、後者に関しては個々の【観客】こそが主体・主役なのです。【観客】主体の【周辺体験】を、ひいては【観客】の心理を、【作者】が思い通りに操ろうとし、あまつさえ実行に移したなら、さてどうでしょう。そこには「【作者】側が『自作の【魅力】』なるものを『(俯瞰して見れば)【主観的】に語っている』」という【構図】が出現します。『自分のギャグがどう面白いか、ということを自ら解説する芸人』と【本質】の上では変わらないこの【構図】、つまりは強烈な【手前味噌】でしかないのです。


 この【構図】を【観客】が【認識】した瞬間、強烈に『興が削がれる』ことになり、それでは【体験】そのものを台無しにしてしまいます。

 【作者】には【作者】の領分があります。ですが同時に、ファンや【観客】にも、彼らなりの領分があるわけです。【作者】が土足で踏み荒らしていいものではありません。

 つまるところ『【作品】を楽しむという【体験】』は、『【作者】と【作品】、そして【観客】とで織りなす【コラボレーション体験】』なのですから。


 だからこそ、『【プロモーション】においては、【作者】は自作について語らないほど強い』と私は考えるわけです。語れば語るほど【手前味噌】になるわけですから。


 この辺りは洋画を始めとして、優れた【予告編】を研究する余地のあるところですね。あるいは経済雑誌などでよく見かける『ハイ・ブランドの【広告】』も参考になるかと考えます。そこにはスペックがどうとか、『魅力的な○○(と言いつつどう魅力的なのかは伝わってこない)』という文言とかは、存在しません。全面的に、幾重にも埋め込まれた【ブランド】の象徴的イメージと、そこから発せられるメッセージが感覚的に伝わってくるだけです。


 このメッセージを私なりに【要約】しようと試みると、こういうことになります。


「この【ブランド】が形成する【世界観】を、我々と一緒に楽しんでみませんか?」


 これについては、是非とも皆様の眼と感覚でお確かめ下さい。

 少なくとも、何らかのヒントにはなり得るもの――と、私は信じます。


 こういった背景から、私は【広報】に関する意義まで含め、『趣味嗜好の近しい【観客】や【作者】と交流すること』をお勧めしたいところです。

 【観客】や【作者】と広く交流すれば、他作を含めて【総合世界観】を【体験】して学ぶ機会は広がります。また自作に関しても【総合世界観】の一部となって【作品】を盛り上げることもできるわけです。

 もちろん、こうした交流はそのまま『口コミによる“普及”ルート』でもあります。『良作がいかに“普及”していくか』を目の当たりにし、もっと申せば応援する形で関わっていくことで、『口コミ』の具体形が見えてくる可能性は高まります。

 応援という切り口で申せば、【応援広報】という関わり方も考えられます。趣味嗜好の近しい【作品】や【作者】なら、【自分】なりに魅力を知ってはいるわけです。これを【プロモーション】することで【自分】の【鍛錬】にもなりますが、同時にこれは『「好き!」の【ポートフォリオ】』の一部にもなるわけです。何かと申せば、『趣味嗜好の近しい人々へ、【自分】の存在と趣味嗜好をアピールする【広告塔】』になるわけですね。


 こうやって『【観客】と対等・同列に楽しむ』という姿勢は、【周辺体験】や【総合世界観】を学ぶことにも繋がるのみならず、自作で形成されるであろう【周辺体験】や【総合世界観】についても体感や予測が可能になっていくことを意味します。

 『【作者】であると同時に【観客】でもある』意義は、つまり【広報】に関しても大きいということになるわけですね。


 ◇


 さて以上、私なりに【広報】に関する【考察】を展開して参りました。


 『ファンを大切に扱う』、あるいは『ファンと肩を並べて交流する』という行動の意義は、【広報】という観点に立っても大いに存在する――ということを、私なりにご提示することとなりました。

 もちろんこの考え方が絶対ということはありませんが、一つの参考にはしていただけるのではないでしょうか。


 よろしければまたお付き合い下さいませ。


 それでは引き続き、よろしくお願いいたします。

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