6話
モナ視点
「ロンドさん、隣の部屋にいた白髪の子が血を吐いて倒れました」
ここにつれて来られてどれほど経っただろう。窓もない部屋にいるからわからない。けれど、あのクソッタレが朝だよと言いながら注射してきたから今は朝なんだろう。それより、今、部屋に入ってきた博士と名乗った男は何といった? 白髪とはチビのことか? 血を吐いた? なぜ?
「えぇ〜。昨日まではなんともなかったよねぇ? 値もきっちりでてたし」
「夜中に吐いたようですね。いかがいたしますか」
「ん〜、駄目そうなら廃棄」
「わかりました」
「26番。お友達駄目になっちゃったてぇ。君は駄目にならないでね?」
このクソッタレが。
オレの一番古い記憶は泣きながら俺を抱いて何かを言う母親の姿だ。そしてその後すぐオレは最悪な施設に入れられた。
そこは希少種を作るための研究施設だった。
地獄だった。
毎日薬を飲まされて。
毎日検査して。
毎日、誰かが減っていく。
外の世界なんてお伽噺の世界だった。
そんな中オレはどうやらそこそこ上手く行った個体だったらしい。気が付けば魔力が制御できないほど膨れ上がっていた。
嬉しそうに笑うあのクソッタレ含めた大人たちの中、オレは直感でこのままだと死ぬなと思っていた。
それでもいいかと思っても、泣いている母親が脳裏にチラついて死ねなかった。足掻き続けた。
足掻き続けていたら、軍が施設に入ってきた。殆どの研究者は捉えられ、オレたち生き残った子どもは保護された。オレはノエルさんの家に引き取られた。
それから魔法について、外の世界について学んで、軍に入れたっていうのに。なのに。なんでオレはここに戻ってきているんだ。
今度こそ死ぬのだろうか。
まだ彼らに恩を返しきれていないのに。
あのクソッタレの手で殺されるのか。
巫山戯んな。
「そろそろ効果が出るはずなんだけどねぇ」




