2話
任務で学園へ入学し、一学生としての生活にも慣れた今日この頃。私は重大な事実に気がついた。
「少佐に会えない……!」
ここ一年毎日のようにあっていたからすごく辛い!!
学園は全寮制で、私達も例外なく寮で生活している。今の所問題もなく、目立たず過ごすことができているので任務としては良好な進み具合ではなかろうか。
因みに私たちはそれぞれの護衛対象と同じクラスになっている。しかし接触は最低限。あちらから声をかけてきたとき、失礼がない程度に返事をするくらいだ。相手は王族だし、こんなもんだろう。私はウィッグ被って伊達眼鏡をしているからか、意外と彼女から何か言われることはない。同級生もなんだかんだ仲良くしてくれている。
そして、何事ないまま数日が経ったところで私は前述した事実に気がついたのだ。
「お前少佐のこと好きだよな……」
「推しですからね!」
人気のない校舎裏でバルドさんと報告を兼ねた雑談をしているとき、この不満を言ったら若干引かれた。悲しい。
「おし?」
「あー、大好きな人? です!」
「へぇ」
「できる事なら貢ぎたい!!」
彼が二次元だったときは貢いでいた。主に出版社と作者様に。しかし今は貢げないのだ。貢ぎたい! 最近はちゃんとした本を買うようになったけど、それでも給金は余る。貢ぎたい。
「本人の了承が取れたら貢いでもいいんじゃないか? たぶん断られるけど」
「え、本当ですか? バルドさん的には貢がれるのは?」
「? いいんじゃないか? 人道的にアウトとかじゃなければ」
なるほど。
因みに、私の推しは永遠に一人というわけではない。勿論最推しはエルくんだが、他にも推しが増えていく傾向がある。
今現在、エルくんの他にもバルドさんやもっくん、エルミオさんたちを推している。
そして今、その推しの一人から許可が降りた。つまり私がやることは一つ。
私は静かに持ち歩いているポーチからブツを取り出した。
「何故今金を取り出す」
「……」
「は? お、おい、ちょ……!」
グイグイとバルドさんにお金を押し付ける。おひねり。受け取ってくださいな。
「おい、まさか推しは一人じゃないのか!? オレも含まれてるのか!?」
「いえーす」
「仕舞え! その金を仕舞え馬鹿!」
「受け取ってくれないんですか?」
「受け取るか!!」
さっきと言っていることが違う……。
拒否されたものは仕方がないのでポーチにブツを仕舞った。しょうがないので別の形で貢ぐことにする。さり気なくやればいける。頑張れ私。頑張って推しに貢ぐんだ。今度エルくんに会ったら貢ぐ許可を貰おうかな。




