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昼休みの食堂は、今日も盛況だ。
ここ最近は、ティモシーの来る時間を見計らって声をかけているので、リーゼロッテは今日も同じように昼食を一緒に取ろうとティモシーを探しながら料理が並べられているカウンターへと向かった。
チラチラとティモシーを探して、中央のテーブルに一人で座っているのを見つけると、ヨーグルトと果物を合えたものだけをトレーに取って向かおうとした。
そういえば隣にクレメンスがいない。
いつもはティモシーと連れ立っているのに。
そういえば昨日先約があると言っていたな。
今日はその人と一緒かなと思っていると、なんだか胸がざわついた。
するとドンとトレーにサラダが置かれた。
「え!?」
思わず目を剥いてサラダを乗せた人物を見ると、そこにはクレメンスがトレーを片手に立っている。
「え、ちょっと何よ、いらないわよ」
「野菜も食べなきゃ駄目だよ、リジー」
「いやだから」
「魚より肉が好きだったね」
続いて白身魚のムニエルと仔牛の煮込み料理のうち、肉料理が乗せられる。
「パンにはバターよりジャム」
「おいってば」
籠の中からパンを乗せられ、更にベリーを合えたジャムをトッピングされる。
「スープは?」
「だからいらないって!あ、玉ねぎは嫌!ポタージュスープ!ポタージュスープで!」
慌てて選ぶと、クルトンが大盛りで入れられた。
確かに好きではあるが、そんなにはいらないと思うリーゼロッテだ。
ようやくカウンターから離れられたと思い、ティモシーの元へ行こうとすると。
「今日はこっち」
クレメンスに右腕を引っ張られ、壁際の目立たない場所へと座らされた。
「もう!一体なんなのよ。ていうか先約があるんじゃなかったの」
ふてくされたリーゼロッテがブスくれながら席に座ると、クレメンスも向かいへと腰を下ろした。
ちなみにクレメンスは白身魚を選んでいる。
「最近、殿下の前で小食を装ってあまり食べてないだろ。リジーはもともと食べるの好きなんだから、しっかり食べなよ」
「太るじゃん!」
それに淑女は小食な方がモテるはずだとリーゼロッテが主張するも、クレメンスは涼しい顔でパンを千切った。
「リジーは痩せすぎだよ。もう少し太る方が健康的だ」
その言葉にムッとする。
確かにリーゼロッテは同年代に比べたら、あまり発育のいい方ではない。
だからと言ってわざわざ口に出さなくてもと思い、フォークを肉に刺し落とした。
「男はグラマラスが好きだもんね。どうせ胸ないよ」
大きく切った肉をやけ食いとばかりにひと切れ口に入れる。
しかし。
「そんなことは……というか、胸の話なんてこんな所で駄目だよ」
視線をリーゼロッテから少し外したクレメンスが、うっすらと頬を赤くさせた。
それを見て、おやおやと思う。
そういえば、現在自分を含めて多感な年ごろだ。
普段の無表情からは想像つかない年相応に照れた顔に、リーゼロッテは少し留飲が下がった。
(かわいい所あるなあ。こういうとき、実際は年下なんだって実感するな)
珍しいものが見れたのだし、まあいいかとリーゼロッテは久しぶりに自分の胃袋を満腹にした。
結局今日はティモシーとの接触を諦めてクレメンスと食堂前で別れると、久しぶりの満腹感にリーゼロッテはお腹をさすりながら教室へと戻ろうと足を向けた。




