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043.【リアリティ】の舞台裏(第5回・完結)(2022.04.30)

 いつもご覧いただきまして、誠にありがとうございます。中村尚裕です。


 私、先日からこういう旨のお悩みに関して【我流】で【考察】を巡らせております。


・【お悩み】:「どこまで【説明】すれば【リアリティ】が出せるだろうか……」


 先回はこのお悩みに対する救い、としての“【深層】の情報”について【考察】しました。

 最終回である第5回に当たります今回は、“【深層】の情報”に基づいて【リアリティ】を表現する、私なりの【実例】をご覧に入れて参ります。よろしくお付き合いのほどを。



◆5.【実例】:『“【深層】の情報”とその【応用例】』で【描写】を構築する【リアリティ】表現


 ここまでで、『“【深層】の情報”や【原理原則】とその【応用例】』を用いた【リアリティ】表現を語ってきたわけですが。

 ここでは、その【実例】をご覧に入れたいと考えます。


 【実例】の【お題】としては、下記の通り。


◎【お題】:ハッキングの手口を、【リアリティ】を持たせて【描写】する


 ハッキングと申せば、往々にして専門用語とその【説明】で紙面が埋め尽くされてしまいやすいものです。

 まずは私が『悪い意味でのオタク語り』と認識する類の表現を例示してみましょう。


 ◇


○『悪い意味でのオタク語り』の【実例】


登場人物「ハッカーは○○からソースコードを入手して▼▼を仕掛けたんだ!」

 ○○とは、~【長説明】。

 そして▼▼とは、~【長説明】。

 この場合、○○と▼▼の関係は~【長説明】。

 ここで▼▼を仕掛けるには~【長説明】。


 ◇


 いかがでしょうか。【長説明】で軽く数ページは紙面が埋め尽くされる、そんな状況をご想像いただきやすいかと考えます。


 この場合、私が“【表層】の情報”と捉えますのは、『専門用語全般とその【説明】』。一つ一つは確かに正確でありましょうが、『ここで表現したいこと』の【原理原則】を掴んでいるとは、私としては受け止めかねるやり方です。また、正確を期そうとすればするほど“【表層】の情報”が増えて、【観客】が消化不良を起こす危険は増大していく構成でもあります。


 また、この場合は。

 【作者】が、『【観客】に【状況】を【理解】してもらうこと』と『【観客】を背景情報の“通”に仕立てること』、この二つを混同している可能性が窺えますね。

 つまりは【作者】が『【目的】のはき違え』を起こしている危険性もあるわけです。


 さらに重要なのは。

 “【表層】の情報量”をどれだけ調節しようとも、この【構図】から脱却することはできない――ということです。【原理原則】を掴んでいないからには、『ここで表現したいこと』を損ねずに【要約】することは至難の業と申せましょう。


 これに対して、私がご提案したい方法論では、以下のような表現に収まります。細かな考え方はさておき、まずは私の結論を先にご覧に入れましょう。


 ◇


○【我流】の演出【例】


A「Z社のデータ・ベースな、抜かれたってよ」

B「だろうな」

A「驚かないのか?」

B「あそこは変な身内びいきがあるからな」(※4.)

A「間抜けを突っ込まれた?」

B「どんな腕っこきでも、裏で足を引かれちゃな。どうせソースを余計なところに上げられたりしたんだろうよ」(※3.→※2.)

C「そのことだけど……」

B「あー、頼むからその青い顔を向けるのはよしてくれ」

A「手口の情報でも?」

C「もっと悪いわ。こっちにアタックが来てるのよ」

B「勘弁してくれ。Z社が被害を把握してないとかそういう……」(※1.)

C「気の毒だけど。アクセス元を手繰ったらZ社の関連会社が」

B「なあおい、逃げていいか?」

C「お願いだから、こっちの首まで絞めないで」


 ◇


 以上、登場人物3人のやり取りによる表現としてみました。

 “【表層】の情報”を代表する専門用語も、その【説明】も、ここでは省いてあります。“【深層】の情報”は下記にご提示しますが、これを長々と【説明】することもありません。表現したのは、あくまでも『【応用例】としての芝居』のみです。


 ここに込めた“【深層】の情報”については、下記の通りです。なお“【深層】の情報”とは申せ、これが全てではありません。実際にはここからさらに【深層】、そのまた【深層】が存在するわけですが、この点についてはここで区切りといたします。


 ◇


○“【深層】の情報”:情報漏洩被害の背景にある【事実】


・※1.ハッキングは、『被害者に対して、攻撃されていることに気付かせないこと』を基本コンセプトに据えていることが多い。ゆえに『被害の全容を掴ませない』ことも重視される

・※2.データ共有行為は、ユーザとしては便利であるものの、漏洩リスクの高い方法。ハッキングの実行者がよく狙うポイントでもある

・※3.情報漏洩被害は、『リスク意識の低い行動』に端を発することが多い

・※4.『リスク意識の低い組織』は、関係者を資質でなく『組織の都合』で決める傾向を併せ持つことが多い。ゆえに『リスク意識の低い人員』が情報漏洩防止の最前線に配置されることもよくある


○“【深層】の情報”の提示順


・Aによる事実提示:Z社からデータベースが『抜かれた』

・Bの解釈による“【深層】の情報”提示(※4.)

・Aによる確認(※3.→※2)

・Bによる“【深層】の情報”提示(※2.)

・Cによる事実提示:アタックあり

・Bによる“【深層】の情報”提示(※1.)

・Cによる事実提示:Z社が被害の全容を把握していない(※1.)


 ◇


 また、【我流】の演出を構成するに当たっては、以下の考え方を基本としております。


 ◇


○【構成の考え方】


1)まず開示すべき情報を分解する

2)理解されやすい(と判断した)情報の並びを構成・演出する

3)開示情報を登場人物の芝居に翻訳する

4)シーンとして構築する


 ◇


 今回は『ハッキングの手口』という【お題】に対して、『ハッキングというシーンの背景に含まれる情報』を一旦詳細に分解して、【原理原則】に近いところを元に『理解されやすい(と判断した)情報の並び』を構成していった形になります。


 以上、私なりに【リアリティ】を表現する【実例】をご提示してみました。


 『【リアリティ】の舞台裏』、ご参考になれば幸いです。


 ◇


 と、【リアリティ】を醸すに当たっては、このような【考察】を巡らせます私なのでした。


 よろしければまたお付き合いくださいませ。


 それでは引き続き、よろしくお願いいたします。

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