五十話 その1
「フィーちゃん、いい? 貴方は今から女になるの」
なんでさ。
王都の婦人方が数人行方不明になっている事件の調査というそれのために私は女になるらしい。もとから女ですがなにか。
「さぁ、女性の敵を誘き寄せて嬲り殺…………捕獲するわよ!」
「今すごく不安になること言いませんでした?」
「言ってないわ! さ、この服に着替えて、メイクは必要に応じてやるわよ!」
服を持たされ個室に押し込められる。持たされた服は一般的な女性が着るワンピース。久々にこういう服を着る気がするなぁ。
「あらぁ、これは……」
「よく似合ってますよ」
「似合うな」
「どっからどう見ても女子ですね」
服を着替えて外に出ればエルくんたちからそんな言葉を頂いた。そりゃあまぁ一応女子なんで、これで似合わなかったら女子としてのなけなしのプライドが傷つく。というかサイズピッタリなんですが。いつ採寸した???
「自分でも見てみなさいな」
エルミオさんが私の前に大きな鏡を持ってきた。それを覗き込めば久しぶりに見る女物の服を着た自分。いや、これは……。
「えっ、めっちゃ美人ですね! これなら相手を一本釣りできるのでは!? 私、良質な餌になるのでは!? あ、でも胸ない」
白髪に赤目と、少々目立つ色合いだが、なんかこう神聖な感じがして良いのでは?? ちゃんと女子に見えるし、か弱そう。これは格好の餌だね!! 貧乳はステータスにもなるから問題ないね!
「フィーちゃん、外では喋っちゃだめよ」
「折角の美人なんですから」
「喋ると残念になるな」
「凄く阿呆になりますね」
全力でディスられてるな? さすがの私でもわかるぞ??
「さぁ、あの糞ども……もとい犯人たちを捕獲するわよー!」
「私は散歩してればいいんですか?」
「えぇ」
「わかりました!」
「フィオーレ」
スカートを翻して扉に向かおうとしたらエルくんに声をかけられた。なんだろうと振り返ると、真剣な顔をしたエルくんがいる。
「いいですか、貴方は囮です」
「はい」
「武器だって最低限しか持っていませんし、魔法の使用も禁止です」
「はい」
「相手が何をしてくるかわかりません。危ないですから、変な真似はしないように。わかりましたね」
まるで子供に諭すように言うね! なぜ今私はロリじゃないのか。ロリだったらきっとエルくんはしゃがんで目線を合わせてもっと柔らかな口調で言ったに違いない。超見たい。あいやそうじゃない。うん。相手が危険なんだよね。で、危ないと。そして私は囮、
「わかりました!」
「良い返事ですね。本当にわかってくれました?」
「見つけたら殴りますね!」
「何もわかってませんね」
あれ?
「脳筋だな!」
「喋らなければ美少女なのにねぇ」
「まさに残念な美人ですね」
ボロクソ言われてる悲しい。




