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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
月下星王大戦

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342/378

314-星の終わりは暖光と共に

最初の勝ち星


 夢星同盟と十二将星の戦い。その戦況は目まぐるしく、激しさは増すばかり。極黒恒星を舞台にした最終決戦……その戦いにおける、惑星規模の激戦区。

 星が降り、星が踊り、星が滅ぶ、最果ての異空間。

 「星の回廊」にて───双子の将星と新星の魔法少女の戦いが佳境を迎えていた。


 大技を出し合い、死力を尽くして、譲れない未来の為に星天を揺るがす。


「さっさと墜ちなさいッ!!」

「負けろよ、魔法少女ッ!!」


───崩星魔法<ディスインテグレーション>

───奏星魔法<メテオリック・ブラスター>


 “双星銀河”。その異名に偽りなく、双子を中心に小さな星空が動かされる。宇宙を小さく象った「星の回廊」は、厳密には違うのだが、“異なる位相にある銀河”といっても過言では無い。暗黒銀河という一銀河に留まらず、宇宙の全てと繋がる異空間な為、銀河と称するには大きすぎるのかもしれないが。

 カストル、ポルクスにとっては庭のような場所。

 畏怖する必要も、敬意を払う必要もない。ただ、宇宙に生きるちっぽけな住人として、生まれ持った権能を自由に振り翳すのみ。


 流星雨が降り注ぎ、星が生まれては滅んでいく戦場……規模だけでいえば、この最終決戦において最も広い超々々広範囲を舞台に彼らは戦っている。

 銀河スケールの、魔法がなければ成立しない戦い。

 それに対して、最後の世代となった3人の魔法少女が、可能性に満ちたユメの力をもって、双子の将星を倒さんと宙を舞う。


「やなこった!」

「負けてください、でしょ!!」

「諦めなさいッ!!」


───夢想魔法<ミラクルハート・カノン>

───星魔法<ブルー・シューティングスター>

───花魔法<ブロッサム・ピクスカノン>


 夢想の光が、星の輝きが、花の祈りが、乱舞する星々を吹き飛ばし、突き飛ばし、正常な位置に戻して、襲い来る全てを対処する。

 エーテ、コメット、デイズの奮戦。

 そこに魔力供給するぽふるんと、配信魔法による人々の応援が3人を強化する。


:がんばれ!

:なんだこの光景…

:規模ヤバくね?

:世 界 の 終 わ り

:これに対抗出来る三人つっよっっっ

:成長したね…

:がんばえー!!

:がんばれっ!


 事前説明などない唐突に始まった最終決戦に、視聴者は総じて置いてけぼりで、応援するよりも困惑のコメントの方が多いが……それすらも魔法少女たちを支援する力へ、際限ない応援となる。

 魔法出力を上げ、魔力を高まらせ、ユメの輝きを灯す。

 カストルたちは勿論、エーテたちには次の戦場が待っている。そこに辿り着くには、目の前の敵を倒さなければ。突破して、駆け抜けて、勝ちを手にしなければならない。

 その為に必要な余力は……実の所、あまりない。

 全力を出さなければいけない程、対峙する双子は強く、油断できない強者だったから。回復の方法は幾らでもあることを理由に、3人は止まることなく突き進む。この戦場を乗り越えれば、自分たちは更に成長できると期待して。

 物理で、魔法で、積極的に。

 絶えず降り注ぐ流星群、双子の猛攻。その全てを全力で迎え撃つ。


「勝って、進む!!」

「こんな痛み、へっちゃらだい!!」

「全力踏破ッ!!」


 声を張り上げ、魔力を練り上げ。後先考えない思考で、勝利を目指す。


 そんな彼女たちの熱意を、双子は一身に浴びてしまう。

「くっそ…!」

「なんでっ…」


 カストルは理解を拒む。

 ポルクスは疑問に思う。

 魔法少女たちの諦めない、不屈の心を。どれだけ身体を傷つけられようと、立ち止まらない不倒の意志を。決して恨みをぶつけることはなく、真摯に、誠実に、しっかりと対等な敵として相対してくる、その姿。

 わからない。わかりたくない───そこまでして双子に勝とうとすることが。

 攻撃規模に関しては双子の方が遥かに上だ。

 魔力量も惑星操作が可能な2人に軍杯が上がる。だが、目の前の魔法少女たちはそれを凌駕する。悪夢との戦いで培った実力で、運で、努力の結晶で、立ち止まりもせずに殴りかかってくる。


 カストルには負けられない理由がある。

 ポルクスには勝ちを譲れぬ理由がある。

 全ては陛下の為に。全てはたった一つの、汚れ一つない忠誠心へと収束する……悪く言えば、それ以外の“理由”が双子にはない。


 自分たちの存在意義。“星喰い”に全てを捧げる双子。


 そんな彼らと違って、エーテたち魔法少女は目上の人や尊敬する人に全てを捧げるような感性は持たない。ただ、自分たちの為にここにいる。戦っている。

 双子との違いは、自分が主体か、皇帝が主体か。

 たったそれだけの違いだが……自分の勝利を疑わない、全力で戦っていようとも。魔法少女の心の強さは、双子を上回る。


「なんなんだよお前らは!!」


───崩星魔法<コラプス・スターライト>


 滅び行く星から掠め取ったエネルギーを両拳に宿して、魔法少女たちに打ち出す。更に吶喊して、魔法少女たちにその拳をぶつけに行く。

 星弾と星拳の連撃。終わらない攻撃の連打。

 だが、魔法少女には届かない。デイズの盾が星弾を全て防ぎ切り、エーテとコメットがカストルの連撃を杖と槍で容易く凌ぐ。


「魔法少女よっ!!」


 ポルクスの止まない流星群も、星を司るコメットを逆に強化する一因となってしまう始末。


 どちらも疲労は溜まっている。魔力も心許ない。限界はすぐそこにある。

 それでも、どちらも止まらない。

 止まれないから。将星としての維持で、蒼月への復讐を誓った、あの日の為に。そして、皇帝に勝利を捧げる為に双子は命を賭ける。

 魔法少女の3人は───最早、語るまでもないだろう。


 地球の為。

 未来の為。

 仲間の為。


 諦めを知らない子供たちは、ユメの力で、意志の力で、希望を掴み取る。


 その強さを、ジェミニスター兄妹は見せつけられる。


「何故、そこまで!」

「そりゃぁ、ね!それが、魔法少女だから───答えは、それで充分でしょッ!!」

「ッ!」


 傷だらけの笑みで、エーテは勝気に吠える。その笑顔にポルクスは怯む。


「ッ……あなた方にとって、ムーンラピスは、死んででも勝利を捧げるべき存在なのですか!?」

「はァ!?何言ってんのよ!!そんなわけないでしょ!」

「おたくの王様と一緒にしないでよ!あなたたちはそうであったとしても……私たちは、違うの!たった一人の為に戦うとか、そんな簡単な話じゃない!!」

「魔法少女はね、みんなからの期待が重い生き物なの!」

「その期待に応えたい!褒めてもらいたい!私たちが……勝つところを見て欲しい!!そーゆー自己満足の為にも、私たちは戦ってる!!」

「やっぱ、自分の為に戦わないと!楽しくないじゃない。違うかしら!?」

「ッ…」


 綺麗事を並べたって、やっぱり自分が一番で。世界を、地球を、未来を救うのは……その延長戦に過ぎない。

 欲深い。それでいて、誰かの為に頑張れる子供たち。


 リリーエーテは諦めない。

 ブルーコメットは負けない。

 ハニーデイズは挫けない。


 魔法少女だから。今を生きる魔法少女の、最後の世代。その重みを背負ったまま、彼女たちは軽々と宙に飛び立ち星に喧嘩を売っている。

 そうあれと願われたから。

 そうすると決めたから。

 一年にも満たない戦いの歴史。それでも、エーテたちは立ち止まることを許されなかった。一度でも足を止めれば世界が終わる。悪夢で手早く片付けようとする月の英雄を止めんと抗った。背中を追い立てる光の英雄に師事して、普通ではない魔法少女となった。

 一人一人でも力はある。決して弱くない。

 だが、欠点はある。その瑕をお互いに埋め合い、妖精がやさしく包む。


 三人と一匹で一つの、最強の魔法少女───その一端を見せつけるのだ。


「陛下の為陛下の為って、そーゆーのも良いけどさぁ!!ちょっとぐらいは、自分の為に戦ってみるのもいーんじゃないかな!?」

「ッ、それは…」


 エーテからの提案を、残念ながら双子は飲み込むことができない。何故なら、双子たちは皇帝の為に生きている。皇帝の為にある、その在り方を崩すことはできない。

 それは、存在の否定だから。

 夢星であり、星の子であり、星の意思そのものであり。

 暗黒銀河を回遊する双子星は……己が定めた生き方から逃れることはできない。許されない。そういうものだと、決まっている。


 だからこそ、否定しなければならない───魔法少女の強さを、正面から。


 星の力で打ち砕く。


「……どーでもいいよ、そんなこと……お前らはお前ら、僕らは僕ら。それでいいだろ。なぁ、ポルクス」

「……そうですね。それが私たちですから。お兄様」


 変わる必要はない。

 変える必要もない。

 変えずとも───ジェミニスター兄妹に、“敗北”という未来はない。


 そう豪語する双子に、エーテたちは苦笑いを浮かべて、 得物を握り締める手の力を強くする。

 ならば、勝とう。

 その自信を打ち砕く。彼らの在り方を受け入れた上で、真っ向から立ち向かおう。そして捩じ伏せ、こちらの方が上だと理解させる。


「ふーん?あっそ。それでいいんなら、これ以上言うのは野暮ってものよね…」

「勝てると思ってるのはムカつくけど!」

「難しいね、色々と。んまぁ、らしいっちゃらしいけど。そんなもんだよねぇ……それじゃ、ぽふるん。魔力供給はよろしくね!」

「わかったぽふ!」


:おっ、出番か?

:応援パワー送るなり〜

:がんばれっ!

:行けー!


 既に一通りぶつかりあった。攻撃も、魔法も、意見も。その全てにおいて、平行線。決着のつかない戦いに、もうそろそろ終止符を打つべきだ。

 お互いに示し合わせることもなく。

 感覚で、直感で、そうするべきだと理解し合って───爆発的に魔力を高まらせる。


「ここで、決める!」

「ここで終わらせる」

 

 魔力供給が多いのは、地球人のバックアップを無制限に受けられる魔法少女たち。

 だが、双子たちは星からエネルギーを奪える。

 それこそ、自分で創った星であろうと……魔法製の星であろうと、星は星。文明が無くとも、生まれたてであろうとも、エネルギーは持っている。

 減るのは魔力……その代わりに、星のユメエネルギーを徴収できる。


 二人は手を繋いで、魔力回路を接続させ、巡らせる。


「行くぞ、ポルクス」

「はい!往きましょう、お兄様」

「「───我ら、彗星の双子星。夢を唄い、宙を航海し、王を支える星の子なり!暗黒銀河の宙を彩り、この世界に王の栄光を広める者なりッ!!」」

「陛下の敵を、銀河の果てへ!」

「救いなき暗黒の縁まで、二度と戻って来れないぐらい。吹っ飛ばす者!!」


───崩星魔法


───奏星魔法


 “接続(コネクト)


 相対する魔法少女が、三人と一匹で最強ならば。彼らは二人で最強。敬愛する皇帝と同じく、宇宙に干渉する宙の支配者である。

 今、出し惜しみをする余裕はない。

 ここで全力を出さずして、いつ出すのか。この地球人を葬らなければ、怨敵の元に辿り着くこともできない。例えそれが、皇帝すらも期待していないとしても。

 あの悪夢の塊を生かすことだけは、許せない。

 許せないからこそ……立ち塞がる障害の全てを、双子が押し潰す。


 星が生まれて、星が死んで、また生まれて、死んで。


「崩星魔法ッ!」

「奏星魔法ッ!」


 双子を中心に空間が歪む。星空が、円を描くように黒く渦巻いていく。双子の背の中心部には、虚空の穴が開き、ただならぬオーラが「星の回廊」を支配する。

 それは、宙の穴。だが、双子が使うのはその周り。

 虚空の穴は軸。崩壊を奏でる双子星が齎す、ただ一つの宙の果て。


 星々を纏め上げたその技は───正しく、“銀河収束”の大極致。


「「───双星銀河砲ッ!!<ディオスクロイ・ゲミンガギャラクシー>ッ!!」」


 一つの銀河と形容してもいいような、大量の星々を贄に創り上げた大魔法。渦巻く宙を一つに束ね、その大質量をそのまま相手に突き付ける。

 銀河砲というよりかは、銀河杭だが。

 ニフラクトゥでも即座に満腹になる星々のエネルギー、銀河一つ分の力が、杖を重ね合わせた魔法少女たちの元へ襲いかかる。


「すっごいね」

「よくわかんないけどヤバそ…」

「それだけ本気ってことよ。私たちも、全力で行って……勝ち取るわよ、勝利!」

「うんっ!」


 どれだけ強かろうと。

 どれだけ恐ろしくても。

 どれだけ危なくとも。

 多くの危機に直面して、乗り越えてきた魔法少女が……諦めることはない。


 それどころか、より士気を上げて───ユメの希望を、銀河に示す。


 いつものように、力を合わせて。


「“光り輝く、希望の星よ”!」

「“あまねく奇跡に、花束を添えて”!」

「“目一杯の、祝福を”!」


「「「───奇跡重奏<マギアブレーヴ・ハイドリーミーフィナーレ>ッ!!」」」


 かつて、悪夢を晴らした夢の光を。蒼月を食い止めた、希望の光をもって。


 銀河を打ち消す必要はない。ただ、貫いてやればいい。そんな考えの元編まれた夢光は、重ねられた3人の杖から星の洞へと真っ直ぐ放たれる。

 魔法少女たちの想いは、ただ一つ。

 双子の将星の信念は受け入れた。受け入れたからこそ、ここを通るのは私たちなのだと貫き通す。そして、蒼色の先輩以外にも、強い魔法少女がいることを。

 思い知らせるのだ。


「ハァァァァァァァァァ───ッ!!」

「オォォォォォォォォォ───ッ!!」


 星光と夢光、二つの大魔法が衝突して、拮抗する。


 お互いの出力は、トントン。星々のエネルギーを束ねた銀河砲と、人々の応援を具現化して集めた浄化の魔力砲。二つの光の塊を、咆哮を上げてぶつけ合う。

 一歩も譲らない。勝利をあげるなんて以ての外。

 声を張り上げ、全力で、総力をもって───宙の異界を震撼させる。


「うっ、ああっ!ッ、ハァァァァ───ッ!!」


:がんばれ

:がんばって!

:いける!

:いけ!


 二つの力の拮抗は数分に渡り、出力を弱めることなく、将星と魔法少女は粘って。

 力を振り絞って、諦めることなく、声を張り上げ。

 そうして、軍杯が上がったのは───人々から送られた無償の想いを背負う、魔法少女たちの方で。人々の想いは魔力に還元され、夢光の出力を爆発的に跳ね上げさせる。

 元々、大きさでは銀河砲に劣っていたが。

 押し留めることはできていた夢光が、星のエネルギーが収束するド真ん中を、貫く!!


「うぶぶぶ!あ、あともうちょい!!」

「ふんばるわよッッ!全ッ、力、でぇッ!!」

「いっっけぇぇぇぇぇぇ!!」

「がんばってぽふぅ!!」


 空中に作った足場の上で、声を張り上げながら踏ん張る魔法少女たち。銀河砲に押されて、徐々に後退するが……そんなことを気にする余裕もない。

 だが、銀河砲は貫通できた。

 星光を駆け抜ける夢光は、星光の中で潰されることも、霧散することもなく……ただただまっすぐ、愚直に標的を目指して突き進む。


「ッ、ナメる、なァ!!」

「こんな、ものぉっ!!」


 無論、そこで諦めるカストルとポルクスではないが……相手は魔法少女。それも、数多くの押し合い勝負で、幾度となく勝利を掴んできた魔法少女たちである。

 押し留めようにも、夢光は速く、鋭く、力強く。

 星の光を掻き分けて───“双星銀河”を殺すことなく、ユメの輝きが突き抜けた。


 収束する銀河を撃ち破り、浄化の光が“星”を包む。


「あっ…」

「ッ、くっ…そ……ポル、クス…手、を…」

「……お兄、様…」


 抗えず、耐え切れず。

 力及ばず光に包まれた2人は、衝撃で離れた手を、再度繋ぎ直して。あらゆるモノを滅殺する光ではなく、全てを浄化する、暖かな光に身を落とす。

 その光に、殺意はない。

 ただ、相手の力を削ぎ落とし、無力化する。不殺を掲げ勝利する。エーテ、コメット、デイズの想いを具現化した必殺技。


 魔力が光に溶ける。

 闘志は光で揺らぎ。

 殺意は光に染まる。


 凄まじい勢いであるのにも関わらず、優しい光の奔流に2人は包まれる。


「あったかい…」

「チッ、クソが……こんな、こんな…」

「……っ、あぁ……へい、か…へいか…もうし、わけ……ござい、ま…せ…」


 朦朧とする意識の中、皇帝への謝罪を告げて。


 敗北を悟ったカストルとポルクスは、漸く───意識を光に溶かした。


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― 新着の感想 ―
やはり予測と同じで、殺さないで終わる。しかし、この点から見ると、新時代の成長をはっきりと感じることができる。殺さない前提で、惑星規模の出力を無制限に使用できる強者に勝つには、強い信念と力が必要で、殺さ…
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