18話
初めての実技である。2クラス合同でやるらしく、私はもっくんと一緒に立っていた。
「フィル、モナ」
「バルドさん」
「どうしたんです?」
「今日の実習は3年が指導につくんだ」
実技のために広場に行けば3年生らしき人たちがうじゃうじゃいた。その中にはバルドさんもいて、私達の方へ近づいてくる。
「やったー。バルドさんと一緒だぁ!」
「よろしくお願いします」
「まぁオレも初めての実技なんだけど」
え。
「……」
「……」
「……」
初回の実技で配られたのはデカイ水晶だった。初めて見るそれに三人で立ち尽くす。なにこれ。何するものなの?
「バルドさん、なんですかこれ」
「魔力操作を覚えるための水晶」
「へぇ……」
「一応やり方はわかるんだが、ひとつ問題があってな」
すいっと水晶を持ち上げたバルドさん。因みに会話は他の人に聞こえないよう、すごく小さな声で行っている。
「……オレたち、もう魔力操作普通にできるから、同年代がどれくらい出来るのか知らない。真面目にやったらたぶんすぐ成功する」
「あぁ……ペーパーテストの大体の平均点とかはルノアさんに教わりましたけど、実技は教わりませんでしたね」
ルノアさんとは私達がこの仕事に就くことが決定したときに教師として充てがわれた人のことだ。バルドさんの1つ上で、学園のことを教えてくれた。目立たないためにペーパーテストで何点取ればいいかとか、学園のルールとか。でも実技は道具がないから教わらなかった。
「これ、成功するとどうなるんです?」
「水晶が虹色に光る」
「失敗すると?」
「度合いにも寄るが、酷いときは黒く濁るらしい」
「どんな仕組みなんでしょうね……」
ジッと水晶を覗き込むもっくんは楽しそうだ。確かにどんな仕組みなのかすごく気になる。
ちらりと周りを見るがどの水晶も虹色には光っていない。今私達がやって虹色にしたらすごく目立つだろう。
「ていうか魔力操作を失敗ってどうすれば」
「お前の場合命に関わるもんな」
「オレ最近不安定なのでオレからやりますよ」
そう言ってもっくんは首につけていた制御装置を取り外した。それを受け取り、代わりにバルドさんが水晶を渡す。
「魔力を込めればいいんですよね?」
「あぁ」
もっくんの様子を見ていると何やら視線を感じた。ちらりとそちらを見ればクラウス王子とクラディア王女を指導しているラウロ王子がこちらを見ていた。目があってしまった。蛇に睨まれたカエルの気分である。
王子と見つめ合っていると後ろからパリンと小気味よい音が聞こえたのでそちらを向く。もっくんが持っていた水晶が粉々に砕けちっていた。
「……」
「……」
二人が死んだ目で残骸を見つめている。
「何があったんです?」
「魔力込めたら割れた」
「それを見てた」
「……込める魔力が多すぎたんですかね」
はい、と手に持っていた制御装置をもっくんに渡す。そういや魔力増えちゃったもんね。
もっくんが沈んだ顔をしていると周りに教師陣が集まってきた。
「水晶の調子が悪かったみたいですね」
笑顔でさらっと嘘をつくバルドさんはすごいと思った。
久々の更新となりました。
書いてる人間が多忙&スランプ的な何かに陥ったので更新頻度落ちます。月一は更新できるように頑張りますので、気長に待っていただければ幸いです。




