表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
新たなる星々の輝き

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

316/378

星語りの秘話-黒虚

支援イラストを頂きました。

誠にありがとうございます!


https://x.com/suijaku01/status/1999510500741099849

お茶会中のラピスです。素敵ですね。



 元・十二将星の一座であり、呪いの坩堝をその身に宿す黒山羊の男、カリプス・ブラーエ。過程はどうあれ、夢星同盟の一員として戦う彼は、元より将星の地位にも興味はない。皇帝への忠誠心も、そこまで厚くはなかった。

 元より彼は根無し草の放浪者。

 フラフラと星を渡り歩き、その日暮らしの気侭な生活を送っていた。将星になってからも、それは変わらず。稀に飛んでくる皇帝の勅命に従い、敵星を死の森で繁茂させ、滅亡させたりすることはあったが……それ以外では、己の興味が赴くままに星々を散策していた。

 その原因は、彼の身体を蝕む呪毒の力。


 死の森───暗黒銀河の固有種であり、その外には一切存在しない呪いの温床。コズミックカラーの植物は、突然この世界に現れた。

 その発生源は誰も知らない。

 自然発生なのか、人為的なモノなのかさえわからない。毒素が強すぎて調査が進んでいないのもあるが、爆速的に生息域を広げていく呪詛に、誰も対応できなかったという理由もある。


 後天的に死の森を操る力を得たカリプスでさえ、それはわからない。


 だが、疑いを持つとすれば───死の森が最初に現れた発生源の星は、カリプスの生まれ故郷。

 黒山羊の住まう荒れ果てた星が始まりなのだ。


 元々、カリプスは呪いを是とする一族の生まれだ。

 自分を呪い、他者を呪い、呪いと共に生き、呪いと共に死ぬ黒山羊の一族。数あるズーマー星人の中でもかなりの

嫌われ者であり、呪いで相手に圧力をかけ、自分の意見を押し通そうとする我の強い集団でもあった。

 そんな呪詛塗れの一族に生まれたカリプスだが、あまりいい思い出はない。なにせ、口減らしの為にと、親の手で死の森に捨てられたのだから。

 それも、空から。

 まだ右も左もわからない子供なのに、吐き気のする森に叩き落とされた。突然現れ、徐々にその規模を拡大させ、破滅へと導いていく死の森。呪術に精通した黒山羊ですら対処できない地獄で、カリプスは───そこから十年以上生きることとなる。


 本来ならば森に呑まれて、植物となって死んでいる。


 それなのに、カリプスは生きた。死の森に生えた果実を食べても、身体を蔦が絡まろうとも、入ったら死ぬ木陰で休もうとも、カリプスは生きた。

 生まれ持った耐性なのな、適正なのか。

 是非は誰もわからない。ただ、カリプスは運良く、森に適合した。


 やがて森は、星を埋め尽くした。カリプスを除く、民の全てが死滅しても。枯れることなく、永遠に繁茂し続け、星空に向かって枝を伸ばしていく。

 その中で、生き残ったカリプスは森を出た。

 自分以外の生き物が消えた、呪詛塗れの星からも、枝を伝って飛び出た。


 カリプスはわかっている。


 死の森に生かされた自分が───呪詛の種を運ぶ苗床になっていることを。他の惑星にも、呪詛を運んで死の森を繁殖させることを……森から求められていることを。

 漠然とだが、それがわかってしまっていた。

 それでもカリプスは、呪いの意思に従いはしなかった。肉体から飛び出そうとする種を抑え込み、意志の力で森の繁茂を防ぎ、周りに害を及ばさないように。

 カリプスは呪いを制御できるようになる為に、五十年の歳月をかけて修行した。概算、星を三つ程逆に自然豊かに変えてしまったが。


 呪詛を扱い熟せるようになってから、カリプスは星々を旅するようになった。放浪癖が定着したのは、この時からである。

 ……今は、召使いの世話でそれどころではなくなって、放浪者ではなくなったが。


「ご主人様ー!」

「主っ、主っ!」

「わーったわーった!落ち着けって!そんな慌てなくても俺は逃げねぇよ!」


 背中に攀じ登ってくる、一応召使い枠にいる幼女たち。これでも実年齢は百を超えているが、それは兎も角。常に振り回されっぱなしのカリプスは、いつも変わらず構ってくる子供二人にされるがまま。

 死の森の呪詛で、生きるのも死ぬのもままならない。

 そんな状態であるカリプスに触れるのは、呪いの関係上宜しくない。まず寿命が縮む。それをわかっているから、毎度カリプスは制止するのだが。

 思いの外、2人は逞しく。


「大丈夫です!」

「平気!平気!」

「ダビーたち、ご主人様のお陰で今があるんです!だからいいんです!寿命が減ったって、別に!ね、ナシラ!」

「バウ!」


 恩義を掲げ、親愛を抱いて、呪詛に身体を蝕まれてでも共にいたいと笑う。その太陽のような笑みに、カリプスは抗議するのをやめた。常識で語るなら、嫌われてでも突き放すのが正解なのだが。

 依存ではない。これは共存だ。

 共に生き、共に死ぬ。その覚悟が、既に召使い二人にはできていたのだ。


 その熱意に、優しさに、擦り切れた精神が和らいだのは言うまでまない。


「ったく……ダビー、鉄の貯蔵は十分か?俺らの戦場で、集めんのは多分無理だろうからな」

「大丈夫です!でもダビー、生成できますよ?」

「魔力消費は少ない方がいいだろう?あるんなら、それに越したことはない」

「成程!」


 自前の双剣、アルシャトとアルゲディを研いで、魔力を流し込んで強化する。その隣で、ダビーも愛用の大金槌に鉄をペタペタと貼り付ける。

 予め鉄を纏わりつけておくことで、持ち運びを楽にする算段なのだ。筋力が充分あるダビーであれば、重かろうとこれぐらいなら軽々と持ち運べる。

 そう力自慢のアピールをするダビーに、カリプスは少し微笑ましい気持ちになった。

 ちなみにナシラは爪研ぎ中だ。

 カリプスの背中で。


「おい?」

「ちょうどい」

「いや痛いんだが。よくない。そーゆーのよくない。俺は鉄じゃねェんだぞ…」

「? 食べます?」

「いらない」


 主人の背中で爪研ぎして、背中の衣服をズタズタにするナシラと、手頃な鉄塊を手渡して肉体強化を図ろうとするダビーを軽く跳ね除けて、カリプスは溜息を吐く。

 この程度で傷がつくほど、黒山羊の背中は弱くない。

 ちなみに、ダビーは金属を食べることができる。身体に溜め込むことができるのだ。食べた金属は魔法で取り出し使用する。不思議な身体構造である。

 ……ナシラがカリプスの背中で爪研ぎをしていたのは、ただの親愛である。


「主」

「ん、なんだ?」

「背中痒い痒い?」

「……いや、大丈夫だ。問題ねェよ」

「そっか」


 今更になって心配し始めたが、別に被害はない。強いて言うなら着替えが必要になっただけだ。 

 ……思えば、この2人との付き合いも長いもの。

 奴隷時代、需要を理由に奴隷商が盛った成長阻害剤で、肉体的にも精神的にも、ずっと子供のままだが。それでも2人は、カリプスの召使いとして成長した。

 未だに、カリプスが手を貸すことの方が多いが。

 それでも、少数精鋭のトリオで活動することに苦を感じたことはない。


「……フルーフが作ってくれた呪符も、忘れんなよ。あれないと死んじまうからな」

「大丈夫です!持ち歩いてます!」

「問題なし」

「なら良し」


 ダビーとナシラが死の森に耐性を付けることは無理だ。だから、外付けの呪符で呪詛を防ぎ、カリプスがどれだけ本気を出してもいいようにした。

 死の森という環境下を利用しない手立てはない。

 フルーフがわざわざ作ったそれは、何回もかけた試行でその有用性を示している。本来ならば不可能な対策術も、真紅の呪い師にかかればこんなものだ。

 一応、カリプスらと共闘する予定のもう一人にも呪符は渡されている。


「あのライオン野郎が銀河の王になるのは、正直不安しかねェが……乗りかかった船だ。最後までやって、みんなで仲良く帰ろうじゃねェか」

「ダビーはどこまでもご主人様について行きます!」

「ナシラも!ナシラも!」

「わーってるよ。安心しろ。終わったら、魔法少女たちに頼み込んで、地球移住でもしよう。あそこなら、死の森もただの森だからな」

「! 地球ですか!やったー!」

「ナシラ、地球、好き!」

「ハハッ、そうか」


 磨き上げた片手剣の刃文を眺めながら、カリプスたちは素敵な未来図を思い浮かべる。

 最初は敵だった。

 途中から中途半端な立場になって、味方になって、今に至る魔法少女たちとの関係性。カリプスたちは、自分たち夢星同盟の勝利を疑わない。自分自身の勝利も疑わない。

 何故なら、疑わない心が強さだから。

 そう、魔法少女たちに教わったから───疑わないで、勝利を目指す。


 銀河最後の黒山羊と、それに付き従う二匹の獣。三人の躍動は止まらない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
我々の四人の元「将星」は二つの状況に分けられるようです。一つは皆の期待を背負う(夢羊、金獅子)、もう一つはその種族の最後の生存者になって地獄のような故郷から去る(サソリ、黒山羊) また、前のコメント…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ