12話
「魔力循環を乱す薬……おそらくこの植物を使ったんだろう。これは、魔力量が多ければ多いほど、猛毒となる」
粗方の治療が済んだエリーゼさんが真剣な顔をして、説明を始めた。
「モナの方は正直わからない。彼の魔力量を私は知らない。けど、あの男が言っていた魔力量増強の薬が効いているのなら、最悪もありうる。一応応急措置として制御装置をつけさせてはいるけど、いつまでもつか」
制御装置は、魔鉱石と呼ばれる石を使った装飾品のことを言う。魔鉱石は魔力を吸収する性質があるため、それを利用して間につけた人間の魔力を吸収させるのだ。学園に入る前の有力種が身につけているものだ。
魔力量循環を乱されるのなら、その魔力を吸い出せばいい。薬が抜けるまで。
「問題はフィオーレだ」
先程、治療中にフィオーレは希少種だということをB班に説明した。説明しなければあの状況を説明できなかったから。
幸い、あの場にいたのは第六部隊とエリーゼさん、職員のみ。B班に説明して口裏を合わせてもらわなければ報告書にありのままを書かれて、フィオーレのことが上層部にバレる。それを避けるために、B班に説明した。B班ならまだ信用に足るらしい。
「あの子は希少種だ。希少種は魔力量が普通じゃない。魔力循環をうまく操ることで普段は生活できている。それを乱されてしまったら……」
「最悪死に至りますね」
「そういうことだ。今は落ち着いているが、傷も治ってない。血を吐いていたみたいだし、相当やられてるね。制御装置をつけてはみたけど、一瞬でお釈迦にされた」
一瞬で。
頭の中に師匠さんの顔が浮かんだ。有力種であろうと、希少種の前では弱者であると言ったあの人。そして、先程の嵐。あれが希少種か。天候すら操る、希少種。あぁたしかにあれの前ではオレたちは弱者だ。
「あの男の話だとフィオーレにも魔力増強の薬を投与していたらしい。最悪の組み合わせだよ」
苦虫を噛み潰したような顔でエリーゼさんがそう言った。
「しかも私は希少種に詳しくない。これ以上何もすることができない」
あとは、あの子の運次第だと、エリーゼさんが言った。
「希少種については、助っ人を呼んでいます」
お通夜かよというほど重い空気だった部屋に、少佐が爆弾を落とした。何それオレ知らない。
「兄の知り合いの希少種マニアが」
「希少な希少種が死にかけていると聞いて!!!!!」
なんか元気なお爺さんが部屋に乱入してきた。




