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目標:推しキャラ死亡ルート回避  作者: 櫻井 羊
一章 1年次前期
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8話

モナ視点




 大きな揺れを感じて目を覚した。



 手足を鎖で繋がれて、座り込んだ床は冷たい。目を覚したけれど、大きな揺れを感じたけれど、それ以外に特に変わったことはない。



「………………ちび…………?」



 何故かチビが脳裏をよぎった。そういえばチビはどうしたんだろう。


 どこかから爆発音が聞こえる。


 さけぶ声が聞こえる。


 何が起きているんだろう。



「博士くん!! 一体何事!?」

「わかりません」

「役立たず!!!」

「申し訳ありません」



 廊下からそんな言葉が聞こえた。あいつらですら把握できていないらしい。


「……26番」


 博士が俺の部屋に入ってきた。


「今鎖を外しますね」

「いいのか?」

「さぁ。でも何か様子がおかしいので。君もこんなところで死にたくはないでしょう」

「本当に知らないのか?」

「知りません。わかるのは、爆発の原因が地下だと言うことだけです」


 地下。


 それは、前の施設では廃棄場になっていた場所だ。あのクソッタレのことだ、今回もそうだろう。


「廃棄場に何かあったのか」


 手足の枷が取れ、首の枷もカチャカチャと外される。


「おそらく。……少し前に白髪の子をそこに入れました」

「は!?」

「廃棄しろとのことでしたから。しかし他の子とはだいぶ違いましたが」


 首の枷も外れ、自由になったので立ち上がり、軽く跳ねる。筋力が少し落ちたな。


 いや、それよりも。


「どういうことだ」

「他の子は皆薬に耐えられなかったり、検査に耐えられなかったりで絶命したため廃棄しました」

「胸糞悪いな」

「そうですね。しかし、あの子は、生きていました」


「じゃあ生きているのに廃棄したのか」

「そう言われましたので」

「あいつ以外に生きていたやつは?」

「いません」


 なら、これの原因はあいつか。



「というかあんたそんなことオレに話していいのか?」

「駄目なんじゃないですかね。でも、もういいんです」

「なんで」


 オレの問に男は泣きそうな笑みを浮かべた。



「妻と子が先日亡くなりました」



「……」

「特効薬のない病にかかっていたんです。彼女たちのために、あの男に手を貸していただけです。あの男、思考はアレですが腕は確かなので、あの男が作る薬が欲しくて。その薬のおかげでだいぶ長生きさせることができました」

「そうか」

「しかし進行は遅らせることはできても、治すことは不可能でした。先日二人揃って旅立ちました」

「そうか」

「だから、もういいんです。この後は軍か警備に出頭します。死刑か、無期懲役か、拷問か。どれにせよ罪を償います」

「……あぁ」

「生きている子たちは皆枷を外しました。実はここ軍の施設が近くにあるので、その方角だけ教えておきました。ここの存在もすぐ明らかになるでしょう。貴方も逃げてください」

「いや、チビを探す」

「では廃棄場まで案内します」

「頼んだ」


 男の背を追って、部屋をあとにした。

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