十六話
「ふむ……これはこれは」
「ねぇ、暴れる気がないなら歩かない?」
「この状態が意外と快適でな」
現在、私は土魔法で蜥蜴を軽く固め、バルドさんが風魔法で運んでいる状態だ。因みに徒歩。魔法って疲れるからできることなら歩いてほしい。土魔法だってその状態を保つために魔法かけ続けなきゃいけないんだぞ。っていうか土魔法いらなくない? 運ぶだけならバルドさんの風魔法だけで済む気がする。
「土が冷たくて気持ちいい」
「さいですか」
この蜥蜴、人間の言葉を話せるらしく、普通に私達に話しかけてきた。私達が派遣された理由を説明すると、「あまりに理不尽なことさえしなければ大人しくしていよう」と言ってくれたので、そのまま研究所へ連行中。
「っていうか君、蜥蜴って感じしないね」
「蜥蜴?」
「君蜥蜴でしょ?」
「知らん。恐らく、それは人が勝手に名付けたものだろう」
あぁ、そりゃそうか。動物や魔物がその名前を名乗り出たわけじゃないもんね。
「で、童は儂をなんだと思うんだ」
「童じゃないですー。竜かな。大きいし」
この飛び蜥蜴、2mはあるし、首が少し長い。それに牙も生えている。私の知っている蜥蜴とは何もかもが違っていた。
「そうか」
「で、本当に蜥蜴なの?」
「知らん」
「えぇ。人語話せるくせに」
「昔言葉を教えてくれた人間がいただけだ」
「その人は君をなんて呼んでたの」
「シルヴィア」
「かっこいい名前だね」
「だろう?」
シルヴィアか。良い名前。格好良い。
そんなふうに駄弁りながら歩き続こていると、前方に研究所が見えてきた。白くて大きい建物だ。




