二十三話
「オレとの試合でも使いませんでした」
もっくんは私を睨みつけながらそんなことを付け足した。そんなもっくんの言葉を聞いたエルくんが私に目を向けて、口を開く。
「それ、試合成り立つんですか? 相手は魔法を使いますよね?」
「攻撃避けて、ひたすら避けて、相手に隙ができたら殴りに行きます」
「拳で?」
「拳で!」
「……」
おいおいエルくんや、そんなドン引きしなくても。私が新しい性癖の扉を開いてしまったらどうするんだい。
因みに、トーナメントで魔法を使わなかったのは師匠に言われたからである。「俺の弟子なんだから、魔法使わなくても優勝できるよな?」と。できなかったわけなんだけども。
「まぁそれはさておきだな! 仕事の話に移ろうではないか!」
「あぁ、すみません。フィオーレ、こちらはB班班長のノエルです」
「のえるさん」
「君がA班の新入りであるフィオーレくんだね! モナと仲良くしてくれ」
「勿論! 拒否られてもめげずにアタックします!」
「そこはめげろ」
「もっくん私に対して辛辣すぎない? もっと優しくしても良いんだよ?」
「ノエルさん、次の仕事って……」
「おっ? 無視かな??」
泣くぞ?
ノエルさんがもっくんに促されて仕事の話を始めた。いいもん別に。
次の仕事は大型魔獣の退治。確認された魔獣の大きさが異常ということで、人数を増やして対処に当たることとなったらしい。使う魔法は雷。
「水は相性が悪いですね。エルミオと、そちらだとキドがたしか水属性でしたね」
キド、と呼ばれたフードの男が静かに頷いた。フードのせいで顔が見えない。どんな顔してるんだろ。
「あとは……ノエルは風、ルヴィン、ヒルデは雷でしたね」
ルヴィンはムキムキ、ヒルデは猫目。覚えた。
「火はもっくんですね」
「えぇ」
「土属性少ないですね?」
「まぁ、使うための条件が限られますから」
土魔法は基本的に土がある場所でしか使えない。室内なんかだと土魔法は使いにくいのだ。だからあまり使用されない。
他の魔法にも使用するのに適さない場所なんかは存在する。魔法は万能ではないのだ。特に、属性が固定されてしまったものは。
まぁでも魔法が案外不自由なのは良いことだと思う。
魔法は殺傷能力が高すぎる。
だって前世であった漫画みたいに派手なモーションなんて付けなくても、火魔法なら相手に直接火を付ければ焼き殺せるし、水魔法なら簡単に窒息死させられる。言ってしまえば人間の約七割は水分だからそれをつかえばもっと簡単に殺せる。雷魔法だって出力を上げればショック死させられるし、土魔法なら生き埋めなんかもできるし、風魔法なら相手をみじん切りみたいにもできる。考えただけでも怖い。
本当、人間の魔力量が少なくてよかった。
「こういう内容でよろしいですね?」
「問題ないな!」
「ではそれで。明日はよろしくお願いします」
気がつけば会議が終わっていた。
やばい、殆ど聞いていなかった。




