四十八話 その1
「さて、お前らは明日には帰るわけだが」
日も沈み始めたところで師匠がそんなことを言った。師匠の前には先輩方四人。中々にボロボロである。
「その前になんで貴方は兄さんに抱えられているんですか、フィオーレ」
「私が聞きたいです」
そうなのだ。私は師匠の脇に抱えられている。胃の中身をぶちまけそうなので話してほしい。あと片手で私を持ち上げる師匠はカルトスさんに負けないゴリラだ。
「こうしないと逃げるだろう?」
「あ、師匠。空が青いですね」
「もう夕暮れだがな。で、逃げるだろお前」
「そんなことないですよ」
「そうか」
「あれ!? 離してくれない!?」
一向に離してくれない師匠の腕から逃れようと暴れるがビクともしない。これからは師匠のことをゴリラと呼ぼう。やーいゴリラー!!
「でだ、お前らに渡したいもんがある。…………………………取りにくいな」
「師匠? 私を下ろせば取りやすくなりますよ?」
何やら持っていたポーチを漁る師匠が顔をしかめた。私を下ろせばいいと思うんですよね。
「逃げるだろ」
「信用がない。とても悲しい」
「そうか。おし、取れた」
器用なことに師匠はポーチから片手でいくつかの球体を取り出した。ここからじゃよく見えない。下ろしてほしい切実に。
「お前らにやる。土魔法の魔石」
ポイッとそれぞれに1つずつそれを投げる師匠。4人は少し慌てながらもそれを受け取った。魔石は貴重だというのになんとぞんざいな扱いなのか。まぁ地面は芝生なんで落ちても割れないけどさ。
「それは自分が使ってる軍の武器が使えなくなった時に使え。それまでは誰にもバレないように身に着けておけよ」
「土属性ですか」
「確かに使用する環境は限られるが、お前らには役に立つだろ」
「何でですか?」
師匠の言葉にバルドさんが首を傾げた。
「戦争は外でやるからな」
私はその言葉に身体を強張らせた。




