16話
ラウロ王子に正体がバレてから数日後。そういえばと、もっくん及び第二王子がいる隣のクラスに向かう。国全体の殆どの有力種の同世代が集まっているので、そこそこの人数がここにいる。それでも100人ちょっとだけど。この中の殆どが魔法軍に入る。軍の中にも色々とあるので、前線勤務はこの中の一部だろうけど。
「モナ」
「フィル」
フィル、は私の偽名だ。もっくんとバルドさんは誰にも名を知られていないので良いが、残念ながら私の名前は王子達に知られているので私だけ偽名である。
教室からもっくんがやってくる。
「どうした?」
「友好を深めに」
「馬鹿か?」
「真っ直ぐな罵倒だね」
「で、実際は?」
「もっくんがハブられていないかの確認に」
「今のところ問題ない。お前は?」
「人間の優しさに感動してる」
「そうか」
扉のところまで来てくれたもっくんの脇からチラリと教室の中を伺う。あぁ、いたいた。王子と主人公のミオナ。可愛いなぁ。
「どうした?」
「んー? 別に?」
「変なやつ」
「もっくん体調は?」
「今のところ問題ない。まだ実技もないしな」
クイ、と首元のシャツを引っ張るもっくんには首輪がつけられている。
先日の誘拐でもっくんの魔力は増幅してしまったらしく、一応ある程度まで制御できるようにはなったが保険の為制御装置をつけているらしい。
「何か問題があったら言ってね」
「あぁ。お前もな」
「取り敢えず歴史の少テストがヤバイので教えてください」
「……」
「……」
「……放課後、裏庭な」
「やりぃ。モナは優しいなぁー」
「そりゃどーも。ほれ、次の授業始まんぞ」
しっしっ、と手を振られたので自分の教室へ戻る。
教室で適当な席に座る。王女様は仲の良い子と前の方に座るので、それが見れる後ろの方の席。尚且つ何かあったとき即座に守れる距離の席を陣取る。一人で。……ぼっちじゃないし。
さて、とこれからのことについて考える。戦争が始まるのは来年。それまでの流れはなんだったか。取り敢えず最終的に王子と王女と主人公はすごく仲良くなってた。第二王子と主人公はくっつくし。
教師の声を聞きながら、ノートにペンを走らせる。頭の中ではこれからのことについて考え続けた。
考え続けて一つのことに気が付いた。
……私、エルくんに関することしか覚えてねぇなぁ……。




