23話
ラウロ王子と庭園デートをしてからというもの、私は度々王子と散歩に出ていた。庭のベンチで参考書片手に勉強を教わったり、授業でわからなかったところを聞いたり……教わり過ぎじゃない? いやでもたまにほのぼのとした兄弟の話も聞いてる。
「きみは食が細いのか?」
「そうですねぇ。スープは飲むようにしてますけど」
そう言いながらコンソメ味に似たスープを飲む。美味しい。
「今日はこのあとどうする?」
「静かなところでのんびりしたいですねぇ」
サァっと穏やかな風を感じながらのんびりと会話をする。傍から見たらご老人みたいだよね、これ。あ、お花見したい。
じゃかそれ飲み終わったら移動するかと言われたのでスープを飲み干し、容器を返却口に返してまた隣に立つ。
他愛のない話をしながら二人で歩いて、人気のない裏庭へ。本当に人気ない。用務員のおっちゃんすらいない。ははは、こういうの好きだよ。
「ところで、お兄さんどちら様です?」
「何を言ってるんだ?」
人目を気にせず行動できて。
人気のないそこで立ち止まり聞けば男は人を殺しそうな目をこちらに向けた。やだ怖い。
「……」
「……」
何を言ったら良いのかわからず黙りこくって男と見つめ合う。気まずい。凄く気まずい。帰りたい。いやでもこの不審者どうにかしないと……。どうすればいいんだろ? 縄で縛る? いやでも縄ないしな……。
そんなことを考えていると相手の男がため息をつき、口を開いた。
「……王子、バレましたよ」
「やっぱりバレたな」
「ラウロ王子……葉っぱついてますよ」
ガサリと音を立てて草葉の陰から現れたのはラウロ王子。頭にくっついてしまってした葉を取ろうとしたらしゃがんでくれた。ずっと潜んでたんだろうか。いやでもここに来たいって言ったのは私だから後をつけてきたというところか。しかし。
「そっくりですねぇ」
「まぁな」
隣に並んだ二人は何もかもがそっくり。身長も、顔も。双子か?
「こちらの方は?」
「キド。私の影武者だな」
はて? きど……どっかで聞いた名前だな? どこだっけ? クラスメイト? いや違うなもっと前に……。
「確か二人は同じ部隊だったよな」
「そうですね」
私はキドと呼ばれた男の顔を見た。……あぁ! そうか! あの顔が見えなかった人! もっくんの仲間!!
「フードの下はそういうお顔だったんですね。双子です?」
「いや、たまたま偶然似た顔なだけだ。……改めて、キドだ。この顔を利用して影武者をしている」
「かげむしゃ」
「身代わりだな。緊急の時なんかは今回の様に王子と入れ替わる」
「へぇ〜」
影武者って本当にあるんだなぁ。というかこのそっくりな顔立ちで血縁関係ないの? 嘘じゃん? いやでも世界には同じ顔が三人いるって言うしそういうもんか。




