十三話
「研究室、ですか?」
「えぇ」
あの後、急いで部屋に戻ってシャワーを浴びて、着替えて、着替えが終わったところでちょうどよくエル君が迎えに来た。エル君の後についていきながら行先を聞けば「研究室です」とエル君が答える。
研究室に行くのに私服はまずくないだろうか。いやでもエル君も私服だし……。
研究室とは軍の研究室のことだろう。魔法についての研究室。魔法武器の開発もそこでやっていると聞く。
「魔法軍の人間はある程度慣れてくると研究室で自分用の武器を作ってもらう人が多いんです」
「少佐のもですか」
「えぇ。本人の得手不得手を考えて微調整をしてもらうんです」
私の場合は魔力調整ですね、と言う。
「私のも作ってもらえるんですか?」
「今の状況じゃ無理ですね」
「えぇ……」
じゃぁなんで私を研究室へ向かわせるのか。
「何かあった時、各方面に信頼できる人間を作っておいたほうが良いですよ」
「信頼できる人間」
「はい。研究室の後は医療班の方へ顔を出します」
「わかりました」
信頼できる人間ね。
「へぇ~~~君が希少種ね~~」
間延びした口調の男が私の周りをウロチョロする。男……? たぶん男。
「シルフ。フィオーレを怖がらせないでください」
「は~い」
エル君に注意されて離れた男はシルフというらしい。シルフ。
「って、私が希少種だと知ってるんですか」
「少佐が教えてくれたよ~。珍しいねぇ」
「はぁ……」
「彼に君をどうこうしようという気概はありませんよ」
「ワタシはか弱いからねぇ」
「か弱い」
確かにひ弱そう。ひょろっひょろじゃないか。
シルフさんはひらりと私から離れて椅子に座りなおす。この人色白すぎやしないだろうか。ちゃんと外出てるのかな。
「武器に何かあったらワタシのところにおいでぇ~」
「え、なんで」
「魔法武器の修理、制作は基本的に研究室でやってるんだ~。それに、専門家が見えればそれが魔法武器かどうかなんてすぐにわかってしまうからねぇ」
「あー、なるほど」
専門家が見てしまえば私が魔石を利用していないってすぐわかるのか。それは困る。
「遠目に見たりするだけじゃわかんないけどねぇ。手元に来ればわかるよぉ」
そういってシルフさんは机に置いてあった銃を手に取る。
「そういうことです。シルフ、よろしくお願いしますね」
「はぁい」
シルフさんが手を振ってきたのでそれに返して、研究室を出る。
「あそこはシルフ専用の研究室で、出入りする人間は少ないので安心していいですよ」
「なるほど」
研究室を後にした足でそのまま医療班のいる建物まで歩いていく。なんか爆発音が聞こえた気がするけど、気のせいだよね。




