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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
月下星王大戦

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313-混沌の渦は止まらない

支援イラストを頂きました!

誠にありがとうございます!


https://x.com/i/status/2008793847149850687

いつの日かの、蒼月頭部爆散事件です。ちゃんと帽子頭も吹き飛びました。こんなところをイラスト化してくださり誠にありがとうございます笑。


https://x.com/i/status/2008795357883625728

夢の中でのお出迎えシーンです。異星人にとっての地獄の始まりです。かっこいい…

何気に一番本気の時のラピスなんですよね、ここ。

圧倒的脅威や絶望感、頂点にいる感を、かっこよく描いていただき感謝の極みでございます。


重ね重ね、誠にありがとうございます!

では、本編です。


 暗黒王域軍と夢星同盟、二つの軍勢が激突する主戦場、大陸惑星グロードシェリフ。万を超える異星の民が勝利を求めて搗ち合い、咆哮を轟かせ、血飛沫を上げる。

 異星人が、宇宙怪獣が。機械兵器が。アクゥームが。

 そんな多種多様の異形が跋扈する宙の主戦場にて、最も輝かしい魔法少女が一人。


「う〜ん?」


 その名も、“王国”のマーチプリズ。


 ウタユメドームのライブステージで、彼女は歌って踊り味方陣営を強化する。地球のアイドルであり、魔法少女と歌姫を兼業する彼女は、支援をしながら戦場を俯瞰する。

 攻撃力強化、防御力強化、魔法威力強化、バフの負荷がかかりすぎないようにする調整、魔力回路の円滑化、状態異常解除、バフの上乗せ、怪我の治癒、運気向上……

 他にも多種多様なバフを夢星全軍にかける彼女に、正直余裕はない。

 多方向から絶え間なく襲いかかる攻撃の数々。

 ウタユメドームの防御機構がある程度は弾くが、それも限界がある。それでも、マーチは魔法を使うのを止めず、仲間たちの為に、自分のできる精一杯を熟す。

 そんな中。


「んー、やっぱり……いない、よね?」


:なにが?

:お水飲んで

:うわぁ〜、これが戦争…

:規模がおかc…


 休憩タイムと言わんばかりに、一度歌うのを止め。

 眼下を覗くマーチの視線の先……つい先程まで、将星の聖座ポリマがいた地点。そこには、守護騎士はいるものの無人の物見櫓があるのみ。

 マーチと同じく、暗黒王域に支援を送っていた彼女。

 “聖印乙女”の名に相応しい、祈りの力が天から降り注いでいた。


 祈りの力が込められた燐光が、雪のように降り注ぐのは変わらない。


 だが、祈りの捧ぎ手であるポリマが───いない。


「気付けばいなくなってたけど……本人いないのに、まだ効果が残ってる感じ?すっごいなぁ……そういう意味では負けた気分。なんかムカつく!」


:がんばって

:負けてないよ!

:のど飴舐めな

:身体大事に


 暗黒王域軍の勢いに衰えはない。マーチのように背中を押してくれる聖女がいなくとも、半永久的にバフを上乗せされている兵士たちは、血気盛んに戦場を蹂躙する。

 マーチの支援との違いは、効果の持続時間。

 定期的に歌って、支援を重ね、途切れないように歌う。それがマーチのやり方なのだが……ポリマの祈りは、その工程が異様に少ない。一度の祈りで、魔法の行使だけで、三十分はもつ。

 ゲームでいえば、数ターンごとに歌魔法を掛けなければいけないのがマーチ。戦闘中、ずっとバフがかかっていてコストが少なく済むのが、ポリマ。

 その明確な違いが、マーチをほんのり不快にさせる。

 まぁ、屍の歌姫と宗教のトップを比べるのは、それこそお門違いだろうが。


 ……更なる問題は、その祈りの魔法が未だ継続中であるということ。


「あの石像……この距離だとすーっごいちっちゃいけど、あれ多分、ポリマちゃんって子の聖像だよね?あれが……あの子の代わりに、魔法かけてるって感じじゃない?」

「ヤバヤバのヤバじゃない?」


:確かに

:死語ですそれ

:えっ嘘だろ

:↑…それはどっちの意味の驚き?

:まだまだ現役だろ!!

:もっと心配しろ

:バカばっか


 聖座不在の代わりに物見櫓に置かれた、ポリマに似せて作られた聖像。その聖像が定期的に祈聖魔法を行使して、暗黒王域軍を強化していた。

 意思なき聖像が、自動で魔法を行使する。

 ゴーレムとはまた違う魔法の使い方に、マーチは思わず感嘆とした声を上げる。


 聖像の破壊はできない。首席枢機卿に恭順しなかった、極僅かの守護騎士が聖像及びその周辺を守っていることも相まって、試さずとも破壊は困難であるとわかる。

 マーチの歌魔法で攻撃するのも、味方が多く難しい。

 一応、ウルグラ隊の指揮官、“深碧”のムゴクが気付いて破壊しに行っているが……その道を阻む兵士たちにより、まだ時間はかかりそうだ。


「……私ができるのは、歌うこと。がんばれーって、皆に歌を届けること」


 それならば、自分は自分ができることを。彼らが敵陣を瓦解できるように、歌を歌おう。

 マイクを手に取り、胸を膨らませて。

 今一度、戦場全体に歌を届かせんと、気を引き締めた、その時。


ブイィィィィ───ン…


 戦場の上空に───超巨大な円形の鏡が、現れる。


「! あれは…」


 見覚えのあるその鏡。しかし、大陸規模の大きさなのは流石に見たことがない……その異様さに、魔法の持ち主は何処かと視線を巡らせて。

 マーチのその挙動を遮るように、鏡面が揺らめく。

 不気味な輝きから這い出でるように───魔法少女の、敵が落ちる。


【───アクゥームッ!!】

【───アクゥームッ!!】

【───アクゥームッ!!】

【───アクゥームッ!!】

【───アクゥームッ!!】

【───アクゥームッ!!】


 地球の悪夢の具現、夢魔アクゥーム。人型の異形たちが大地に降りてきた。その異様は、三銃士“逆夢”のペローが指揮しているアクゥームと、個体としては変わらない。

 明確な違いは、片目が鏡のようになっていることか。

 明らかに改造された悪夢の尖兵たちが、アリスメアーの指揮下から外れて、仕えるべき主のいる夢星同盟へ反旗を翻す。


「んなぁ!?ちょっ、止まれー!!やめろー!?」


 マーダーラビットの上で叫ぶペローが、てんやわんやになっているのが見えた。

 ご愁傷さまである。


:うわでた

:絶対あの子じゃん…

:なーにしてるんですかね

:アクゥーム対アクゥーム!?

:うわもう激突しとる

:応援したくねぇ…


 夢星のアクゥームと魔鏡のアクゥーム───十二将星に鞍替えした魔法少女、“魔幻廻鏡”のミロロノワールが操るアクゥームたちの大暴動。

 敵も味方も大混乱、されど、王域軍の動揺は最小限。

 味方に悪夢がついたことに困惑はあれど、事前に存在は通達されていたのだろう。指揮官たちの統制もあり、兵の動きに乱れはない。流石に、アクゥームから遠ざかる布陣ではあるが。


「ノワちゃんさぁ……あの子、何考えてんだろ。てかさ、何処にいんの?」


 そして、肝心のノワールが何処にもいない。魔力反応も検知できず、この戦場にはいないことしかわからない。

 上空に浮かぶ鏡だけが、彼女の関与を証明している。

 続々と投下されていくアクゥームは、際限など無いかのように現れる。そのおかしさも、マーチたちの疑問を加速させる。


 ノワールが鏡に封印しているアクゥームの数は、決して多くはない。


:増殖してる?


 そして、配信に流れたそのコメントは、的を得ていた。


【───ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァクゥーム゛…】


 まるで、気付かれるのを待っていたかのように……鏡の世界から呻き声が聞こえてきた。何重にも重なった、耳を苦しませる悪夢の声が。

 またしても鏡面が揺らぎ、鏡から、それは這い出る。

 無数の手が地面に向けて垂れ下がり、複数の瞳が戦場に視線を巡らせる。ブクブクと膨れ上がった黒色の肉塊は、常に脈動しては膨張を重ねていく。

 マーチは、配信を見る視聴者たちは、その異様な黒肉を知っている。

 

「“魔性群母”ッ…!」


 複数のアクゥームを溶け合わせた、無限にアクゥームを生み出し、量産する生体工場。悲しい哉、夢魔に囚われた人間も素材に変換される為、最優先討伐対象とされていた夢魔の特異個体。

 ノワールは、手持ちの夢魔全てを使って復活させた。

 幾つもある丸々とした肉塊の割れ目から、次々と異形の夢魔が生まれ落ちる。人型のスタンダードから、鳥や狼のイレギュラーな形状まで、たくさんの。

 かつてアメリカを恐怖のドン底に落とした地獄絵図が、再現される。


「アレはマズいッ───、ッ!?」


 味方の被害を減らす為に、悪夢で死なないように、息を大きく吸おうとした、その時。

 焦るマーチの眼前に……


 真っ白な、美しい爪先が───ウタユメドームの障壁に突き立てられた。


 ヒビの入った障壁に、マーチは絶句するしかない。


 亜音速で飛び込んできたそれに、一切気付けなかった。その事実を噛み締めながら、歌姫は爪先の持ち主の、その美貌を睨む。


 一応、情報では知っている。

 青白い顔色の、その美丈夫が───ノワールに敗れた、将星候補の成れの果てであることを。

 半自律状態の戦闘人形となった、死体であり。

 デネブ攻撃航空連隊の、元連隊長。今や、闇の鏡使いの手足となった、白鳥。


「ごめん、だれだっけ!?」


 マーチはド忘れしたが……

 その名は、シグニュス。“星爆白雨(せいばくはくう)”の名を冠していた、空の制圧者である。ノワールの手駒となった彼は、主人の命令に従い、その白翼を広げて飛び込んだ。

 狙いは、マーチプリズの機能停止。

 “死せる夢染めの六花”の撃退方法である、魔力の枯渇を狙って。


「───星爆魔法」


 ビロードのような音色と共に、ウタユメドームの外殻が爆破された。








꧁:✦✧✦:꧂








 混沌の渦に陥る主戦場。

 遥か遠方に見える巨大な魔鏡から、無数のアクゥームが現れている地獄絵図を、総旗艦ネオ・ズーマランドから、サソリの男も観測していた。


「な、なにあれ……いや、アレがかつての魔法少女たちが戦った、アクゥームの生体工場ってヤツでつか……いや、ヤバくね?なんだよあの集合恐怖。ヤバっ…」

「マスター、アンタレスが二機、破壊されました」

「なんですとぉ!?」


 元・将星タレスは、シャウラからの報告に瞠目しながらモニターを確認。そこには、鯨のようなアクゥームにより呑み込まれ、咀嚼され、破壊された殺戮機動要塞の姿が。

 多くの宇宙怪獣と暗黒王域軍の命を奪った殺戮兵器が、こうも呆気なく。


 アクゥームのヤバさを再確認したタレスは、突然現れた白鳥の爆撃にも悲鳴を上げ、ヤバいヤバいと用意していた打開策を起動していく。

 ないよりはマシ程度の代物だが、魔法少女を参考にした悪夢を浄化する機構を取り付けた機械獣を発注、製造して投下する。


「うぐぐっ……ま、間に合うか?なんとかなるか!?ぽき脳みそ沸騰しちゃうよこのままじゃ!!」

「頑張ってくださいマスター」

「ハイハイ……あっ!シャウラ、一応艦内スキャンして?登録外の反応があったら即通報!今ん所、侵入してるのはいないだろうけどさ〜」

「かしこまりました」


 ネオ・ズーマランドは、機関士などの技術者から様々な業種の非戦闘員が残っている。警備兵も巡回しているが、もしかしたらこの総旗艦に侵入者が現れるかもしれない。敵の本丸を占拠・破壊するのは、戦の常套句だ。

 準備していて損はないと、タレスはシャウラに命令。

 命令を実行したシャウラは、接続済みの総旗艦の内部、外部の生体情報を解析。内外にいる乗組員が、登録済みの反応であることを再確認。

 監視カメラで見ても、異常は感じ取れない。

 ……だが、シャウラは気付いた。画面に映る、些細な、小さな異変に。


「……マスター」

「なにぃ!?」

「申し訳ございません───既に、侵入されています」

「えっ、は!?ちょっ、警報は!?」

「作動していません!“対カメレオン警報”も意味を成していません!!」


 違和感が浮上するのは、突然で。


 監視カメラの映らない隅に───血痕や、寄りかかった死体が現れた。今まで何も無かったところに。突然隠蔽の魔法が解けたかのように、機械の眼に認識される。

 確認できるだけでも、衛兵の亡骸が四つ。

 マップと照らし合わせれば、どう見ても、タレスのいる機関部を目指して、一直線、最短距離で進んでいるルートであった。


 まるで、俺はここにいるぞと見せつけるかのように……タレスたちに認識させた。

 手練れの、暗殺者。


「な、な、な!?ぜっ、絶対アイツだ!来たんだ!なな、なんでぽきんとこに!?」

「マスター、結界を!」

「わわ、わかってるよ!!」


 慌てながら自身と機関部を守る為の結界を張って、一時でも安らぎを得ようと。コンソールを操作したタレスが、部屋全体を覆うように現れた半透明の障壁を見て、思わず安堵の息を吐いた、その時。

 タレスとシャウラのいる背後の空間が、揺らめく。

 2人は気付かない。情報災害と言ってもいい、その力の干渉は絶対で。


 蒼い奇術師の姿をした工作員が、タレスの背中から胸に穴を開けた。


「ぐふっ…!?」

「マスター!?」


 指先から放たれた一条の光線。ムーンラピスの姿をした何某による、元・将星タレス・スコルピオーネの暗殺。

 唐突な予期せぬ痛みに、タレスは転げ落ちて悶絶する。


「がァっ!?うっ、ぐっ……いっ、痛いぃぃぃ〜……まだなんとかなるけどぉ!!」


 だが、幸い死には至らない。胸部に大きな風穴が空いた姿は、どう見ても致命傷だが……全身を改造して今の姿になったタレスは、心臓を定位置に置いていない。

 魔力炉の予備機があった胸の損壊は、そこまで重要ではなく。即座に体内を流動する生体金属が、疑似神経と血管を繋ぎ合わせ、貫通痕はそのままに側面を均す。

 穴が空いたままなのは、ここに心臓はないよと、相手を悔しがらせる為のポーズだ。

 意味はないが。


「ちょ、ラピス氏に擬態して暗殺は無理ゲーでしょうが。難易度調整もっと優しくしてよ……ねぇ、レイ氏。酷いよ本当。泣いちゃうでしょ」

「───勝手に泣けばいいだろうに。愚図が」

「酷くね?」


 不愉快そうに立っていたラピスの姿が、透けるように、解けるように掻き消えて……代わりに、タレス暗殺の任を失敗した、緑色の処刑人が現れる。

 “翡役淵底”レイ・モイヒェルメルダー。

 ラピスの姿と、彼女が持つ「レイにも適性がある」隠密系統の魔法を使って、総旗艦の最終防衛ラインを暗殺する心積りだったのだが……

 心臓を狙った一撃は、失敗した。

 失敗したが、レイは気にしない。

 わざといるのをアピールしたのは、この格好の狩場を、外部からの干渉ができない、逃げ場のない殺しの場を作る為だ。自分も外には出れないが、目の前の標的を殺せればそれでいい。


 まんまと敵を誘い込んでしまったタレスは、挙動不審になりたがる身体の震えを根性で抑え込み、脂汗を拭って、処刑人を睨みつける。

 自分のテリトリーに入った男は、なんでもできる。

 誰かに成ることで、その誰かの魔法までも行使できる、そんなバケモノ。


「ふぅ〜……シャウラ、悪いんだけど……君は、主戦場の補佐をお願い。正直、あっちに構ってられる余裕とかは、無いんスわ」

「……かしこまりました。ご武運を」


 背中を支えるシャウラを下げて、総旗艦のシステム業に専念させることを決めて。

 一対一。絶体絶命の戦いに、タレスは臨む。

 怖くて堪らない上、今すぐにでも逃げたい逃げ腰だが。今はもう、やるしかない。そう覚悟を決めて、蠍の髪尾を持ち上げる。


「珍しくヤル気に満ち溢れてるな…」

「そりゃ、そうでしょ。ここで無様なマネしたら、ぽきが魔法少女に殺されちゃうでしょ。それだけは、絶対にイヤだから、さ!!」

「恐怖に駆り立てられて、か。無駄だな。裏切り者には、死あるのみ」


 メードに化け、ラピスを刺し、ラピスに化けてタレスに暗殺を仕掛けた処刑人。

 暗殺者であり、工作員でもある将星、レイ。

 戦闘能力では遥か格上の処刑人───その手には、彼の得物である武器。持ち手の着いた、回転する刃。つまりは巨大な電動丸ノコ、回転ノコギリが握られていた。

 刃が回る。不快な金属音が、全てを切り裂く。


「遺言を聞こう」

「遺言を言いゴーン☆」

「さらばだ」

「あちょッ」


 殺意の高まる回刃の一振りが、間に入った死蠍の毒尾と激突した。


実は感想見て慌てて書きました

書くスケジュール間違えてましたねぇ……危うく話の順番変になるとこでした。


次話以降は、「現状」で勝てる組み合わせの戦闘に、順次決着をつけていきたいと思います。

対戦よろしくお願いいたします。

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