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第5章ー20

 岡村寧次大将は、マッカーサー将軍と協議して、来春発動予定の大雑把な作戦を立案していた。

 その作戦に従えば、主なハンマーは米軍になる予定だった。

 

 北から順に述べるならば、北京から大同へ、そして、太原から西安、更に成都を米軍の一部は目指す。

 また、開封、洛陽、西安を一部の米軍は目指して、大同、太原を経由する部隊の助攻を務める。


 そして、米軍の主力が進撃するのが、合肥、蕪湖方面から武漢、襄陽、荊州、長沙だった。

 それらを制圧した後、米軍の主力は長江沿いに、成都を目指すつもりだった。


 それでは、日本軍は何を主にするつもりなのか。

 それは香港や仏印を拠点として、広州、長沙、南寧、桂林等を目指すという大作戦だった。

 これにより、福建省や江西省等を、共産中国政府から孤立化させ、それによって現地の省政府、住民の投降を促そうというのである。


 つまり、これまでに日本軍が制圧している地域を米軍が使用して、共産中国政府の現在の事実上の首都である成都への進撃を目指す一方、日本軍は事実上、新たに香港や仏印を拠点とした攻勢を執るということで、これには日本軍内部からも、もう少し我々に花を持たせろ、という声が上がる作戦でもあった。

 しかし。


 事実上の現地を交えた陸軍のトップ会談となった梅津美治郎陸相、永田鉄山参謀総長、小畑敏四郎シベリア派遣総軍司令官、岡村中国派遣総軍司令官の四者会談において、上記の基本方針は承認されることになった。

 それは幾つかの理由があった。


 まず第一に、日中戦争以来の戦争の結果、日本の疲弊もかなりの程度になっていたことである。

 先日、台湾の住民から志願兵を募る法案が、帝国議会において可決成立し、速やかに志願兵を募集する有様になっていた。

 既に日本本土の人員だけでは、定員を満たすのが困難な有様になっていたのだ。


 この当時、日本の人口は約7000万人程であり、その人口だけからすれば約700万人の兵を動員することも理論上は可能だった。

 だが、現実の話をすると、それは絵空事だった。


 まず第一に、基本的に日本の場合は、動員した兵を国外に派遣せねばならないという事である。

 しかも、海上輸送して、大量の物資も運ばねばならない。

 そのための人員が必要不可欠であり、更に派遣先も欧州等、かなりの遠方が含まれている。

 こうしたことからすると、700万人を兵にしてもそれを派遣して、その派遣先で維持することが、そもそも不可能に近かった。


 また、日本の産業自体からくる問題も加わってくる。

 日本国内で産業に従事する人間の多くが、第二次産業や第三次産業に従事するようになりつつはあったが、この当時の日本は、相対的にだが、まだ第一次産業に従事する人間が欧米諸国に比して多かった。

 それに日本の地形等も加わり、余り動員すると、第一次産業を維持することが困難になる。

 それに対処するために、日本でも女性を工場等で働かせることが増えてはいたが、それにも限界がある。


 そして、日本は米国と同様に、英仏等の連合国側の欧州諸国に対して物資供給の役割を担ってもいた。

 だから、余り無理な動員を日本が続けることは、連合国側の継戦能力に影響が出かねなかった。


 そういった色々の事情を考え合わせると、この1941年の秋から1942年の春に掛けての時点で日本が動員可能な兵力は、補充も含めて200万人が精一杯と言ったところだった。

 それも、いわゆる根こそぎ動員状態でである。


 だからこそ、シベリア派遣総軍と合わせて中国方面に展開している日本軍120万人というのは、それこそ懸命にない袖を振ったとしかいえず、攻勢の主力を米軍に委ねるしかない、と日本陸軍上層部は判断するしかなかったのだ。

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