九話
「なるほど、足の多い虫が嫌いなんですね」
「あんな進化を遂げる意味が分からない……」
「そこまで言いますか」
あの後何事もなくエル君たちと合流できた私たちは先ほどの出来事をエル君に報告した。百足の死骸はすぐに回収班が回収するそうだ。そりゃあんなの放置できないもんね。
ちなみに、エル君たちの方は当りだったようで、猪の山が積み上げられていた。数多いな。
この猪も回収班が回収するそうだ。回収班の人も大変だなぁ。
「ではなるべくそういう類の魔物が出る依頼を受けますか」
「鬼ですか!?」
「冗談です。でもそういう魔物にも慣れてください」
「ひぇぇ」
多分無理ですよ。人生二回目でもダメなんだもの。多分魂が拒絶してるんだよ。
仕事も終わったのでのんびりと軍施設へと戻っていく。戻った後は報告書の作成が待っている。私はそういうのがとても苦手なのでバルドさんに一任したい。
「少佐~、明日の仕事は何かしら?」
「明日は王宮での警護です」
「王宮の、ですか」
「そうよ~。私たちは軍人だけど、王宮の警護もするの。基本暇よ」
「エルミオ、そういうことは言わないように。平和なのは良いことです」
「そうねぇ」
明日は王宮での仕事か。
そのあと、しばらく雑談をしながら施設に戻った。カルトスさんに今度稽古をつけてもらうことになったのだが、バルドさんに憐れむような目を向けられた。何? 何かあるの?
「では、猪の方の報告書は私が作成しておきます。百足の方はバルドとフィオーレでお願いします。出来上がり次第私のところへ」
「はい」
よし、報告書はバルドさんに任せて、私は散歩でも。
そう考えて部屋へと向かおうとしたら襟をつかまれた。
「フィオーレ、どこに行く」
「部屋に……」
「お前も報告書作るんだよ。書き方教えるから」
「私そういう作業は苦手で……」
そう言えばバルドさんは私の二の腕をつかんだ。逃がす気がないよこの人。
「苦手なのを放置するな」
「ぅえぇぇ」
私はそのままバルドさんの部屋に引きずられ、報告書作成のいろはを叩き込まれた。やっぱりこういうのは苦手です。




