20話
そんなものは私の杞憂で終わった。
「ラウロ兄様はね、凄く優秀なの! それに顔も良いでしょ!? なのに女の影一つなくって私ずっと心配だったの!」
「そうなんですか……」
「だから貴女がいてくれて安心したわ!」
ガッと手を握られ、興奮した様子の王女様に詰め寄られる。この王女様、なんと嬉しそうなのだ。私はてっきり品定めとかされると思ってた。王女様がこんな様子だから他の人も何も言ってこない。
「もしかしたら兄様、実は男色なのかとも思ってたんだけど」
ラウロ王子、あらぬ誤解をかけられていた。他人事なのでとても愉快である。
「良かったわ!!」
「ははは」
私は巻き込まれただけなんです、とは言えない。フィルなんて人物いないんですよー、とか絶対に言えない。
「そうだ! 今日のお昼は一緒に食べましょう!」
まじか。
「貴女のこと色々聞かせて! あぁ、弟も紹介するわね!」
まじか。
王女様の勢いに負け、あれよあれよという間にお昼を一緒に食べることが決まっていた。なんてことだ。
「フィル、それしか食べないのか?」
「十分な量ですよ」
「これ美味しいから食べて!」
「こっちも美味しいよ」
「これも美味しいぞ」
私のお弁当を見た王族三人によって私の目の前には様々な食べ物が並べられた。私は少食なんですよ。燃費がいいんですよ。だからそんなに食べ物を並べないでください食べきれません。
「兄さん、婚約者がいるなら言ってくださいよ。あと少し言われるのが遅かったら兄さん好みの男性を見繕うところでしたよ。父が」
「やめてくれ」
父親に男を見繕われる王子……字面ヤバイな。お弁当が今日も美味しい。
「ところでフィルさん、ご兄弟とかいる?」
「歳の離れた弟がいます」
「そっかぁ」
「何か?」
「いや、君に似た人を知ってるんだけど、その人は僕より年上だから他人の空似かな」
「世の中には同じ顔が三人いると言いますからねぇ」
「それもそうか〜」
あははとクラウス王子と笑いあう。良かった、追求されなかった。追求されたら私はボロを出す自信がある。ていうか確実に出す。私の横で「こいつら大丈夫か」って顔をしているラウロ王子はスルーでいいかな。
久々の更新です。気が付いたら三ヶ月以上放置してました。




