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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
月下星王大戦

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349-女王の行進


───場面は変わり、現実世界。

 星霜山脈チェインフォレスターの跡地にて───激闘は未だ終わらず。“天弓闘馬”、将星サジタリウスは刻一刻と迫る終わりを感じながら、その手を一度たりとも止めず。

 命燈魔法による炎の如き闘気を、大きく発散させる。

 対戦相手である魔法少女、リリーライト。突然精神世界への突入を宣言してから、彼女はずっと目を瞑ったまま。それだというのに、サジタリウスの攻撃を捌く手付きには淀みがない。


 龍の如き魔力の高まりは、依然として変わらず。状況が変化する毎に、その活性化は留まることを知らない様子。常に、一撃一撃が重くなり、鋭くなり、強くなる。

 その変化に十全に対応するのがサジタリウスだが。

 攻撃の一つ一つを丁寧に防ぎ、捌き、完璧に対処する。被弾は気にしない。極光と斬撃はどらちも危険だが、まだ対応できる範囲。


「くっ!厄介だね、本当!」


 だが───このまま消耗を狙った千日手を続けるのは、こちらが不利でしかない。

 そう判断して、決め技を放とうにも……

 自動人形と化したリリーライトの猛攻に、その動きすら素早く食い止められる。意識がないのにも関わらず、彼の手札を的確に落とし、邪魔をする。

 戦況は、驚く程動かない。

 それこそ、リリーライトが意識を取り戻すまで……その覚醒を持たねば、サジタリウスはどうにもできない。超々至近距離からの射撃にも完璧に対応しつつある自動人形を相手取るには、時間と距離が足りない。

 それでも、サジタリウスは破壊の手を緩めず。目覚めを待たずとも倒せることを証明せんと、勢いを緩めずに力を振るう。


 捨て身なのは変わらず。ただ、勝ち越せる自信をもって四肢を操る。


「天域闘舞ッ!!」


 四つ足の馬脚が大地を踏み砕き、斬撃性を纏った極光の輝きを正面から打ち砕いて、魔力ブーストによって今まで以上に加速して……

 リリーライトの速度を上回った状態で突き進む。

 命刀、命剣、剛弓、魔矢。そして、闘気を纏う己自身。持ち得る全てを活かして、リリーライトを串刺しにするか轢き潰すか。選択の必要はない。その両方を、魔法少女に叩き込む。


 自動人形が聖剣を構えたのを視認してから、力一杯に、全てを。


「───<カウス・テレベッルム>ッ!!」


 必殺の連撃。

 どんな強者であろうと、一度浴びてしまえばほぼ確実に立ち上がれないであろう技。自身でもどうかと思う暴力性乱舞をもって、リリーライトに連撃を浴びせる。

 斬って、裂いて、砕いて、殴って、穿って……

 サジタリウスが齎す連撃は、リリーライトの対応速度をすぐさま上回り、その身を次々と傷付ける。聖剣の剣閃が追い付かない。聖剣は弾かれ、腹を蹴られて、目を瞑った表情は苦悶に歪む。

 それを機に、闘気纏う命剣をもってリリーライトの額を貫かんとして……


「!」


 リリーライトの目が、見開かれる。


「おっとぉ!?」

「おや、お目覚めかい!」

「ちょっ、いたた!容赦なッ!当たり前だけど!つーか、全然使えないなオートモードッ!!」

「自分を卑下するのはやめたまえ」

「違うもん!」


 眼前に迫る命剣を咄嗟にしゃがんで避けて、次いで迫る足払いを四つ足の隙間を潜り抜けるように跳んで避けて、音速の魔矢も急旋回で避けて、拳による破壊も避けた。

 短時間で連発された即死攻撃を見事避け切ったライト。意識を取り戻した途端、全てを完璧に対処して見せたのは彼女自身の実力の高さを伺わせると共に、意思のない状態では彼女の真価を発揮できない事実を思い知らさせる。

 漸く現実世界に帰還した彼女は、目覚めてすぐの怒涛の攻撃に思わず冷や汗をかいた。

 ついでに、自慢の身体を傷だらけにしただけの乗っ取り未遂犯への苛立ちを吐き捨てる。

 使えねぇ。


「……どうやら、ちゃんと治したようだね」


 サジタリウスの目には、溢れ出る魔力が一旦止まって、普段通りに身体を動かすライトの姿が映る。

 つい数分前までの乖離状態は、そこにはない。

 それどころか……なにか、決定的に違う、差異があると確信する。


「ごめんね、待たせちゃって……そういえば、知らないと思うんだけど。私って魔法少女だけど、妖精女王ってのも兼任してるんだぁ」

「……あぁ、大丈夫。知ってるよ。情報として、だけど」

「あっ、そうなの?なら話が早いや……私って十三代目の女王でね?この女王の力って、こう、魂の奥底に継承されてってるモノなんだよ」

「へぇ!それはすごいな。連綿と受け継がれたものか……うん?それを今話したってことは……つまりは、そういうことかい?」

「んー?」


 確信をついたその問い掛けに、ライトはニコニコとした顔のまま、聖剣の刀身をやさしく撫でて、一滴残さず飲み干した魔力を伝わせる。

 先程までの轟々とした灼熱ではなく、暖かな波動。

 一変した魔力の流れに、サジタリウスが驚くのを見届けてから。


「それじゃあ、ここからは……“魔法少女”としてだけじゃなくて、“妖精女王”としても、戦うね」

「───行くよ」


 宣言すると共に───天使の如き光翼を広げて、少女は進撃する。








꧁:✦✧✦:꧂








 妖精女王の権威、権能。

 十三色の輝き───真紅、東雲、山吹、撫子、蒲公英、紫紺、瑠璃、朱色、萌葱、桃花、群青、黄金、そして白金から成る、歴代妖精女王たちの色。

 リリーライトがその力を行使する度に、色彩豊かな力が発露する。


「“(9th)”───権能:【剣舞】」


 萌葱色の輝きを、ライトは手の平に浮かべて……渦巻く戦闘意欲の塊を、天に掲げる。

 すると光球は浮かび上がって、分散。光の長剣を象った無数の刃となって、輪のように広がって拡散……頭上にて展開された光の刃が、下を向く。

 九代目妖精女王。最も好戦的で、悪夢との戦いに励んだ戦乙女の力。


 ライトの号令の元、光の刃は一斉にサジタリウスへ殺到する。


「蜂かな!」

「防げると思わない方がいいよ」

「!」


 空地を踊り狂う光の刃の舞いに、サジタリウスは斬撃をお見舞いするが……ライトの忠告を耳にした瞬間、光の刃が斬撃を貫通したのを視認する。

 正確には、透過。

 咄嗟に回避を選んで後退すると、刃は地面にも刺さらずすり抜けて、方向転換。刃先を上に向けて、岩盤の中から浮かび上がった。

 上下左右様々な方向から、獲物に刺さるまで止まらない剣戟が始まる。


「マジかい!」

「私も行くからね〜」

「ッ、ハハッ!スリリングじゃないか!年甲斐もなくワクワクしてきたよッ!!」


 そして、刃の影響を受けないライトが、極光を迸らせて回避を選ばざるを得ないサジタリウスに肉薄。聖剣による斬撃を掻い潜るか、防御するか……防御を選べば必然的に足を止めざるを得ず、光の刃に蹂躙される。

 直感的に理解できてしまった。

 あの光の刃は、己の身を守る闘気すらも貫き、この身をズタズタにするだろうと。命を削る再生力があっても……追いつかない速度で、刺殺される。

 目視できただけでも二百を超える光の刃。

 推測するに、肉体を透過して心臓に直接攻撃しかねない魔法に、サジタリウスは闘気で蒸発できない程、冷や汗を隠せない。


 だが、それでも。十二将星最古参の名にかけて、狩人は怯まない。


「命燈魔法、第二段階ッ───さァ、滾ろうか!もっと、熱くなろう!!」


 命を燃やす。

 リリーライトが覚醒したのならば、こちらも次の段階に移行するのみ。心臓の脈動が跳ね上がり、闘気が赤々と、更なる灼熱をもってその身を滾らせる。

 自殺行為も甚だしい。一度使ってしまえば最期、二度と元に戻れない……なんて未来が、より足速になって迫って来るだけ。


 それでも、サジタリウスは選んだ。この勇者を、女王を仕留める為に。己が持ち得る全てを費やして、この戦いを制するのだ。


「ッ、あっつ!」

「エルナトには負けるけどね!」

「いや〜、溶岩的な熱さと命を燃やしてる熱さは別物ってゆーか!?」


 更なる発破をかけたサジタリウスに、光の長剣は次々と殺到するが……なんと、彼の身体を包む紅色の闘気を突き刺した途端、ジュワッと焼けるように溶解した。

 透過貫通する光が、次々と無効化されていく。

 その有り得ざる現象には、今度はライトが目を見開いて驚く番だった。


「なんで!?」

「力の使い方がなってないよ。覚醒したてというのよあるだろうけど、ね!」

「んんっ、否定はできないけど…」


 サジタリウスの闘気は、エルナトのとは異なり正真正銘命を燃やした擬似的な炎である。その熱量は、光の長剣に込められた魔力量を上回り、透過の魔法効果も凌駕した。その結果が剣舞の焼尽……サジタリウスに押し負けた証拠である。

 流石は将星と感嘆とした吐息を漏らしながら、ライトは手札を切っていく。


 まだ、女王の力は豊富にある。ぶっつけ本番な試運転の始まりだ。


「どんどん行くよ!」


 “(7th)”───権能:【雨上がりの奇跡】


 瑠璃色の魔力を聖剣に流すと同時に、サジタリウスから放たれた攻撃を切り裂く。白金の魔力に上乗せされた青の輝きが、赫灼と燃える闘気と接触した途端……

 ジュワりと、まるで消火するかのような消滅。

 接触箇所の闘気が消え、剥き出しになった右腕の一本に斬撃が通る。


 七代目女王、虹の妖精の特性は中和。今、サジタリウスから放たれる闘気の性質を極光は打ち消すことができる。スパンッと切り落とされたのは、命剣“ホシヅキ”を握っていた方の右手。命燈魔法による代償ありきの再生能力をも上回る速度で斬ってみせた。

 だが、それも一瞬のこと。

 即座に再生した闘気が損傷箇所を包み込み、失った腕の再生が始まるが……


「おや」


 何故か、傷口が塞がっただけで……斬り落とされた腕が元に戻らない。


「“(11th)”───権能:【湖の乙女】。その力は呪い。今から私の聖剣が斬った対象は、再生不良を引き起こす……確か変形治癒って言うんだっけ?違ったっけ?取り敢えずは、あなたの再生能力が間違った治り方をしちゃうって認識でいいよ」

「それはまた、厄介だね…」

「これで漸く、腕一本。これて別に有利になったわけじゃないとか、バグってるよねぇ」

「お互い様さ」


 瑠璃色の輝きに紛れていた、同系統の魔力……群青色の輝きが齎すのは、傷を誤った形に定める祝福。怪人たちを食い止めんと、死の間際に覚醒した十一代妖精女王による最後の抵抗。結実した呪いが、聖剣に付与された。

 治癒しようにも、不格好な存在にして苦しめてやる。

 そんな恨み辛みが込められた斬撃が、サジタリウスから再生能力を奪う。


 これ以降彼は無闇に傷を負えなくなった。まぁ、呪いは聖剣に付与する以外にはできない為、斬撃を警戒すれば、なんとかなるかもしれないが。

 厄介だなと微笑みながら、サジタリウスは地面に落ちた命剣を空いた手で拾う。

 腕は一本失ったが、その程度。

 残り三本の腕が、そして四つ足がある。頭がある。心は脈動している。ならば、戦いに一切の支障はない。強弓を引くのは難しいが、その程度。

 剣を持ったまま指で器用に矢を番えて、ライトに照準を合わせる。


「さぁ、継続だ」


───天域闘舞<カウス・グレイトスター>


 放たれた魔矢は闘気を纏い、今まで以上の速度を出してライトを狙う。射撃された時点でライトの知覚を上回り、彼女の反応速度よりも速く直進。

 聖剣でカバーするよりも速く、矢はライトに肉薄。


「ッ!!」


 だがそこでも、女王の権能が作動し───危機に瀕したライトの右目から、涙が溢れた。

 涙が頬を伝う最中、ライトの脳裏に映像が浮かぶ。

 亜音速以上の矢を避けきれず、かつての幼馴染のように頭部が爆散される光景……呆気なく終わる光景が、脳裏に思い浮かんだと同時に。

 ライトの身体は、勝手に反応。

 身体を傾け、頭を下げ、矢の軌道上から、そして余波が届く範囲から消える。その間、凡そ0.001秒。ライトでも不可能な速度で、彼女の身体は矢を回避。

 目論見通り矢は通り過ぎ、背後が轟音を奏で崩壊した。

 これは、“(6th)”───権能:【嘆きの涙】。不幸の未来を予知し、回避する。


「づぅ…」

「避けた?今の動きは……ふむ。原理は不明だけど、余り多用できない力みたいだね」

「いやぁ、そりゃそうでしょ……頑張って慣らそ。だから付き合って?」

「無理な相談だね」

「えぇ〜」


 だが、その反動は凄まじく。不幸回避の為にありえない速度で動かされた身体が悲鳴を上げる。即死は免れたが、その後があまりにも隙となる。

 追撃の魔矢も同じ方法で避けて、また身体を痛めつけたライトは、苦笑いを浮かべながらも奮闘。

 身につけたばかりの力の制御、そして適応。

 徐々に身体に慣らし、この戦場で完成する……それが、ライトの目標だ。


「でも、大丈夫。できるよ、私なら───“(1th)”」


 試行錯誤で負けては話にならない。ここで勝ってこそ、幼馴染の隣に立てる人類の希望。悪夢との共存を実現する未来の保証者になれる。

 仕舞いにするにはまだ早い。

 まだ、まだ。サジタリウスには付き合ってもらうと笑いながら……


 真紅に輝く魔力をその手に宿し───【秩序】の力を、行使する。


「ん?!」

「教えてあげる。地球で一番、魔法少女を殺した魔法……その一端を!頑張って、解いてみて?」

「ッ!」


 権能を行使した瞬間、サジタリウスの首に首枷が嵌る。赫灼とした闘気に阻まれても、素っ首を絞める処刑道具は燃え尽きない。

 魔法少女たちにとっては見覚えのある死が、迫る。

 初代女王(クイーンズメアリー)の刃が───サジタリウスの首筋に、勢いよく食い込んだ。


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