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目標:推しキャラ死亡ルート回避  作者: 櫻井 羊
序章
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三十話

「そういえばフィーちゃんは何人家族なの?」


 その日の仕事を終えて、班のみんなで夕飯を一緒に食べることとなった、夕飯の席でエルミオさんがそんなことを聞いてきた。


「4人です。両親と弟がいます」

「あらそうなの?」

「はい。エルミオさんは?」


 提供されたご飯を食べながら話を続ける。そういえば先輩たちの家族の話は聞いたことがないな。


「私は母親と、姉が2人よ〜」

「女性ばかりなんですね」

「そうなのよ〜。逆にバルドの家は男の人ばかりよねぇ」


 エルミオさんがもりもりと山盛りのご飯を食べているバルドさんに話を振った。なんかバルドさんリスみたいになってる。よくあんなに食べられるなぁ。


「……そうですね。両親と、兄と弟が一人ずつ。姉妹はいませんね」

「ほぇ〜」


 やはりバルドさんにもご兄弟がいた。

 この国はひとりっ子というのは珍しいく、どの家庭にも2人以上の子供がいるのだ。ひとりっ子は結構珍しいし、私も見たことがない。あ、私同世代の友達ほとんど居なかったわ。悲しい。


「カルトスさんはお兄さんがいるんでしたっけ」

「ん? あぁ。兄が1人いるな」


 カルトスさんのお兄さんもムキムキなんだろうか。いや、流石にカルトスさんがムキムキだからといって親兄弟までムキムキとは限らないよな。うん。


「因みに、ルヴィンは従兄弟だ」


 親兄弟もムキムキの可能性が上がったぞ。


 というか、ムキムキ二人は従兄弟だったのか。すげえな。


「親戚に有力種がいるって珍しいわねぇ。私のところは私以外みんな通常種よ」

「そうだな」

「オレもオレだけですね」


 エルミオさんの言葉にウンウンと頷く。

 有力種の数は少ない。なので家族内で有力種が一人だけ、ということもよくある。希少種? 生きているうちに会えたら奇跡のレベル。見ろ、私が奇跡だ。


「少佐は? そういえばそういう話を聞いたことがない」


 カルトスさんがこれまた山盛りのご飯を食べるエルくんにきくと、自分に話が振られると思っていなかったのかエルくんはキョトンとしていた。可愛い。え、滅茶苦茶可愛い。額縁に飾りたい。


「両親と兄が3人、姉が1人いますね」


 さらりと答えるエルくん。知ってる。エルくんはお母さん似とも小説に書いてあった。あとお兄さんにも似てるよね。


「少佐が末っ子……!?」

「嘘だろう!?」

「どちらかといえばフィーちゃんのほうが末っ子っぽいわよねぇ」


 たしかにしっかり者の少佐は末っ子ぽくない。っていうか私そんなに末っ子ぽいのか。もう少し大人になるべきなのか? 大人になるってなんだ? え? 何すればいいの?


「私以外には次男が有力種でした」

「あら、珍しい!」

「ということはお兄さんも軍に?」


 家庭に2人有力種がいる珍しい事例が近くにいたことに驚いたエルミオさんたちはそうエルくんに聞いた。まぁ有力種の殆どは軍に属しているからね。


 エルくんは最後の一口食べ終えてから、少し考えて、そして口を開いた。



「いました。いなくなりましたが」



 その一言に他の三人は何も言えず固まってしまう。

 私は生ぬるくなってしまったスープを飲み続けていた。味噌汁が恋しい。


「数年前、仕事中に行方不明になったそうです」

「それは……その……」

「迂闊に聞くもんじゃなかったな……すまん」

「すみませんでした」


 顔色を悪くした三人が口々に謝る。食べ終えたあとで良かった。気まずい空気で食べることになるところだったな。


 魔法軍にまわされる仕事の殆どは危険度の高いものとなる。もちろんその班の実力を鑑みて仕事は回されるが、それでも危険なことに変わりはない。どうしても怪我人はでる。最悪死人もでる。


 仕事中に行方不明、というのは珍しいがないわけではない。例えば山の中で深手を負って、川に落ちて流されたとか。しかもその日は雨が降っていて川には増水。水の勢いも増していて探すのが困難だったとか。しかもその山には人間をも食べてしまう肉食獣が出るとか。


 兎にも角にも、捜索が困難だったりする場合もあり、後日探しても見つからなかった場合は行方不明扱いになる。ヒョコッと見つかればいいが、大体は見つからない。数年も経てば死んだものと周りは考えるのだ。


「まぁ両親は信じてませんが」

「そうなんですか?」

「はい。次男は崖から落ちても無傷で帰ってきましたし、熊と対峙して殺されるどころか逆に仕留めてきたりと、そんな簡単に死ぬような人間ではないので」


 ちょっと凄すぎないかな。


「ですから、私達家族は恐らく次男はその辺でのんびり暮らしていると思ってます」



 そう言うエルくんは慈愛に満ちた表情をしていた。







「あら、フィーちゃん……貴方それしか食べないの?」

「スープだけですか?」

「えぇ、まぁ。今日はちょっと……食べられそうにないので」


 曖昧に笑って答えたら滅茶苦茶心配された。よくあることだし、慣れているから大丈夫なんですよ。

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