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四十八話 その4
夢を見る。
私は壁も地面も何もない暗闇に佇んでいて、いつも通り軍服を身に纏っている。きっと首まである服や、手袋などの下には傷だらけの身体があるんだろう。
辺りを見渡しても何もない、永遠と続く暗闇。しかし暫くすればそこにふわりと何かが現れる。最初は靄のようなそれは徐々に形作られていく。
艷やかに腰まで伸びた髪。
なだらか身体を覆う華やかなドレス。
細く、白く、傷など一つもない珠のような肌。
淑女のように静かに笑みを携えたそれはただひたすら私と向き合うだけ。何も言葉を発さず、瞬きすらもしない。
まるで責めるかの様に、それは私を見つめ続けている。




