蛇足
本日七話目です。
一章四話目の「私はヤマダ」関連の話になりますので、読まなくても問題ありません。
むしろこの話に問題があるかもしれません……。
ソレはただそこに存在していた。
生まれる星々を眺めながら、気が向いたときには生き物たちにほんの少し手を出す。
すると純粋な歓喜や絶望を感じることができる。
時には次元を超え、またそこでしばらく過ごす。そうやって永い刻を漂っていた。
ある時、久しぶりに通りかかった星が大きく変貌している事に気が付いた。
星を覆うほどに繁殖し、文明を築いている生き物がいる。
興味を惹かれ少し覗いてみると、膨大な情報が流れ込んできた。
永い刻の中で、これほど複雑な思考を持った生き物はいなかった。
翻弄されつつも少しずつ得られる情報を整理していく。
次第にそれにも慣れていく。
生き物たちの感情や言語、文化を学び、楽しいという感情を知った。
言語による思考の制限も面白い。
自分もそこに混ざってみたい——。
しかし余りにも強大な存在であるソレは、星に降りることができない。
諦めずに情報を得ていると、人間と称する生き物たちが遊ぶゲームという物を知った。
その空間で擬似的な生き方を楽しむようだ。
これならば、ソレにも干渉出来る。
早速、自分の知った人間の知識を試そう。
そうしてできたゲームは、余り人間に受け入れられなかった。
何が悪かったのか。
ソレは答え合わせをする事にした。
己の力を使い、ゲームに似た箱庭のような世界を作り出す。
そこにゲームをした人間の魂を、ゲームの登場人物と同じような環境において、行動・思考の流れを見るのだ。
その結果————
『全く動きが違ったな』
『まさに』
『今なら分かる』
『あのゲームはつまらなかった』
『寧ろ』
『やる奴がいた事が不思議』
『だな』
『だな』
『だな』
『しかし学んだ事は多かった』
『そう』
『次こそ』
『次こそは』
『人気の出るゲームを作ろう』
『やはりRPGが良いのではないか』
『落ちゲーの新たな可能性の模索というのも』
『捨てがたい』
『出来たらまた答え合わせをしよう』
『そうしよう』
目的が逸れても、楽しめれば良いのだ。
こうしてまた、新たな世界が生まれる。
それはいずれ他の世界と同じ様に、大きく、確かな存在に育って行くのだろう。
ソレの気紛れで壊されるその日まで————




