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045.【描写】を構築する【工程】、その舞台裏(第2回)(2022.06.11)

 いつもご覧いただきまして、誠にありがとうございます。中村尚裕です。


 私、『015.描写を構築する【工程】(201.03.20)』(※1)で『【作者】の脳内イメージを【描写】として出力するまでには、経るべき【工程】がある』という【持論】をお話ししました。

 これはよく耳に(眼に)するお悩み、『動き(アクション)の【描写】が苦手』、『情景の【描写】が苦手』というものにお応えする形で【我流】の考えを整理したものです。


 先回よりこの『【描写】を構築する【工程】』、その舞台裏に私が置いております考え方や、その発展についての【考察】を展開しております。


 今回はその第2回。


 前回は私が考える『【描写】を構築する【工程】』そのものと、各【工程】それぞれを含めた存在意義についてお話ししました。


 今回は、往々にして軽んじられる(と私に映る)ことの多い、『【描写】において上流の【工程】を作り込むこと』についてお話ししてみたく存じます。


 よろしくお付き合いのほどを。


 ◇


 前回は『【描写】の構築【工程】』というものと、各【工程】それぞれの存在意義についてお話ししました。

 切り口を変えてみれば、こういうことです。

 カメラの高級レンズにしてもCGにしても、【本質】は『撮りたいイメージを実現するための【道具】』に過ぎません。

 なので、そもそも脳内で構築した『撮りたいイメージ』が【つまらない画】では、どれほど良質な【道具】を用いようとも、『【つまらない画】であること』は変えようがないのです。


 さて、同様に。

 【描きたいイメージ】が【作者】の中でぼやけているなら、撮影に相当する【描写】の【過程】でいかなる超絶技巧を駆使しようとも、それは『【ぼやけたイメージ】であること』から脱することはできないわけです。つまり『【棒立ち】は【棒立ち】、【大根芝居】は【大根芝居】』というわけですね。これと同じ理屈で、【描きたいイメージ】が【退屈な混沌】を脱しない限りは、【道具】だけに力を注いだところで、ただ『【退屈な混沌】を描いた』だけのことに過ぎません。


 【描きたいイメージ】を鍛えることは、それほど重要、――というのが、私の【認識】です。そして【描きたいイメージ】とは、『【作者】が脳内で構築する元【現象】や【カメラ・ワーク】で形成されるもの』に他なりません。


 詰まるところ、これは『“品質”は上流の【工程】から作り込め』という【教訓】に繋がります。


 この【教訓】は『トヨタかんばん方式』で謳われる『自【工程】完結』の考え方ですが。要は『上流の【工程】の欠点を下流の【工程】で補おうと考えるべからず』というもの。

 これは例えば料理なら『食材の質を調理でフォローし切れることはない』ということになりますので、納得できる向きも多いのではないでしょうか。腐った食材を使ったら、『どう調理しようとも腐ったことを覆せない』わけですから。


 ここで『上流の【工程】』に相当するのは何かといえば、『【作者】の脳内で構築される元【現象】』や『同じく脳内で展開される【カメラ・ワーク】』ということになります。

 この『元の【現象】』や【カメラ・ワーク】を作り込むのは、演者さんで例えるなら【役作り】に相当しますね。どういう背景を経てその【現象】(芝居や動き)になるのか、というわけです。そこに【描写】を豊かにする手がかりも含まれている――とも考えられます。

 言い換えると、こういうことです。『基礎体力(なぜその現象になるのか、という背景)や基礎技術(背景を探る【考察】の力)なくしては、高度な曲芸(豊かな【描写】)が成り立つことはない』。【描写】のみならず【表現】全般に通ずることではないでしょうか。


 実は「【描写】」などと、直接眼に触れる形態で括られがち(例えば『戦闘【描写】の書き方』などの括られ方)ではありますが。

 その舞台裏には【現象】があり、さらにその舞台裏には人為的な【現象】(動き)を形作る『コンセプト』であるとか、さらにその基盤となる『【原理原則】とその【応用】』が詰まっているわけです。

 「知らなくとも書ける」のは間違いではありませんが、「(部分的にでも、例え【考察】によってでも)知ると知らぬとでは【凄み】や【説得力】の点で【超えられない壁】が存在する」という事実は揺らがない――そう私は考えております。


 と、こう書くと。

 「元【現象】を豊かに作り込むなんて! そんなことをしたら、背景情報が膨大になるじゃないか! どうやって【描写】の中に書き込むつもりだ!?」というツッコミも聞こえてきそうではありますが。

 では――と、この場合に問い返す内容はといえば。

 【現象】の【説明】とは、ドラマの上で本当に『一切合切が欠かしてはならないもの』でしょうか? 『必要なら工夫して魅せるもの』でありましょうし、『必要ないなら行間に込めるもの』なのではありますまいか。つまり『元【現象】を豊かに作り込むこと』は、『実際に【作品】に全てを描き込むこと』とは別の【命題】であり、『それ自体で【作品】を圧迫するもの』ではないのです。

 この辺り、『【リアリティ】の舞台裏』(2022.04.03.~2022.04.30.の活動報告、以前の記事『039.~043.【リアリティ】の舞台裏』として収録、※1)で語らせていただいたところですね。


 ここで、【持論】として付け加えるなら。

 その場その場(文章単体やセンテンスなど)で【描写】を完結させようとするから、【冗長】にもなるし苦しくもなる――という経験則もあります。何かと申せば、『【描写】を媒体にエンコードする【工程】』では『【描写】を細分化』して『【表現】を分散』させれば、それだけでハードルは大いに下がる――ということです。


 こう書くと、「『自【工程】完結』はどうした?」というツッコミも入りそうですが。


 実は私がこう考える背景として、『ヒトを始めとした動物は、そもそも広範囲を一度に【認識】できない』という事実があります。

 具体的には、例えば視界の中で詳細を【認識】できる範囲(有効視野)は最大でも直径20度程度、という研究結果(※3)もあるようですし、さらにその中でも【認識】するには、対象物に意識を集中する必要があるわけです。

 言い換えるなら、『ヒトが【認識】を行うにおいても、【焦点】というものが存在する』というわけですね。【焦点】の外までは、ヒトは一度に【認識】できない――というわけです。

 なので、『【描写】は、「一度に【認識】できる【焦点】の範囲」を一区切りとして実行すればいい』というのを、私は【持論】として掲げております次第。言い換えれば『一文一文にあらゆる情報を盛り込もうとして破綻することはない』という、これは一つの【救い】でありましょう。


 ゆえに『【描写】をエンコードする【工程】は、元の【現象】を、一旦【認識】の【焦点】の範囲まで細分化し、つまり一旦「【描写】を細分化」して、その上で実行するのが望ましい』というのが【我流】の【教訓】です。


 ◇


【注】

・※1.『【エッセイ版】私はコレでできている ~中村尚裕の活動報告より~』に収録『015.描写を構築する【工程】(201.03.20)』

 https://book1.adouzi.eu.org/n8899eg/17/


【注】

※2.『【エッセイ版】私はコレでできている ~中村尚裕の活動報告より~』に収録

・第1回:https://book1.adouzi.eu.org/n8899eg/41/

・第2回:https://book1.adouzi.eu.org/n8899eg/42/

・第3回:https://book1.adouzi.eu.org/n8899eg/43/

・第4回:https://book1.adouzi.eu.org/n8899eg/44/

・第5回・完結:https://book1.adouzi.eu.org/n8899eg/45/



※3.『有効視野の特性とその測定方法』(光科学及び光技術調査委員会)より

https://annex.jsap.or.jp/photonics/kogaku/public/42-09-kougakukoubou.pdf



 ◇


 さて、今回は一旦ここまで。

 今回ご提示した『【描写】を細分化する』という考え方、【描写】を構築する上では、【考察】を巡らせるほどに強力な武器となりそう――というのが、私の得ました感触です。

 次回はこの点を掘り下げて【考察】してみましょう。


 よろしければまたお付き合い下さいませ。


 それでは引き続き、よろしくお願いいたします。

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