三十四話
「……死んだって……」
「生きてるな」
「いやまぁ死ぬはずないって思ってましたけど」
「死にかけたがな。その話は追々する。それよりも依頼の話だ」
驚いて思考がほぼ停止しているであろうエルくんに代わり師匠が話を戻す。
師匠は少し長めの黒髪を後ろで一つに結んで、右目を前髪で隠している。身長はエルくんより少し高めで、ハイネックの服に長袖長ズボン。肌をほとんど見せていない。
「その依頼はすでに終わった。というか俺がやった。だがお前らには1週間滞在してもらう」
やっぱり私達必要ない依頼だったよ! 畜生サボればよかった!
「何故ですか?」
「お前らを鍛え直せと少将から頼まれた。大人しく訓練受けろ。それがお前らの仕事だ」
「少将からですか」
「少しでも戦力を上げたいらしい。他の班も上が何かしら画策して戦力上げるために扱かれてるらしいぞ」
切羽詰まり過ぎじゃないか上層部。もっと他にやりようがあるでしょうに。っていうかなんでよりにもよって師匠なのさ!!
「で、お前らの担当は俺。取り敢えず明日からやるから、今日は休め」
「師匠、私は?」
流石に私と他の四人を一緒には扱かないだろうと手を上げて聞く。
「お前は親孝行でもしてろ」
「一人だけ扱いが雑!!」
その後、夕食を食べ、シャワーを浴びて広間に行くと師匠とエルくんたちがいた。何をしているのかと中に入る。
「何でここにいるんですか」
「死にかけたところを拾われたからだな」
「……後で親に連絡をしても?」
「いいぞ」
淡々とした会話だ。
エルくんは師匠と話すためにここに来て、ほか三人はやることもないのでここにいる感じかな。仕事のために来たから、何も持っていないのだ。
「お、フィオーレ」
「混ぜてください」
「そう言えばフィオーレとはどういう経緯で出会ったんですか」
「俺を拾ったのコイツ」
「落ちてたので拾いました」
そんな「何言ってんだコイツ」って目で見ないでほしい。事実なんだもの。
「暇なら事細かに教えてやろうか」
「是非」
「じゃあフィオーレはニコラと遊んでろ」
「来た次の瞬間追い出された。悲しい」
「ニコラ、お前が向こう行ってから寂しそうだったからな。可愛がってやれ」
「はぁい」
仕方ない。大人しく追い出されるとしよう。久々だしニコラの近況でも聞くとするかな。
私はニコラがいるであろうニコラの部屋へと足を進めた。




