表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/83

負けるな! ドングリ号11

 やがて前方に土砂が見えてきた。

 が、今度は止まらなかった。ドングリ号は速度を下げ、そのまま進み続けた。

 土砂が迫り来る。

「ぶつかるぞ! 頭をかかえて座席で伏せるんやー」

 元作さんが窓から顔を引っ込めて叫ぶ。

「みんなー、元作ん言うとおりにするんやー」

 お夏さんも叫んだ。

 全員、頭を両手でかかえて座席に顔を伏せた。

 最後に元作さんも窓を閉め、顔を伏せて車窓に目をやった。

 トンネルの内壁がゆっくり後方に流れている。ドングリ号がスピードを落とし、前進し続けていることがわかった。

「ナンマンダブ、ナンマンダブ……」

 スナばあが手の平をこすり合わせながら、口の中でブツブツとしきりに唱えている。

「ナンマンダブ、ナンマンダブ……」

 鶴じいもスナばあのマネを始めた。

 喜八さんとミツさんは顔を伏せながらも見つめ合って、じっと互いの手を取り合っている。

「あんた、じっとしちょらんか」

 徳治さんがしきりに立ち上がろうとするのを、トキさんは腕をつかんで必死に押さえつけていた。

「吉蔵、すまんな。オマエん墓、建てちゃれんで」

「そんなこつはいい。ただワシが死んだら、タマんヤツが……」

 おスミさんと吉蔵の姉弟が話している。

 ガタッ、ゴトッ、ガタッ、ゴトッ……。

 土砂はすぐ眼の前となったが、ドングリ号の足音は少しも変わらなかった。

 ガタッ、ゴトッ、ガタッ、ゴトッ……。

 ドングリ号は止まらなかった。

「元作さん、そろそろやな」

 新吉さんが両手で頭をおおう。

「ああ、じきや」

 元作さんも窓から目を離し、座席に顔をくっつけて両手で頭をつつんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ