二十一話
「……」
「……こんにちは?」
エリーゼさんとぱっちり目があった。逆さに浮いた私を暫く見つめたあと、エリーゼさんは真顔でシルフさんに近づく。
「シルフ、あんた何した」
「無実だよぉ」
「私が勝手に浮いてるだけです〜」
「おやそうなのかい」
私の言葉に納得したらしいエリーゼさんはシルフさんに何やら書類を渡していた。なんだろあれ。
「人間も飛べるんだね」
「浮いてるだけだけどねぇ」
「楽しいです」
ふわふわ浮いたままの私をよそにシルフさんはエリーゼさんにことのあらましを説明し始めた。これ楽しい。意外と楽に移動できるし。
「……というわけなんだよぉ」
「なるほどねぇ。取り敢えずエルベルトには報告しておくんだよ」
「はーい」
「あと、外でそれは使うんじゃないよ」
「なんでです?」
「話を聞く限り、それを使えるのは希少種だけなんだろう?」
「そうだねぇ」
「なるほどバレる!」
「そういうこと。いいね」
「はい!」
ふわりと地面に足をつけてから元気に返事をする。何故か頭を撫でられた。もっと撫でて良いのよ、と頭を押し付けたらワシャワシャしてくれた。嬉しい。
「というわけで報告しに来ました」
「……」
何やらデスクワークをしているらしいエルくんに報告したらエルくんは頭を抱えてしまった。
「頭痛いんですか?」
「いえ……ちょっと……」
「紅茶飲みます? 淹れてきますよ」
「…………クッキー食べますか」
「わぁい!」
エルくんに茶葉などの場所を聞いて、いそいそと紅茶を淹れる。クッキー、クッキー。
「……きみは、そうしていると子供みたいですね」
その言葉に振り返るとエルくんが慈しむような視線を私に向けていた。
この国では18で正式な大人とされる。しかし15でもほぼ大人と同じようにカウントされるのだ。だから私も軍に入れたわけだし。
私に向けられたその視線は幼い子どもに向けるようなそれ。
「……私は結構大人ですよ」
だから、戦場にだって立ってみせるよ。
「そういえば、勉強は進みましたか?」
「あっ」
エルくんとのお茶会はそりゃぁもう最高だし呼吸困難になるかと思ったけど、その後笑顔で課題を出された。つらい。




