323-地球の守り人たち
支援イラストを頂きました!
誠にありがとうございます!
https://x.com/i/status/2012215983415435583
( ˘ω˘ ) スヤァ…
枕さんのお陰。
https://x.com/i/status/2012215228902040043
84-死ねなかった2人の同舟共済より
鬱くしい…
応援ありがとうございました!
それでは本編です。
地球の今!をお伝えします。
では。
男は苛立っていた。
不満で仕方なく、腹の虫が収まらず。何をどうやっても思考が怒り一色になる、そんな悪循環に支配されていた。無性に怒りが湧いてくるが、どうしようもない。
環境が、状況が、理由が……その全てが。
邪魔だからと宇宙に放り出されて、艦隊を連れてそこを目指す彼にとって、屈辱でしかなかった。屈辱という言葉では収まり切らないぐらいの、殺意が湧いてくる。
宥めようとしてくる配下もいるが、ならばと手にかけて怒りを鎮める材料にしてやる。
それでも、虫の居所は収まらないが。
理性をもって暴れたい衝動を抑え、彼は宇宙の果てへとやってきた。
星空の中に浮かぶ、小さな青い星───地球へと。
「チッ!こんな辺鄙な星に……魔法少女のいねぇ星なんざ秒で終わるだろうが!ふざけやがって!アイツら、絶対にいつか殺す。殺してやるからなッ!」
「だ、団長!ちょっとは落ち着いてっ!」
「だァってろ!!」
「ひぃっ!」
宇宙戦争も知らぬ、平和ボケした惑星。見ているだけで苛立ちが湧いてきて……殺意が、際限なく湧き上がって、止まらない。
配下の静止も無視して、彼は艦体から身を乗り出す。
清々しい程に澄んだ青色で───憎々しさが湧いてくる怨敵の星。
「全部、ぶっ壊そう───そんで、オレ様が最強だァ!」
力強く吼えて、宇宙へとその身を踊らせて───自慢の魔法であり、己の強さの証明であり、象徴である、圧倒的強者の力をもって、蹂躙する為に。
紅き魔法の輝きが、宙を彩る。
───龍魔法<カーマイン・ドラゴンフィケーション>
『ガアアァァァァァァ───ッ!!』
その身を、紅き龍鱗に覆われた巨龍へと作り替えて……逆立った全身は刺々しく、全身が凶器と言っても過言では無い危うさを秘めた、宇宙龍の末裔。
宇宙の荒くれ者が集まる、第七師団の師団長。
悪名高き赤龍───“龍災”のダラコイル・ラスタバンが地球に襲来する。
彼は、己の勝利を疑わない。
魔法少女のいない戦場に、自分に敵うモノはいないと。本気で思っている。
地球を守る防衛機構など、怪物は歯牙にもかけず───音の壁を踏み躙る。
『ふんっ!』
星全体を覆っていた魔法陣。<ナイトメア・マーチ>の総攻撃にビクともせず。大気圏をあっさり通過し、青空を占有する術式の上に、無遠慮にも着地する。
弱々しい歌など聞く価値もなく。
ちょうど、日本の首都上空に降り立ったダラコイルは、空を手狭にする魔法術式を破壊せんと、その口腔に溜めた紅色の魔力を放たんと。
そう先制攻撃を食らわそうとしていると───脳裏に、蘇る。
───意味あるので?
───いや、無理があるでしょう…
───強さ自慢いらねーから
───諦めることも、時にはいいことだよ
───よく吠えるのぉ〜
───頑張るこった
───あはっ☆なになに?暴れたいの?仕方ないなぁ〜。それじゃ、地球行ってきなよ!あなたの戦場は、ここにはないからさ!
行ってら〜♪
『チィッ!』
自分をコケにしたヤツがウザい。自分を下に見るヤツがウザい。自分に哀れみの目を向けるヤツがウザい。自分をぞんざいに扱うヤツがウザい。
ウザいウザいウザいウザいウザいウザい───っ!!
特に、己よりも遥かに弱いのに、将星という上の地位にいるあの女。脳裏に媚び着いた声は、ダラコイルの脳から消えてくれず。永遠とリフレインして、収まらない憤怒を増幅させる。
怒りを力に、憎悪を糧に。憤怒の炎に、焚べるのだ。
『貫いてやるよ、ゴミィッ!!
───龍魔法ッ!最大出力ッ!!<カーマイン・ドラゴンノヴァ>ッ!!』
極限まで高められた真紅の熱線が、地球を貫通せんと、口腔から放たれる。
歌の魔法陣の、その上から。
眼下の有象無象が恐慌状態に陥っている様など、嘲笑の肴でしかなく。
真紅の劫火が地上を焼き払い、星を貫き、生命体全てを焼却する。
その筈だった。
───一陣の黒い風が、ダラコイルの熱線を切り裂いた。
『あ?』
魔法陣は破壊できた。
一角だけだとしても、地表に降り立つ準備はできた……できたのは、それだけで。霧散する真紅が、熱量が、頬の龍鱗を撫でて、己の魔法が打破されたことを知り。
困惑はすぐに収まる。即座に冷静に敵の正体を、地球を守る敵を探さんと目を走らせ……己の相手ができるだけの戦力が、この地にいることを喜んだ、が。
気付かぬ内に嵌められた、首枷の刃が───落ちる。
ザシュッ───…
『───?』
視界が滑り落ちる。
訳もわからず。何もわからず。痛みもなく、脳は困惑に支配される。もしかすれば、わからない結末で終わることこそが、彼にとっての救いとなったのかもしれない。
とある将星の策略で、彼はこの地に送られた。
それが、邪魔者を消す為の厄介払いであったことには、気付かぬまま。
首のない龍は、己の最期も理解できぬまま、意識を闇に落とした。
その数分後、遅れて襲来した第七師団は、首切り役人の処刑劇場に居合わせ、その過半数を失い。
主要都市からの対空砲撃を受け、更に撃墜。
僅かに地上に降り立てた者も、ユメ色の煙に触れたのを最後に、消息を絶ち。
「いえーい」
「ハッハッハッ!見てるかブルームーン!やったぞ私は!守って見せたぞ、この星を!」
「あんた何もやってらんやろがい」
「killl…」
対暗黒銀河航空防衛戦線は、地球襲来の第一陣を軽々と退けた。
꧁:✦✧✦:꧂
同時刻───第七師団が、奮闘虚しくボコボコにされ、塵となったその裏で。
ある一つの策謀が、ゆっくりと進行していた。
それは、将星リブラの思い付きによる、魔法少女に泥をつける為の計画。裏切り者の魔法を解析して、その空間に干渉できるように改造した技術を使い、送り込む。
ダラコイルは捨て駒だ。敵の目を集めるデコイだ。
地球を守る戦力が、宙に釘付けになるように……以後、数回に渡って「暗黒銀河運営にいらない集団」を差し向け陽動させる。
第一陣は、不要産廃物である“第七師団”。
第二陣は、この世の全ては皇帝の為にあるべきと熱心に崇拝する狂信者集団であり、度重なる問題行為や非人道的理論に基づく殺戮を繰り返していた為、地球という処分場送りにされた新興宗教“ニュー・ステラ教団”。
第三陣は、星に寄生する“森の民”。
第四陣は、かつて皇帝に叛逆した上、大監獄で封印刑にかけられていた“アルカベート大革命”。
第五陣は、故シグニュスの“デネブ攻撃航空連隊”。
第六陣は───…
第七陣は───…
と、大陸惑星での戦いにおいても、様々な理由で戦場にいらない部隊を強制派遣。逆らおうにも逆らえない、魔術による刻印を身体に刻まれた異星人たちは、続々と地球に襲いかかるしかない。
そこで待っているのが、死であるとしても。
廃棄物の横流し場にされた地球からすれば、そんな非道堪ったものじゃないが。
地球を襲う未曾有の異星侵略。軽々と侵略者を処刑する魔法少女狩りと、悪夢に落としていく夢喰い。防衛戦線を指揮する棺や、賛同した各国防衛部の奮闘……
その裏で。
地球侵攻の本命が、ゆっくりと───世界の裏側から、歩いてくる。
「Hmm……矢張り美しいね…」
ありもしない足場を踏んで、金髪碧眼の青年は進む。
視界いっぱいの極彩色の景色を堪能して、詩を唄いたい気持ちになりながらも、与えられた職務を全うせんと、道無き道を歩んでいく。
その道を阻むモノはいない。
ただ、彼の背後に───“ゲメル・マーラー星律芸術団”団長であり、十二将星の一座を担う芸術家の悠長な歩幅に合わせて、追従する怪物たちがいるだけ。
歌を奏で、踊りを舞い、けたたましく笑い合う。
狂った造形美の異形、“画領転醒”ラカイユの使徒たちが行進する。
「ワーキャー!!」
「ウキャラ、キャラキャラ♪」
「Boo!」
「カシャクキラキラ」
「ドゥーディ♪ドゥーディ♪マジョガリティ〜…」
「ア、アア、ァ、アアァアァァア?」
「オッ」
ズンチャッチャァ♪
ズンチャッチャァ♪
神輿を担ぎ、宙に運ぶ。聖処女を燃やし、その灰で色のないスープを作る。銅鑼を鳴らし、戦火を伝える。口笛が世界を揺らし、振動で星が落ちていく。
狂った音色の音楽は、常人の脳を溶かして食らい。
生まれ、作り、自壊し、芽生え、焼け落ち、泣き叫び、歓喜し、狂い、笑い、唄い、舞い踊る。
その全てがラカイユの精神状態を顕にしているとは……誰も思わない。
「全く……天秤の乙女も思い切ったことをする。まさか、夢見の乙女の固有魔法を我がモノとするとは。宇宙全土に名を轟かせる魔術師だけはあるね。素晴らしいよ……」
「テテ様!テテ様!モウスグ!ツク!ツクヨ!」
「おや、それは重畳。ありがとう。時間も惜しいことだ。すぐに向かおう」
「アイ!」
画用紙に描かれた絵のようなビスクドールが、トテトテかわいく足音を立てる。クレヨンで描かれた絵をそのまま現実世界に出力したような、現実味のない存在。
背後に群れる異形たちも、何処かファンシーで、何処か狂気的な……前衛的な形をしていた。
転がる頭。首の長いメイド。影色の小人。足の長い羊。とぐろを巻く狸。群れる手。歩く電子レンジ。夢空を泳ぐイルカ。等速直線運動する聖女像。目だけの巨人。恒星に似た浮遊物体。扇風機。肩紐で歩くランドセル。笑い狂う肖像画。飛び跳ねるバネの胴体。旋回するダイオウイカ。骨がないのかぐにゃぐにゃの人型生命体。絵の具。金貨の濁流。自我を持った画材。燃える頭蓋。這い蹲る老紳士。ぐねぐね動く本棚。燃え盛る貴婦人。カエルの王様。目を瞑るコーヒー。針が高速回転する時計人間、など。
紙に描かれた絵が実体化したような、不思議な色彩の、悪夢に出てきそうな絵描きの異形たちが……我が物顔で、闊歩する。
アリエスの魔法で侵入した───“夢の世界”を。
暗黒銀河から、地球まで。夢と夢を繋ぎ、強引に世界の通り道として……片道切符の侵略戦争を、ラカイユは今、仕掛けに行く。
笑顔を絶やさず、ハープを弾いて、心地よく。
“夢繋ぎの魔法”によって夢を突き進む彼は、夢の中から地球を侵略する。
異形を、夢を通して人の精神に移り住ませ……突発的に発狂させる。
始まるのは、殺戮と悲劇。快楽と享楽に満ちた地獄。
【悪夢】とはまた別の狂気によって───地球人たちの集団自殺を引き起こす。
それこそが、ラカイユの使命。
リブラ・アストライヤーからの指令を曲解し、悲劇的な結末をその目に焼き付けたいが為に、地球の生命を一つも残さず、根こそぎ狂気に浸す為に……
それが、仮にも同僚となった鏡を裏切るとしても。
皇帝の意に反する、粛清されて当然の思想だとしても。狂った芸術家は止まらない。
止められない。
宇宙から来る侵略者たちの対処に忙しいアリスメアーは気付かない。気付くだけの余裕がない。確かに、夢の世界は彼らのテリトリーだが……
アリエスという手札がこちらにあるからと。
夢からの干渉の可能性を、根本から考えていなかった。それがいけなかった。
「ふふっ、天秤の乙女の方が一枚上手だったようだね……おや?」
嫌味のない微笑みをもって歩く、ラカイユ。そんな彼の淀みない歩みは、唐突に止まる。
煌めく青───彼の頬を、氷の刃が切り裂いたから。
侵攻は止まる。
歩みが止まる。
夢の世界を侵攻する絵画の軍勢は、色のついた影に道を阻まれる。
「君たちは…」
ラカイユは驚きで目を見開く。
事前情報では知っていた、その影。地球の芸術作品を、建造物から標本まで、全てを回収せんと……保護しようと行動する、芸術団としての本懐を果たす為に調査していたその過程で、彼は知った。改めて、思い知った。
地球という星特有の、奇跡の物語を。
そんな彼が驚愕に思考を染めたのは、ありえないから。狂気にある思考でも、ラカイユの見る景色は、いつだって正常だ。異常が映ることはあるが、まぁ、幻覚はそこまで重要ではない。
問題なのは。
「不届き者に生きる価値無し───我が正義の名の元に、その首、即刻置いていきなさい」
進路に立ち塞がる、五つの影の一つが、ハサミのような刀剣をもって。
一切の躊躇なく、侵略者の首を斬りに駆け出した。
「WOW!」
青い軌跡が空間を薙ぎ、斬撃が過ぎ去った箇所が一瞬で凍結する。空間を走る氷の橋に沿うように、正義の刃が、ラカイユの首を狙う。
正面からの強襲に対して、ラカイユは冷静に対処。
ポーチからパレットと筆を取り出して、絵の具の飛沫を振りかける。
氷の斬撃に、赤い絵の具が付着すると……氷が、不快な音を立てて蒸発する。
「“情熱の赤”。どれだけ冷たかろうと、溶けてしまうほど熱くなる……どうだい?」
「興味がありませんね」
三つ編みの白銀のルーズサイドテールを翻して、眼鏡を指で押し上げる正義の執行者は、どうでも良さそうに魔の絵の具を睨みつける。
不快そうな舌打ちと共に、再度斬りかかり。
ラカイユの肩をザックリ切り裂いた氷の剣士は、反撃の薙ぎ払いを飛んで避ける。
後退すると同時に───他の影たちが、主を攻撃されたことで動き出した異形たちに向けて、総攻撃を仕掛けた。
斬撃が飛び。
雷鳴が轟き。
操糸が貫き。
そして、彼らの存在と似通った、色の魔法が彩って……ぐちゃぐちゃに蹂躙する。
異形たちの悲鳴が響き、血肉の代わりに絵の具が辺りに飛び散る。
「容赦がないね…!」
喜悦を滲ませた笑みをもって、ラカイユが見詰める……その相手とは。
「カァー、斬り甲斐のない敵でござるなぁ〜。ちとばかしヤル気が削がれた。こやつの相手するの、楽しくなさそうだから帰っても良いでござるか?」
「ダメに決まってんだろ」
一人は、藍色の着物をコスチュームに、肩や手甲などに甲冑をつけた、現代の侍。鴉の塗れ羽色のような黒髪を、鈴のついた糸で軽く結んだ魔法少女。
宙の上にまで異名を轟かせる、辻斬りたる技の開祖。
───“斬魔”のモロハ
「ったく、くだらねェ……どうせ、弟子だか何だかの様子見に行きてェだけだろ。んなどうでもいいことより、このアホ面挽肉にするぞ。腹減った」
「可哀想な拙者の弟子…」
「うーん、確かに。先輩の弟子になっちゃうの、ちょっとミスだよね」
「おろ?」
呆れた物言いで首を鳴らすのは、鬼の角を生やした雷の狂戦士。背に浮かぶ雷太鼓と、ビキニチックな鎧が目立つ短気な魔法少女は、青い髪をガシガシと掻く。
青雷を司るその鬼は、如何なる逆境でも諦めない。
───“雷精”のオルドドンナ
「………」
和気藹々とした会話の後ろで、寡黙に無言を貫くのは、パッチワークが目立つ赤色のゴシックロリータに身を包む幼女。真っ白なドリルを持つ頭頂部には、小悪魔ちっくなカチューシャを載せている人形師。
人形のような幼子は、決してその口を開かない。
───“傀儡”のマペットプリマーレ
「先にお主らから斬ろうか?」
「あん?オレの雷で焼いてやろうか?ウェルダンによォ」
「あ、あー、アハハ。お、お二人とも落ち着いて!ほら、折角の機会なんですから!ちゃんと協力して、金髪さんを倒しましょ!ね!?」
「オレらに共闘なんざ無理だろ」
「生前できなかったことが死後できるようになるなど……夢もまた夢でござるよ」
「んぅ〜!!」
協調性の欠片もない先達に頬を膨らませるのは、茶色のショートボブの上にベレー帽を被り、絵の具のついた白いエプロンが特徴的な、うら若き芸術家。
虹を描き、塗り替える、あの世でも人気な表現者。
───“色彩”のイリスミリエ
そんな四人の亡霊を率いるのは───氷のように冷たい刃物のような正義厨。
「君たちは……そういうことかい?」
「……えぇ、アリスメアーに加担するなど、ぶち殺したい気持ちになりますが……死んだ私が文句を言える立場にはいません。あの馬鹿後輩が、覚悟の上で、そう決めたのであれば。仕方なくでも、受け入れるのが……先達としての義務、とでも言いましょう」
「本音。本音漏れてるぜパイセン」
「あんなの悪性腫瘍以外の何者でもないでしょうやっぱり正義執行しましょう」
「怖っ…」
悪夢を嫌い、悪夢を恨み、そして、大勢の為にと冷たい正義を振り翳す。
彼女こそが、魔法少女一の規律に厳しい悪の裁断者。
───“正義”のキルシュナイダー
以上五名───あの世と夢の境界線より、地球を守る、ただそれだけの為に。閻魔大王を脅し、痛めつけ、悪夢に頼りっきりな現状をぶち壊さんと、降臨した。
モロハが異星人と出会ったのを機に、その存在を知り。
宇宙の脅威の存在を知ってからは、あの世にいる身でもどうにかできないか、いつになっても平和が来ない故郷の惨状に苛立ちを覚えながら、死の運命を逆行し。
魂のまま、地球の夢の番人となれた。
強引な荒業で来た上、最悪、あの世に戻る前に四散する可能性もあるが……
そんな末路を承知の上で、一段と覚悟の強い彼女たちは舞い戻ってきた。
「あなた達の脅威が不在だから、容易だと思いましたか?そう思ったのであれば……その思考は不適切であり、甘く幼稚な考えとしか言いようがありません」
「そちらに多少加担している身としては、拙者から何かを強く言うことはないでござる」
「んまぁ、夢は夢だ。夢のまま、終わっちまおうぜ?」
「……」
「マペ先輩も言ってるよ!悪い奴らは、みーんなボコって完全勝利って!」
「その通り」
地球を守る最後の防壁。
ムーンラピスも知らない、希望の防波堤───それが、彼女たちの戦い。
5人の魔法少女を前に、ラカイユは笑みを深める以外の感情表現ができない。つまらない仕事だと、作業で終わるモノかと思っていたところに……
こんなサプライズが待っていたのだ。
魔法少女という美しい魂を、芸術の一つとして保管し、鑑賞したい。
「C'est incroyable!!!!!!」
そんな欲望が、仕事を果たすという使命感を上回り……彼は今一度、己の配下である“使徒”たちを、背後の夢から溢れ出させる。
「アソボ!」
「アソボ!」
「アアァァソソボ?」
「ガッ、ギャッ、ギャラギャ」
「チチチチチチ…」
「ミョーン」
何度でも。
何度でも。
ラカイユの魔法によって生まれる狂気の具現。絵描きの使徒は、魔法少女に笑顔を向ける。
遊ぼうと。殺そうと。潰そうと。笑おうと。
欲望のままに───ラカイユの行進に合わせ、大行列は動き出す。
「あぁ!こんなに胸が踊る戦いになるなんて!この私でも想像だにしなかった奇跡だ!やはり、君たちは美しいね!飾りたい程に───歓迎しよう!さぁ、行くよ!!」
「私はラカイユ・パレット!しがない絵描き狂いさ!!」
狂気を帯びた瞳が、魔法少女たちに熱視線を送って。
足元から溢れ出す絵の具を広げて、夢の世界に己だけの領域を広げて、染めて、奪って……魔法少女を目指して、進軍する。
そんな領土侵犯を、魔法少女たちが許す筈もなく。
「斬魔一刀流…」
「雷魔法ッ、<ヴォーフドンナー>ァ!!」
「……糸魔法」
「行きます!色魔法!」
「氷魔法───さぁ、正義執行です。地球を仇なす悪を、私たちは赦さない」
裏から地球を守る夢の戦いが、人知れず幕を上げ───魔法が吹き荒んだ。




