二十四話
「もっくーん! やっほー!」
「なんでいる」
合同任務の次の日、両班ともに休みだと聞いたのでもっくんの部屋に突撃したらすごい顔で出迎えられた。悲しい。
因みに合同任務は普通にうまくいった。先輩たちが頑張ったおかげで私はほぼ何もしなかったよ。
「友好を深めに!」
「へー」
「反応が薄いぞもっくん!」
備え付けの家具以外ほとんど何もないその部屋のベッドの上で胡座をかいたもっくんは相変わらず私に冷たい。
「もっくんが今日暇だと聞いて!」
「誰からだよ」
「のえるさん」
「上司! オレのプライバシーは!?」
「んなもんあってないようなもんじゃない?」
私もエルくんに部屋に侵入されるし。最近だと窓からカルトスさんも入ってきたな。
「今日は天気がいいよ。絶好の散歩日和だよ。ねぇねぇ、一緒にお外行こうよ」
「行かない。他のやつ誘え」
「私他に知り合い居ないし」
「……」
他の同期とは話す間もなく別の班に配属されちゃったからなぁ。もっくんとはトーナメントの時に少し話せたけど。
「なんでオレなんだよ」
「んー?」
「愛想悪いし、目つき悪いだろ。もっと他のやつに構ったほうが楽しいと思うが」
「私はもっくんと仲良くなりたい」
「お前ね……」
「というかぶっちゃけると、他のみんな年が少し離れてるから話し辛い」
この国の軍には基本的に18になってから入る。15から魔法学校に通って魔法の扱いを覚えて、18でそこを卒業。軍に入る。その中の例外が私のように家で魔法を習い、軍の基準を満たした者だ。こちらは15から入れる。私は15。
「お前15だっけ」
「そだよ〜」
「同い年か。まぁ、たしかに他のやつは18だったな」
「同い年とつるみたい」
「…………少し待ってろ。この本のキリのいいところまで読みたい」
「待ってる!」
これでも食ってろ、と渡されたクッキーを食べながら本を読むもっくんを眺める。相変わらず彼の左目には眼帯がつけられていた。
もっくんもといモナ・リモワール。真っ赤な髪に右は翠、左は紅の瞳を持つ有力種。15歳。
彼は、本の中に出てきた人物だ。
主人公たちの通う学園に在学し、ツンケンした態度を取りながらも主人公たちが危ない目にあうときは颯爽と助けに入る人物。
挿絵なんかにも登場してたから、ひと目見た時に気づいた。年も一緒だし仲良くなりたかった。
ついでにいうと私の友人(腐女子)の推し。
幼い頃にその瞳の色が違うことから親に不気味に思われ、怪しい研究所に売られ、それを軍に助けられて、ノエルさんに引き取られて、軍に入った。実は希少種に近い魔力量を持っている。
という設定をなんとなく覚えているんだけど、如何せんその友人から聞いたものが多いから、それが公式なのか非公式なのかがわからない。
まぁ、これから関わっていくうちにわかるかな。
「もう夕方ですよもっくん……!」
「すまん」
もっくん眺めてるうちに気がついたら寝てて、そして起きたら夕方だった。もっくんはまだ本読んでた。仕方ない、また後日押しかけるとしよう。




