五十一話
しとしとと雨が降る今日。私達第六部隊A班は待機任務です。
待機任務では緊急時にすぐ出動できるよう、軍の施設で待機しなければならない。つまりは暇なのだ。
「暇だわ」
「暇ですねぇ」
「二人とも、きちんと訓練しなさい」
「「はぁい」」
緊急時に備えてあまり疲労する運動もできない私達は射撃の訓練をしている。使用するのはいつも使っている銃ではなく、銃剣と呼ばれるもの。使うときが来るかもしれないからある程度慣れろ、とのことだ。
「銃って結構反動あるんですよね」
「あぁ……子供なんかが撃つと肩が外れたりするらしいわね」
「らしいですね」
銃剣を構え、少し離れた場所にある的を撃ちながらエルミオさんとそんなことを話す。私もエルミオさんも特に問題は無さそうだ。
問題はバルドさんとカルトスさんだ。
「銃より拳のほうが速くないか?」
「弾丸のほうが確実に速いですよ」
「中々中央に当たらん」
「貴方は取り敢えず慣れてください」
なかなかに脳筋なことを言っているが、それでも真面目に撃っているカルトスさんはエルくんに教えてもらっているようだ。とても羨ましい。
私はとなりで練習しているバルドさんに目を向ける。エルミオさんに教えてもらいながら撃っていた。
「中々中心にいかない……!」
「焦らずに撃つのよ。初めてだもの、仕方ないわ」
「? 魔法学校では武器を使わないんですか?」
私の質問に二人は顔を見合わせた。
「オレは魔法学校には行ってないぞ?」
「あれ? バルドさん今いくつです?」
「今年で18」
「わかい!!」
「最年少に言われても。オレも15の時に入隊してるんだよ」
知らなかった。
休憩なのか、一度銃剣を置いたバルドさんが地面に座る。私とエルミオさんもそれぞれ地面に座った。
「なんで学校通わなかったんです?」
「勉学は問題なかったし、戦闘もある程度出来たからな。行く必要がなかった」
「ほぇ〜」
確かにバルドさんは強いし、普通に勉強もできる。何せ私に勉強を教えるくらいだからね! 私の脳みそ馬鹿みたいに容量少ないからいっつも困らせてるけど! ごめんねバルドさん!! 師匠も投げ出すレベルだから仕方ないね!
「おや、エルベルトじゃないか」
「ノエル。あぁ、そういえば貴方達も今日は待機でしたね」
休憩していると優雅な足取りでB班の人たちがやってきた。もっくんもいる。
「もっくーん!」
「落ち着けちび」
「ぐえっ」
もっくんに抱きついたら襟を持って引き剥がされた。私は猫かな??
「モナが銃剣を使ったことがないのを思い出してね。今日は待機だしここで練習しようと思ったんだ」
「こちらもです。よければ一緒にやりますか」
「それは助かる。銃剣の扱いに慣れてるのは私とキドだけなんだ」
銃剣は主に戦争で使われる武器である。普段は各々が使いやすい武器を使っているが、戦争では足並みをある程度揃えるために銃剣を使う。普段から使わせろよと思わなくもないが、まぁなんか考えがあるんじゃないかな。
「そういえばバルドさんは18歳ってわかりましたけど、エルミオさんとカルトスさんは?」
「俺は23」
「27よ」
「……ノエルさんたちは?」
「私はエルベルトと一緒だ。キドは19、ルヴィンは23、ヒルデは28だな!」
ノエルさんたちからの返事に、私ともっくんは顔を見合わせた。
「……この部隊は年齢詐欺部隊と呼ばれても文句は言えない」
「年齢通りの見た目がオレたちとバルドさんだけか……」
ルヴィンさんとカルトスさんは年齢よりもだいぶ老けて見えるし、他の方々は年齢よりもだいぶ若く見える。キドさんはまず顔が見えないので判別不可能。なんだこの部隊。そもそも年齢層が若い。そして年齢が迷子。なお、バルドさんも結構雰囲気が大人っぽいので若干詐欺ってる。詐欺だ。




