Link11「咲き乱れる愛の花でいっぱいです」
レインの唇に触れた途端、嬉しさに溢れて口づけの勢いがつく。さらに舌を搦めて彼女を味わわせてもらう。口づけは何度も重ねているが、今日は特別だ。全身が嬉しさに打ち震えて自身の行動が止められない。
それに未だ口づけに緊張するレインに愛おしさが募って余計にだ。オレの理性は炙られ劣情に燃え上がる。唇だけでは物足りず、オレはレインの首筋や鎖骨に唇を落とし、赤い印を刻んでいく。
初めは鬱血痕を痛がっていたレインだが、今は素直に感じるようになっていた。今はこの華の意味が分かっているのだろう。綺麗な肌に所有の華が散らしていく。これはオレだけが散らせる特別な華だ。
レインに視線を向けると、彼女は顔を真っ赤にし、異様にモジモジした様子で何か物言いたげであった。何やらリラウサカップルの方を気にしている。
「レイン? どうした?」
「ラ、ライ。これ以上は立ったままじゃなくて、ベ、ベッドがいい」
そういう事か。レインはリラウサ達にこの行為を見られるだけで羞恥に見舞われるのか。
「あぁ、そうだな」
何処までも可愛い反応を見せるな。ここは可愛い反応に免じてリラウサ達には見られない寝台へと移動し、甘やかな時間を引き戻す。そして二人だけの世界に溺れ合い、最高の贈り物を貰った。
「ライ、愛してる。オレを愛してくれて有難う」
心臓を撃ち抜かれた。レインはオレが生涯かけて愛したいと思った唯一の存在だ。その想いはこうやって彼女と繋がれば繋がるだけ大きくなる。
「レイン……それは……オレも同じだ。有難う、愛している」
オレはこれ以上にないほどの笑みを広げて答えた。そして互いの想いに溢れたオレ達は精が尽きるまで愛し合った後、眩い世界へと微睡んでいった……。
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心地好い温もりに包まれながら目が醒めた。腕の中には愛しのレインがいる。
――リラウサ達が隣にいる。いつの間に……。
二匹は仲が良さげに寄り添っていた。途中でレインが目を醒まして、ここに連れて来たのだろう。よっぽど気に入ってくれたんだな。そしてレインはまたオレの腕の中に戻ったのか。それが嬉しくてオレは彼女の躯をギュっと包み込んだ。
――幸せだ。オレの幸せはレインそのものだ。
彼女が男だろうが女だろうが、オレにとってかけがえのない大事な人だ。とはいえ、女でいてくれて本当に良かったと思っている。ずっと傍にいて貰えるからな。オレはこの命が尽きるまで絶対に彼女を離さない。
ふとリラウサ達を見ると、祝福しているような温かい眼差しをしていた。こうやって見ると、ただのぬいぐるみには見えない。オレとレインの絆を深めてくれた特別な存在。今後もこのリラウサ達とずっと一緒だ。
将来オレとレインの家族が誕生すると、リラウサ達も増えていった。赤ん坊が生まれた記念に送られる子ウサが誕生し、それをオレはレインにプレゼントしていた。彼女はいつも嬉しそうに子ウサの洋服を作っている。
リラウサはぬいぐるみだが、オレとレインには生きているように見え、家族のような存在となっていた。一緒にいると幸せに守られているみたいで、だからオレは家族が増えると、新しい子ウサを迎えていた。
レインと生涯を誓ってから丸十年が経った頃には親ウサ二人に子ウサは四人となっていた。オレとレインの子供♂三人と♀一人と同じ数だ。そして四人目が生まれる前、オレは騎士団長へと昇格した。
家族が増える一方で仕事は忙殺となり、レインに子供の面倒を任せっきりとなっていた。彼女は文句の一つも言わない良妻賢母で、子供達はやんちゃ者ばかりだが元気で素直な子達ばかりだ。♂三人はオレと同じように騎士になると夢を抱いている。
ある日だ。レインが体調を崩した。子供達の面倒を見ながら飲食店も経営する彼女にとんだ無理をさせたと、オレは自分を酷く責めたが倒れた原因は別にあった。おめでただったのだ。
オレは急いでリラウサ専門店に足を運んで、新しい家族となる子ウサを見つけに行った。初めの頃、話し掛けてきたあの店員は今では店長となって、すっかりオレとは顔馴染みだ。そしてこの日、新しい子ウサを迎えた。
「ただいま」
帰宅するとすぐにレインが出迎え、オレは手に持っている大きな包みをすぐに渡す。彼女の表情がパッと輝き、中身が何か気付いたようだ。早速彼女はリボンを解いて中身を取り出す。
「わあっ! 新しい子ウサだ!」
中身が何か分かっていても、彼女は初めて目にするような興奮を見せてくれる。生まれてくる子がまだ男か女か分からないが、元気な子であればどちらでも構わない……とはいえ、やっぱり女の子は可愛い。
娘は絶対に嫁にやらんという父親の気持ちが長女が誕生して実感した。今度も同じ気持ちになるのだろう。そして五人目は女の子だった。オレとレインの性格には全く似ず、恥ずかしがり屋でしおらしい子に成長した。
事もあろうにジュラフ団長の七番目の息子から執拗な猛アプローチを受け(団長似で恐ろしい執念の持ち主)、娘を巡ってバトルになるとはこの時のオレは知る由もない。それにしてもジュラフ団長とは切っても切れない縁が続くのであった……。
「お父さん、おかえりなさい」
「わあ! あたらしいリラウサだぁ~!」
「みせてみせて!」
「ミィーにもみちてぇ~」
一斉に子供達が出迎えてくれたが、すぐにレインの持つリラウサに食いついた。どの子もレインに似てリラウサが大好きなのだ。オレはヒョコッと一番下の娘ミスティを抱き上げて、子ウサに近づける。
するとミスティは手を伸ばし、嬉しそうに子ウサを抱き締めた。息子達が「ずっるーい」「お父さんはミスティにあっまーい」と、頬を膨らませて抗議する。そう様子をレインは破顔して見つめている。
レインと子供達見てオレは心底果報者だと思った。この未来があるのはすべてレインが命を張ってオレを助けてくれたからだ。その恩を忘れずに生涯彼女と子供達を愛し続ける事を改めて心に誓った……。
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「ふむ、変わらず万事オッケーで何よりだ」
招かれてもない客がセラス家に闖入していた。黒曜石のような艶やかな長い髪と赤紫の双眸をもつ麗人である。際立つ容姿をもっているにも関わらずセラス家の人間は誰も彼女の存在に気付いていない。
それもその筈。彼女は人間ではなく生まれたての新しい命を運ぶ天使である。彼女はかつてライノーの命を救う為にレインを手助けした……と言えば聞こえはいいが、実際彼女のとんだミスでレインとライノーにド迷惑をかけた張本人だ。
彼女は時折こうやってセラス家に来て様子を覗いている。今となってはレインとライノーの二人は特に問題はないのだが、万が一歴史が変わるような事があれば軌道修正を行う必要がある。
レインの人生は女として生まれ、ライノーと生涯を共にする運命である。ところがこの天使、色恋沙汰に溺れている間に誕生したレインの魂を取り損ねてしまった。後日新たに受精が実り、再びレインの魂は誕生するが……なんと! 性別が逆になっていた。
その事に天使が気付いた時には取り返しがつかず、レインは男として決定されてしまった。天使は仕方がないと潔く諦めたのだが、後に死ぬ筈ではなかったライノーの命が絶たれるという歴史に狂いを出し、神の怒りを買ってしまった。
責任を負う事になった天使は僅か十日間の時間で男のレインを女に戻さなくてはならなくなった……というのが事の発端である。そもそもレインが女に生まれていた時点でライノーとは結ばれる運命にあった。
何故なら女であれば、ライノーは殺し屋の首領がレインを好ましく思っていない場面に遭遇し、おのずとレインに好意を抱く運命であった……のだが、レインが男であれば、ライノーは殺し屋首領の本性を知る事が出来ずに死ぬ運命となるのだ。
天使は無事にレインの人生を女として軌道修正させたが、歴史を正してもレインが男であった記憶が彼女にはあり、それはライノーも知ってしまった。それがいつ歴史を綻ばせるか分からない為、天使は定期的に二人の様子を見に来ているのだ。
――それにしても驚いたな。ライノーにレインが男だった頃の記憶が残っていたとは……。
レインが女になった世界ではライノーに男レインの記憶は消失している筈だ。なのに彼は断片的に男レインとの記憶を引き出していた。これは完全に予想外であった。
――それだけ彼等の絆と愛が深いというわけか。おまけにリラウサまでリア充とみた。……ケッ。
天使は羨望のあまりか、無意識の内に品のない舌打ちをした。これ以上人の幸せなんて見てらんなぁ~いと、踵を返そうとした時だ。
「こうやって幸せがあるのもレインが女でいてくれたからだな」
「オレもそう思うぞ。幸せを感じる度にあの女神に感謝しているんだ。女に戻してくれて有難うって」
背後からレインとライノーの会話が聞こえて天使は足を止めた。振り返ると幸せオーラ全開の二人の姿に天使は胸の内に何とも言えない感情を抱いた。自分のミスで散々大変な思いをさせた二人は自分を恨むことなく、寧ろ感謝しているのだ。
――何処まで人が良いんだか……。
呆れ返っている天使だが、胸のポカポカしたい気持ちに悪い気はしていない。
――人間も悪くないもんだな。
天使は魂を運ぶだけで特に人間には興味なかったのだが、関りを持てたのが「レイン」と「ライノー」であった事を心から嬉しく思えたのだった……。
これにて完結となります。ここまでお読み下さり、有難うございました✨
今作ですがムーンライトにて番外編を構想中です。レイン&ライサイドも18R部分込みの完全版をムーンに掲載しています。ご年齢に問題がない方はいらしてお読み頂ければ幸いです。ではでは☆彡




