十二話
「立て! もう一本だ!!」
「も……無理です……」
地面が冷たくて気持ちいい……。
一日休日の今日、私はカルトスさんに稽古をつけてもらっていた。何度も投げ飛ばされるし、魔法の使用は禁止だから生身の攻撃仕掛けても躱されるし、カルトスさんの一撃は重いし、何より。
「このくらいでへこたれるとは、体力ないな?」
この人、体力オバケだ!!!!!!
もう稽古を始めて何時間か経っている。その間ずっと全力で戦ってるんだよ? ふつうは体力が切れる。なんでカルトスさんそんな元気なの?
地べたに這いつくばったまま動かない私にしびれを切らしたのか、カルトスさんが静かにこちらへ近づいてくる。
「大丈夫か?」
「ぅぐぅ…………」
あろうことかカルトスさんは私の首根っこをつかんで持ち上げた。片手で。あんたの腕力はどうなっているんだ。この人なら林檎を片手でつぶせそうだ。今度似たようなものでやってもらおう。
「カルトス、そのあたりにしておきなさい」
「少佐」
「おはようございます。二人とも」
「おはよう」
「おはようございます……」
カルトスさん、降ろしてください。
鍛練場にに現れたエル君は私服だった。イケメンは何着てもイケメンだね。対する私は泥だらけだよ。恥ずかしくなってくるから着替えてきたい。
「カルトス、貴方は体力オバケなんですから手加減しないといけませんよ」
「しかし、フィオーレの体力のなさは問題だぞ」
「何時間やってるんです」
「二時間だな」
「十分ですよ。今日は終わりにしなさい。フィオーレ、君、この後は何か用事がありますか」
えー、と言いながらカルトスさんが不満そうに私を地面におろす。足に力を入れて立って、エル君と視線を合わせた。
「ないですね」
っていうかエル君からのお誘いなら用事をすべて断ってでもついていく。
「そうですか。では少しついてきてください」
「はい」
「では後程部屋に迎えに上がりますので」
良し。速攻で風呂に入って、着替えよう。
「カルトスさん、稽古をつけてくれてありがとうございました」
「俺も楽しかった。またやろうな」
「………………はい」
次は、こんな惨状にならないことを願いたい。




