9話
惨状。
そんな言葉がよく似合う。
チビはすぐに見つかった。
ついでにあのクソッタレも。気絶してやがる。
チビは、血塗れで立っていた。
地下の天井……廃棄場の真上の床は壊され、地下が丸見えになっている。案の定死体だらけ。チビはそこに立っている。
異常な風が壁を崩して。
原因不明の爆発が至るところで起きて。
外は雷雨が降っていて。
滅茶苦茶だ。
幸いなのは、チビが誰も殺していないところか。建物がだいぶ壊されているが、そこは仕方ない。というか、これはチビがやったのか?
「これは酷い」
「……なぁ、今更なんだが、お前らオレたちになんの薬を入れてたんだ」
魔法がやまないから近づけず、チビから距離を取ったまま、男に聞く。先程から魔法が使えない。使おうとすると痛みが走る。
「魔力循環を乱す薬を定期的に。あとは魔力増強のを」
「チッ」
そりゃあ魔法が使えないわけだ。施設内でも使えなかったから薄々気がついてはいたが、最悪だ。
「循環を乱す方、あとどのくらいで切れる?」
「あなたの場合はまだしばらくはかかりますよ」
「人によって違うのか」
「魔力量によります」
「ふぅん」
しかし、どうしたものか。そもそもチビはなんであんなことになってるんだ? 何か叫んでいるようにも見えるが、雷雨や爆発音のせいで聞こえない。
「……」
「……26番、大丈夫ですか?」
「は?」
「先程から体調が悪そうですが」
言われて気がつく。さっきから呼吸が浅いのか息苦しいし、汗もひどい。手足が震えて……。
あぁ、これはまずい。
オレは男を木々のある方へぶん投げた。




