Column:悪夢とは何か
連載一周年記念です。
ここまでお読み頂き、誠にありがとうございます!
これからも、よろしくお願いいたします!
残り数十話の予定を組んでおりますが、まぁ、予定は未定ということで。ただ、三月末までには完結させておきたいところ。勝手ながら頑張らせていただきます。
以下、頂いた支援イラストです。
誠にありがとうございます。
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また、今回は設定開示回です。
会話とかはないです。番外編の緩さをご期待していた方、どうかお許しください。
では。
夢を綴る。
夢を唄う。
夢を覗く。
現実を否定し、現実から独り溢れて、何者にでもなれる夢の世界へと逃避する。その行為は誰もが持ち合わせる、あまりにも不平等な手段。
夢を見ることは悪くない。
夢を抱くことも悪くない。
こと、この世界では───【悪夢】に目をつけられる、その可能性が大きいだけで。宇宙規模で夢を見ること自体危険視されているのは、悪夢との接触が恐ろしいから。
触れたら終わり。アンタッチャブルな世界の瑕疵。
存在するだけで世界を蝕む、あまりにも救いようがない厄災であり、世界の毒素。宇宙誕生から生命誕生を経て、生命体が生きる基盤が整ってから生まれた無垢なる悪意。 前身となるモノや、前触れとなるモノはない。最初から、希望の夢の対義、絶望の悪夢として負の感情などから突然世界に産声を上げ、厄災として牙を剥く。
人の数だけ。生き物の数だけ。
悲劇や戦場の数だけ、悪夢という脅威は世界の裏側から湧き出てくる。負のユメエネルギーの集合体、星の意思の具現である夢星が発狂するなどによって生じる悪夢の卵。宇宙において、それは生まれてすぐに星を飛び出し、暗い星の海を揺蕩い、新たな宿り木を探して彷徨う。
一つの星に留まる必要がない故に、複数の星へ。
惑星航行技術の発達もあって、飛躍的に悪夢は宇宙全域へと広がった。
それ故に、この世界において、夢に関連するあれこれは排斥されやすい。悪夢に堕ちた星があっさりと破棄され、見捨てられる運命にあるのも。悪夢に対抗せんとしていた研究所の放棄が、異様に早かったのも。
“夢守り”と呼ばれていた夢羊の一族が淘汰されたのも。
悪夢を恐れるが故に、夢を恐れたから。夢に繋がること自体に忌避感を抱いたが故に。将来の夢といった、願いや希望などは問題ないが……脳を明透にする夢は、古来より恐れられてきた。
そんな宇宙単位の恐怖に、唯一蚊帳の外でいられるのが地球であった。
理由は三つ。
一つは、妖精という地球の固有種が星の裏側で暮らし、夢の世界から星に住まう住人を守っていたから。人間だけではなく、四足歩行の獣から、地を跋扈する昆虫、深海の水棲生物に至るまで。あらゆる生き物が、悪夢に呑まれぬように。妖精の見返りを求めない献身をもって、この星の歴史は現代に至るまで紡がれた。
一つは、悪夢の国の存在。千年前に生まれた夢の底。
地球各地及びその周辺───太陽系に生まれた悪夢を、無秩序に吸収し、成長していった。そのお陰で、地球上の生命体は悪夢を見ることはあっても、悪夢に落ちることは早々無かった。全て、吸われて力にされたから。それ故に地球の悪夢は現実世界に然程干渉せず、悪夢から何らかのアクションをせずとも、勝手に負のユメエネルギーを発生させる人間たちのお陰で、ぬくぬくと成長していった。
そして、三つ目。
千年続く悪夢との抗争で、総数を減らした妖精たちが、庇護対象と見ていた人間に助力を願ったことで生まれた、悪夢を浄化できる戦乙女の存在。
即ち、魔法少女。
たった五年で、千年分濃縮された悪夢を浄化してみせた魔法少女。彼女たちの奮闘、数多くの命を捧げたことで、地球の悪夢は沈静化した。
近年、変革をもって新生したが。
以上三つの要素で、地球は宇宙全体から見ても特異的な惑星となった。千年以上、悪夢と隣合う形で共存していた人間たちは、悪夢に対しての耐性を獲得。魔法少女や妖精たちの浄化があれば、早期治療で元の生活に戻れる。
知らぬ間での悪夢との共存、共生ではあったが。
すぐに悪夢を遠ざける異星人とは違い、無知故に悪夢に慣れた地球人。
【悪夢】の統括個体となった生贄の少女が、あまりにも適性があったのも理由の一つだが。
妖精という免疫細胞、悪夢の国という集積地。
そして、魔法少女という浄化機構をもって地球は宇宙の特異点となった。
弱肉強食の生存闘争を千年以上続ける宇宙人たちより、地球生まれの魔法少女が強いのも、悪夢との共生、そして戦争によってユメの力が底上げされているから。
歴戦の将星を一部上回れるのも、悪夢の恩恵と言える。
悪夢との共生で既に下地が作られ、死闘によって人間の尺度を大きく超えた力を獲得する……夢の覚者、ドリームスタイルはその代表例。“真”シリーズやモード・ヘブンズなども、拡張された進化の果てと言える。
限界を超え、仲間との絆を大事にし、決して諦めない。
それが魔法少女であり、宇宙最強たる暗黒王域に中指を突き立てられる由縁である。中には、正統な後継者として夢を守る女王となったり、悪夢を統制する王となったり、死後輪廻から外れて真の守り手となったりと、魔法少女のバグ個体が複数出現したが。
彼女たちがいる限り、地球の未来は安泰だ。
悪夢といった現象から、宇宙という外敵まで、あらゆる脅威への抑止力として。
国家権力に縛られないで生きる彼女たちは、人類を守るその手を決して離さない。
仲間割れはするが。
……彼女たち魔法少女と悪夢の共謀、とある魔法少女を起点とした変革は、地球上の歴史、及び宇宙全体で見てもありえない事象ではあったが。
悪夢が人の味方となり、人が死ななくなった。
悪夢統制機関アリスメアー。明確に変革を迎え入れた、その変化。連綿と続いていた悪夢の脅威は、一人の死者の奮闘によって終息したわけだが。
悪夢入りした魔法少女が暴走しかけていたのも、今ではいい思い出である。
千差万別、多種多様。
世界各地に散らばり、負のユメエネルギーがある限り、無限に生まれては脅威を振り翳す概念。暗黒銀河だけでも数百を超える個体が確認されており、現在、その数百体は魔法少女ムーンラピスによって取り込まれている。
そんなラピスも調べた上で知ったことだが、【悪夢】は個体によって形態は勿論、性質までもが異なる。
基本となる形は、不定形の球体。
似通った性質や同系統のモノはあれど、同じであるとは言えないぐらいには、異なる属性をそれぞれ有していた。
固形の異形から気体のような不定形、稀に人型といった複数の形態となって、環境や時代に即して、異なる性質を宿して生まれる。
───以下、代表的な七体を抜粋。
No.1
・非活性根源祖体 “ 原初の悪夢 ”
───個体名:???
太陽系第三惑星地球の裏側にて発生した始まりの悪夢。実際は地球規模ではなく、宇宙規模で一番最初に生まれた悪夢である。前例のない本当の意味での始まりの一。地球だけでなく宇宙から見ても原初の悪夢。始まりの個体。
その性質は───【空虚な眠り】。
自我を持たず、意思を持たず。産声を上げてからすぐに数千年の眠りにつき、寝息にも近い身震い、蠢動の余波で夢の世界を脅かしていた、無垢なる悪意。
本格的に目覚めたのは1000年前。
夢の国を脅かし、初代妖精女王を堕とした弩級の災厄。最終的には、生贄として夢の国に捧げられていた、地球の夢星と同化する形で消滅。
姿形は虚空の闇。
No.2
・悪夢統一特異点 “ 夢貌の災神 ”
───個体名:リデル・アリスメアー。
星の代弁者たる夢星でありながら、生贄として夢の国に捧げられた村娘。意味のわからぬ風習で自身を殺した人類全てに復讐心を抱きながらも、初代女王の庇護下で第二の人生を送ることができた、ありふれた女の子。
後に“原初の悪夢”に触れたことで異形となり、統括者と成り果てた地球最大にして宇宙最大の悪夢。
城であり国、国であり女王。
その性質は───【夢源の王権】。
夢に対して絶対的な優位権を持ち、無条件で掌握、支配することができる。凄惨な地球史の裏で溜まりに溜まった負のユメエネルギーを我がモノとし、星どころか宇宙まで絶望の手を伸ばせる厄災。
待てができる。それ故に成長し、大きくなった悪夢。
悪夢の繁栄。そして復讐心から生じた人類滅亡を掲げ、夢の国を滅ぼし現世へと侵攻した。
姿形は巨大な女。
No.3
・暴食性群蝕星体 “ 邪神群蟲 ”
───個体名:ムイア・ドゥアーダァド。
暗黒皇帝に仕える忠臣にして、望まない叛逆で暗黒銀河最大の脅威となった元将星。ある日突然、己の精神領域に巣食った【悪夢】によって狂い果てた、戦蟲の大戦士。
その性質は───【群にして個】。
一個体であるようで、その実は群体。複数の蟲が一つに固まった異形。群れの全てが討伐されない限り、一匹でも取り逃した場合、必ず復活する。
討伐済み。
No.4
・夢幻新生幼体 “ 楽園の夢唄い ”
───個体名:マザーグース。
二百年前の暗黒銀河に生まれた悪夢の卵、幼生。とある将星の心の裡に巣食い、暗黒王域を絶望の底へと陥らせた諸悪の根源。悪夢に狂わせた将星の力として精神に潜み、自我を崩壊させた彼に暴虐の限りを尽くさせた。
その性質は───【干渉】。
新生した今、言霊による干渉能力を獲得。歌声や会話を通して対象を夢の世界、若しくは悪夢の底に堕とすことができる。声を使って魂に干渉して狂わせ、悪夢の存在へと作り替え、自身の眷属にして従えることができる。
また、将星を取り込んだ影響か【群体】の性質を会得。現在は未確認だが、同一個体の増殖による一斉歌唱干渉が可能になると推測される。
姿形は白い幼女。
No.5
・劇場型夢遊現象 “ ???の魔女 ”
───個体名:???
暗黒銀河からは遥か外、地球との距離は数万光年という宇宙の果てに発生した悪夢。その存在だけは、数百年前の暗黒宇宙が派遣した先遣隊によって示唆されている。
その性質は───【究極の舞台装置】。
指定した空間を一つの舞台として、閉幕を定めていない物語を永遠と繰り返させる。終わりを認められなかった、ダレカの淡い思いが具現となった夢物語。
現在稼働停止中。
No.6
・星紀末次元変異体 “ ??? ”
───個体名:???
まだこの世界には生まれていない悪夢。生まれることは確定しているが、その要因は不明。そもそも、その存在が本当に悪夢に適応できるかどうかも不明である。
その性質は───【???】。
[ 現在編集中… ]
No.7
・覚醒魔法少女 “ 蒼月 ”
───個体名:ムーンラピス。
地球に蔓延る悪夢を全て浄化し、そして、地球に一時の平和を齎した夢の守護者。悪夢に染まりながらも、人類を思うが故に悪夢に誘おうとした、夢の革命者。
悪夢統制機関アリスメアーの二代目首領。
その性質は───【無限の成長】。
足を止めることなく、求めるモノの為に足掻き続ける。あらゆる力をその手にせんと、魔法どころか悪夢までもを取り込んでいく、成長する悪夢。
悪夢の大王となった彼女は、現在、新たな夢貌の災神に成らんと暗躍中。
───【悪夢】は常に、あなたの傍に。夢の世界から、現実のすぐ隣にも。時代を経る事に、より複雑な存在へと成り果てながら、その数は増えていく。
この世界に生命体がいる限り、悪夢は無くならない。
永遠に、永劫に。
負のユメエネルギーを抱えた魔法少女が、悪夢の全てを掌中に収めようと。
悪夢は閉じず。
悪夢は覚めず。
悪夢は消えず。
終わらない怨嗟の底で、悪夢に誘われた彼ら彼女たちの様々な笑い声が、世界に響き渡る。狂ったように、正に、壊れたかのように。
いつまでも。
どこまでも。




