21話
「花がキレイですね」
「そうだな」
「なんで私達はこの庭園に二人きりで放り込まれたんですかね」
「弟たちの気遣いだな」
いらない、そんな気遣い。
昼食後、私とラウロ王子は学園にある庭園にぶち込まれた。解せぬぅ。
「まぁ楽しもう」
「この花って食べられますか」
「君には情緒というものがないのか」
情緒? ナニソレオイシイノ?
「……これは食用ではない」
「根っこも?」
「根には毒がある」
「なぜそんなものを学園に……」
危なくないのか。
庭園の中を二人で歩きながらそんなことを話す。ラウロ王子は博識らしく私が零した疑問に全て答えてくれた。その頭脳私にも分けてほしい。
そうして庭園の奥へと足を進めるうちにむせ返るような花の香りが漂ってきた。強すぎるそれに思わず顔を顰めてしまう。
「どうした?」
「……すみません、匂いが強くて」
「そうか? ……あぁ、君は嗅覚が鋭いのか。ならこの先には進まないほうがいいな。戻ろう」
助かる。匂いに酔いそうだ。
ラウロ王子とともに踵を返して暫く歩けば匂いは薄れやっと呼吸ができた。
「あの匂いはなんですか?」
「あの奥にある花は品種改良されたものでな。主に風呂などに花弁を浮かべて香りを楽しむことを目的とされている。だから他のものよりも香りが強いんだ」
「……香りはつけすぎると臭くなりますよ」
あれほど強い匂いは寧ろ宜しくないのでは。
「湯船に浮かべるとそうでもないんだ」
「へぇ……」
「うちでも使っているぞ」
じゃあラウロ王子もその香りがするのか。
「とはいっても今は寮暮らしだから使っていないが。母はアレを好んで使っている」
「へぇ〜……オシャレですね」
「女の嗜みとか言ってたな」
「つまりそれを使ってるラウロ王子も女」
「飛躍し過ぎだ」
「すみません」
女の嗜みか……私も嗜んだほうが良いのかな? でも匂いは仕事に必要ないしなぁ……ま、いっか!




