十八話
人々が足早に行き交う大通。活気溢れる言葉が飛び交うそこの上には一雨来そうなどんよりとした曇り空が広がっている。
今日の仕事は街の巡回です。
「相変わらず賑わってますね」
「そうねぇ。あら、美味しそうな匂いがするわ」
そう言ってキョロキョロと辺りを見渡すエルミオさんと二人で人の多い道を歩く。何かあった時、すぐに動けるよう注意して置かなければいけないから、少し疲れるんだよねこの仕事。それに人が多いと身動きが取れないし。魔法使えないし。
この国では有事でない場合の魔法の使用を禁じている。
それは軍人の私達にも適用されていて、そうとうヤバくないと使えない。相手が魔法を使ったりすれば使えるけど、早々ない。
「わっ!」
「あらっ?」
変な人間がいないか気を張っていると、隣から二人分の声が聞こえた。エルミオさんと、あとは……あぁ、足元に10歳くらいの男の子がいる。
「ごめんなさいね、僕。大丈夫?」
「こっちこそごめんなさい! 僕は平気!」
「それはよかった。今日は特に人が多いから気をつけるのよ」
「うん!」
元気な男の子はそう言って走り去ってしまう。あの調子じゃまた人にぶつかりそうだなぁ。
なんとなく男の子の後ろ姿を追いかけていると男の子の腕に特徴的なブレスレットがつけられているのが見えた。
「あの子有力種ね」
「そうですね」
男の子の腕につけられたそれは魔力制御装置。魔力の扱いに慣れていない者が身につけるものだった。
基本的に有力種の魔力は体が出来上がるにつれて増えていく。体に無理がないように、少しずつ。
しかしごく稀に、他人よりも魔力の増えるスピードが速い子供がいる。
子供はまだ魔法の使い方などわからないし、何をしでかすかもわからない。過去に魔法で生み出した炎で火事を起こした子供もいる。知識がないと無邪気に大惨事を引き起こす。最悪の場合周りにも被害がいくし、子供本人の命が危うい場合もある。
だから、毎年行われる検査で魔力量が基準より多いと判断された子供には制御装置を着用するよう求められる。
因みに私は一時期つけていたのだが、数時間で制御装置が壊れた。希少種すごい。
「フィーちゃん、あっち行きましょ」
「あっちには美味しいパン屋さんがありますよね」
「もうすぐお昼どきじゃない?」
「そうですね。買いますか!」
折角だもんね!
パンはとても美味でした。また買おう。




