11話
傷だらけのフィオーレがモナに近付こうとして、けれど歩くことも、ましてや地下から地上へ戻ることもできず、結局、立ってられなくて、カルトスさんが持ち上げてモナの近くまで連れて行った。
力ないフィオーレの手がモナの手に触れた。
「こわい?」
「……」
「パチパチいってるね」
「……」
そういえば、先程は嵐のせいで気が付かなかったが、モナの周りで何かが弾けているし、ところどころ燃えている。フィオーレ程ではないが異常な現象が彼の周りで起きていて、ノエルさんを、モナを傷つけていた。
「……ノエル」
「すまない……」
傷だらけのノエルさんを少佐が立ち上がらせてモナから離れさせた。そこでエリーゼさんがやってきたので、傷をみせる。エリーゼさんはこの惨状を見てもすぐ自分の仕事に取り掛かった。あとエルミオさんとキドさんはそれぞれ気絶した男を連れてきた。
モナとフィオーレはまだそのままだ。
「だいじょーぶ、だよ」
「……」
「こわいねぇ」
「ぁ……」
「しんじゃうもの」
「っ……」
「しにたくないねぇ」
「……」
「ころしたくないねぇ」
「ぁぁ……」
モナも落ち着いて来たらしい。彼はフィオーレの手を握り返していた。
「うん、そう。おちついて」
「きずだらけだな……」
「いくらでもきずつけていーよ。じぶんでもきずつけたもの」
どこか舌足らずな口調で話す二人。傷の手当がおわった班長たちが戻って来た。
「つかれたね」
「こわかったな」
「くるしかったね」
「つめたかったな」
「……おつかれさま」
「……あぁ」
「ねむ」
「……ん」
ベシャっと音を立てて二人は地面に倒れ臥した。
「……」
「……」
少佐たちが二人を抱き上げて、エリーゼさんのところへ連れて行った。ちょうど男の一人が起き上がっていた。
「あんた、ここの職員だね。この二人に何をした」
「魔力循環を乱す薬と、魔力増強の薬を投与してました」
「あ!? 最悪だ……! あんたたち! 今すぐ二人を施設に! 最悪死ぬよ、この二人!」
男の言葉に慌てたエリーゼさんの指示で少佐たちは軍の施設へと走っていった。後始末は別の班に任せるらしい。少佐たちも傷だらけなので仕方ない。




