三十一話 その1
今日は国王の生誕祭である。
街は賑わうし、王宮は今日のためにいつもよりも豪華になっている。王宮で開かれるパーティーには国のお偉いさんや貴族の人が集まり、最初は壇上にいる国王からお言葉をいただき、その後挨拶回りなんかをする立食式のパーティーになる。まぁ他にも色々あるが、それは今は割愛。
「準備はできましたか」
朝のミーティングのために集まった部屋でエルくんが確認を取る。こういう時のための軍服を着たエルくんは本当に綺麗ですありがとう神様。いつもよりもきらびやかなその衣装は機能性が落ちるがとても目の保養になるよ。この衣装を作った人は良い仕事をする。是非ともお礼を言いたい。
もちろんそれと同じ様なデザインの衣装を私も着ているのだが……馬子にも衣装だと思う。なんだろう。バルドさん、エルミオさん、そしてカルトスさんもよく似合っているのに私だけ服に着られているこの感じ。
「私達は今日パーティーでの警護です。何があるかわかりませんから、気を抜かないように」
いつもよりピリピリとした雰囲気が漂う。
でも、それでいい。油断しちゃいけない。
小説の中では今日、第一王子が殺されるのだから。
可愛い教え子とエルくんは言っていた。事実、結構仲良さそうだった。そんな子が死んだらエルくんは悲しむだろう。悲しむエルくんも絶対可愛いだろうけど、やっぱり悲しむのは見たくない。ので。
第一王子は殺させない。
そのためにも気を抜くわけには行かない。小説ではもう既に亡くなっていたし、この事件の詳細はあまり語られていなかった。わかっているのは、本来狙われていたのは国王で、第一王子は国王を庇ったということのみ。いつ、誰が、どのように彼を殺したのかはわからない。
それでも助けると決めたから、助ける。何を使ってでも。
「では、各々持ち場についてください」




