15話
誰か助けてほしい。
「……」
「……」
何故私は第一王子とガンの飛ばし合いをしているんだろう。
学園に復帰した私をクラスメイトは歓迎した。凄く心配されたし、なんなら王女様にまで声をかけられた。王女様優しい。
で、勉強して、わからないところがわからないとバルドさんに聞いて。もっくんと駄弁って。そして放課後、一人で歩いていたら王子に人気のないところにつれてこられて、壁際に追いやられてガンの飛ばし合いが始まった。
うん、普通に過ごしてたな! 私何も悪くない!
開き直って再びガンの飛ばし合いに戻る。あ、だめだ。こわい。美青年の真顔こわい。というか王族ってほぼ全員美しい顔してるよね。王族になるには顔面偏差値が高くないといけない決まりでもあるの? 顔の良さでも頂点に立つの? その顔の良さで近づかれると呼吸してるのが申し訳なくなるから5mほど離れてほしい。
「助けてくれてありがとう」
「え?」
「? 生誕祭の時、助けてくれただろう。弟も誘拐から助けてもらった。ありがとう」
よくわかった。私の正体がバレてる。どうする? なるべくバレないようにとのお達しだ。今からでも誤魔化せるだろうか。いける。やればできる子だもの。
「人違いでは?」
「間違いないな」
「人違いです」
「先生には確認済だ」
「嘘!? 少佐!?」
「嘘だ。カマをかけただけだ」
「ちくしょう!!!」
騙された!!
跪いて地面を殴っていると、クツクツと王子が笑いだした。
「そもそも君はこういうのに向いていないな。目立ちすぎる」
「ぅぐぅ……」
「まぁ………………こんなにわかりやすいのに、弟たちは気がついて居ないようだが……」
そう言った王子はどこか遠い目をしていた。この人も苦労してるんだろうな……。
「まぁ私は誰かに言うつもりはない。君に礼を伝えたかっただけだ」
「普通のことをしたまでですけどね……」
「こちらの自己満足だ。ところで君は女子なのか?」
「どちらに見えます?」
「どちらにも。今は女子に見えるな」
「そうですか。お好きに考えてくださって結構ですよ」
「じゃあ今は女性として扱わせてもらおう」
そう言って王子は私の手を取り、優しく立たせた。王子の足長いなぁ……。
「で、バレたと」
「てへぺろ」
「お前は本当に馬鹿だな」
「もっくん辛辣〜。バルドさん、そんな哀れみの視線を向けないでください泣きますよ」
「……」
「うわーん!!!」
「アメちゃんいるか?」
「紅茶飲むか?」
「やったー!!!」
「お前チョロいな」
「ここまでくると不安になってくるな」
紅茶美味しい。




