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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
新たなる星々の輝き

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294-ラスボス強化パッチ


 戦場まで後僅か。

 小規模な襲撃は頻繁に。

 最終決戦はもうすぐ。

 それまでの間に、僕にはやるべきことがある。今なら、多分できるから。


「リデル、ちょっといい?」

「うん?なんだいきなり……あぁ、そういう。構わんぞ。グゥも連れて行くか?」

「……そうだね、ちょうどいいかな」

「ぐぅ?」

「おいで」

「ぐぅ!」


 魔法少女とか将星の鍛錬とか、色んなことでゴタゴタと引っ張りだこだった僕。漸くやることを終え、暇になった僕は次の用事を済ませることにした。

 終わったって言えないね?これ。

 お昼ご飯を食べ終えて、満足気にお腹を摩っていた幼女たちを呼び寄せる。用があるのはリデルだが、グゥも一応関係者だ。使えるに越したことはない。

 気になった様子の魔法少女たちには、悪夢関係だからと寄せ付けない。約一名執拗いが……いつものことなので。とはいえダメなモノはダメだ。邪魔だからあっち行って。専門外でしょ。


 ……アリスメアーは連れてくか。おい三銃士、メードも着いてこい。


「なんスか?」

「ぞろぞろ…」

「なんだ、特殊任務か何かか?」

「……これ、もっと人払いは必要ですか?ついてきてるのいますけど」

「殺っとけ」

「酷いッ」


 もう一度邪魔者を除け者にして、僕は新生アリスメアー全員を獅子宮の屋上、展望台まで連れていく。

 横に流れていく星空を眺めながら、僕は前へ。

 目的を理解しているリデルもついてくる。グゥはまぁ、来なくていいや。


 ……何をするのかって?悪夢の大王としての偉業を、今ここで成すだけだよ。


 悪夢としてね。


「三銃士、メード、結界を。この星を覆えるぐらいの……悪夢を断絶する結界を」

「ッ、まさか!?ちょっ、オレらにやらせます!?」

「文句言ってる暇なんざねェだろ!!」

「大至急、だね」

「ですね」


 ちょうどいるんだ。彼らを使わない手段はないだろう?僕の代わりに大急ぎで結界を張る4人を横目に、僕は目を閉じて感覚を鋭く研ぎ澄ませる。

 勝負は一回。たった一回で、全てを掌握する。

 徐々に星を覆っていく膜。小姑のようにうるさい連中が出てくる前に、全てを終わらせる。いや、ある意味始まりでもあるのか……正直、どっちでもいいけどさ。

 やれる時にやって、全てを取り込んでおこうじゃんか。

 今の僕なら───暗黒銀河内にある、全ての【悪夢】を取り込める。


「リデル、探知しろ」

「……まぁ、いいだろう。それぐらいしかできんしな……おこぼれは貰ってもいいか?」

「好きにしろ」

「やったな」


 リデルに任せたのは、暗黒銀河に点在する……若しくは潜伏する【悪夢】の炙り出し。早速リデルは両手を広げて目を瞑り、周波数で調べるように探知を開始。

 今から危ないことをするが、まずは見つけなきゃね。

 リデルの脳波と僕のを繋げて、リデルが見つけた悪夢の所在を共有する。リデルは悪夢の支配者。その点だけなら僕よりも上だ。こうして、悪夢だけをピンポイントで探す腕前は、やはり僕よりも速い。

 ……地球の悪夢だけでも強大なのに、こうして地球外の悪夢にも干渉できるの、控え目に言ってヤバめだよねぇ。全盛期にやんないでくれてよかった。多分宇宙の悪夢まで取り込まれてたら、僕に勝ち目無かったもん。

 ちょっと安心するよねぇ……

 なんて、少しだけ思考を横に逸らしている間にも、次々悪夢の情報が脳にインプットされていく。うーん、成程。育ちきってないのが多いな。やっぱ、ある程度育つとすぐ表舞台に上がっちゃうせいで、おっきいのはあんま見受けられない感じかな?

 ……いや、意外といるかも。グゥよりデカいのも、少し小さいのも……案外いる。どんどん更新されてってるから断定できない。小さいのから探知しるのねあなた。

 選り取りみどりだな。

 食べ放題かな?


「ふむ、夢の中にも結構潜んどるな……」

「……ここの異星人は、みんな悪夢対策の術を寝る時にはかけてるって話だから、かけ忘れとか、隙を見て呑み込むつもりでもあるんだろうね」

「自分の領域でもあるからなぁ。住みやすい環境にしたい気持ちはよくわかる」

「悪夢は引っ込んでろ」

「……それ、これからオマエも言われるようになること、わかってるのか?」

「正論やめろ」


 星の中、夢の中、人の中───色んなところに、悪夢はいます。怖いですね。危ないですね。だから、責任もって僕が回収します。

 無料だよ。


 ……これ、下手したら同じタイミングで大量発生とかもありえたんかな。そしたら暗黒銀河大パニックになってたかもしんない。戦争どころじゃない。

 それはそれでアリだけども、今回はナシだ。

 流石に宇宙大虐殺は困る。暗黒銀河全滅も困る。ここを地球の防波堤にして、暗黒銀河外の敵対種が地球に来ないようにしたいんだから。これで死なれたら本末転倒。割と困るから却下だ。


 ……他所の宇宙も全滅するんじゃ、って?どっちにしろ嫌だろ、悪夢が群雄割拠する時代とか。道歩いてるだけで悪夢に呑み込まれる世界とか、ホラーよりホラーだ。

 その頂点に僕が立つかもって?

 いや、なんか……うん……なんか嫌だな。想像するのも嫌だ。


「結界張れたッスよ〜!」


 おっ、あっちも準備万端か。ヨシヨシ。


「ありがとう」

「あいッス〜」


 ……うん、これなら獅子宮に被害も出ないだろう。仮に出たとしても、治療するから問題ないが。心理的にも今は外を見ないことをオススメするよ。

 察したレオードが遠ざけてるから平気だろうけど。

 無表情ながら楽しそうにキャッキャッしてるグゥの頭を一撫でして、星全体を覆う結界、その向こう側に点在する悪夢を見る。


「まだ?」

「……そう逸るな。一応、圏内にいる【悪夢】は全て捕捉できた筈だが。これでいいか?」

「多分、十分でしょ。これ以上は身が持たない」

「そうか」


 既に三桁あるんですが、それは……流石に許容量がすぐ限界来ちゃって死ぬ。お腹タプタフになるよ、これ。多分今日一日で吸収は無理だな。時間がかかる。

 ゆっくり、時間をかけるしかないか。

 それぐらいどうってことないけど、やるからには完璧を目指さなきゃね。


「ふぅ……一応、身内に警告はしとくか」


 今更感がすごいけど、一応ね。


 こういう時に便利な拡声魔法を起動して、ズーマランド全域に声を届ける。


『あー、あー。マイクテス、マイクテス……えー、僕だ。ムーンラピスだ。突然でアレなんだけど、これからここに悪夢を集める。苦手な人は全力で結界張るなりして、自己防衛をよろしくお願いします。自力で生き足掻け。以上』

『───ちょっ、急過ぎない!?』

『おいこら事前説明。怒るぞ。うちのヤツらが恐慌状態になったらどうすんだよ』

『そんなにヤワなわけ?いらなくね?』

『だってよテメェら』

『───ッ!』

『うるさ』


 苦情の声がうるさいが、まぁクレーマーの声も受け止めなきゃね。こればっかりはどうしようもないな。大人しく受け入れてあげよう。

 心外だと吠える連中も、期待させてくれるといいが。

 不安や恐怖を上から押し潰して、なかったことにして。後はもう、実行するだけ。


「やるよ」


 一応、リデルとグゥも僕から離して、みんなからは少し距離を置く。悪夢の住人とはいえ、自我を乗っ取られては大変だ。グゥなんかは急成長するかもしんないし。それはちょっと早い。あと五年は待て。

 展望台の中心で、星空を睥睨しながら、宙を見渡す。

 この視界いっぱいの星々の幾つかが、【悪夢】が僅かに照らす光だと思うと、少し怖いモノがあるね。遠くの星を貪ってるわけだし。ちゃんと対処しろよな……まぁ、対処できないぐらいいるんだろうけど。専門機関もこの前僕が吹き飛ばしちゃったしね。

 責任を持って、掌握しよう。


 そう決意を固めてから、この有り余る魔力を、世界へと発信する。


「ふぅ…はぁ……手っ取り早く行こう。全ては、僕の為。延いては、世界の為に」

「《夢放閉心・裏》───マギアコネクト」


───<悪夢を誘引する魔法>


 宙に伸ばした手に、渦を描くような集まり方をイメージする。息をするように、この銀河にある悪夢を掌握する。女王が見つけ、暴いたそれらを一つ残さず、余すことなく印をつけて、抵抗もさせずに支配する。

 そこにあるなら、距離など最早関係無し。

 捕捉された時点で逃げ場などない。全て、僕の手の上に集まるが良し。

 

 逆らうモノなど、何人たりとも許さない───おいで、オマエたちは、全部僕のモノだ。

 逃がしやしない。


「ッ、ッ……ぐっ…」


 僕の掌を軸にするように、宙が円を描くように渦巻き、変貌していく。本来ならば有り得ない現象で、視界に映る星々が引き裂かれるように歪んでいく。

 だが、それも目に映る事象に過ぎない。

 銀河中に散らばる【悪夢】を、無理矢理集めているからこそ起こるある種の怪現象。歪みが広がり、渦が広がっていくと共に、全身の魔力が抜けていく。倦怠感でクラクラするが、それも悪夢が集まってきている証拠。近場にいる悪夢から遠方にいる悪夢まで、一つ残らず、獅子宮へ誘引されているのがわかる。

 これは、終わった後が大変かもなぁ……

 それでもやめないけど。耳鳴りのような不快な音、頭の奥から聴こえる警鐘、世界が奏でる悲鳴……それら全てを無視して、悪夢の収集を続行。

 徐々に、点々とだが悪夢が集まってくるのが見える。

 僕の魔力に当てられた、悪夢の反応は主に三つ。異様に大人しく、従順な個体。嫌だ嫌だと拒む、反抗的な個体。そして、どうでもよさそうに流れに身を任せる個体。

 最初と最後、同じように見えて違うからね。

 なんなのこの違い。アグレッシブな個体が健気な気さえするぞ。


 ……まぁ、関係なく吸い込むんですけど。はいこっちにおいでー。


【───!】

【───♪】

【───…】

【───ッ!!】

【───…】

【──…】

【─…】


 音にならない悪夢の声を聴きながら、全てを一つに収束させていく。大小様々な悪夢を、ひとかたまりに。決してあぶれることがないように、丁寧に球体を形成していく。

 集めて、固めて、その繰り返し。

 掃除機みたいにズッ!と吸い込むのもアリなんだけど、こういうのは一口でいった方が精神的にもやさしいと思うんだよね。


 ……おっきぃなぁ。これは、期待できそうだ。


 大きく大きく、胎動し、鼓動のような異音を奏でながら収束する悪夢の塊。その大きさは獅子宮を遥かに上回る、天体級の巨塊となって、僕の元に全てが集まる。

 最後の一個も合わさって、悪夢はひとかたまりに。

 ズっシリとした重さが嫌でも伝わってくる、あまりにも膨大な力の塊。ここで放棄すれば、間違いなく暗黒銀河が終焉を迎えるであろう悪夢。集まって、合わさったことで化学反応なようなモノを起こして、ここまで膨れ上がった僕の所有物。

 濃縮されちゃったや…すごいな……

 おこぼれというか、誘引から少し外れた残滓をモグモグ食べてるリデルとグゥの、びっくりしたような顔には同意する他ない。


「…ふぅ……」


 一旦呼吸を整えて。


「それじゃあ、最後の仕上げ……集めた悪夢を、パクッと食べちゃおうか」


 このバカでかい塊を一口でいくのは無理だから、先ずは濃厚凝縮しなきゃ。こんなにデカいエネルギー体を小さくするのは、初めてだけど。

 できるっしょ。大丈夫大丈夫。

 こう、ギュッと固める。すごい可哀想な悲鳴みたいな音聞こえるけど、まぁ。平気平気。多分。大丈夫、痛いのは最初だけさ。


 すぐに楽になる───さぁ、総仕上げといこうか。


 空中で、ギュッギュッと固められていく球体。暗黒色の毒々しい球体が、僕の意思の元、どんどん小さくなって、濃縮されていって……

 気付けば、手のひらに収まるサイズまで小さくなった。

 うーん、重い。重力を感じる。まだ持ってないけど……というか持てないけど。持った瞬間弾け飛ぶぐらい、結構ぎゅうぎゅうに押し込んだ気がする。それぐらいしなきゃ無理だったってことだけど。

 やっぱ、全てを一つにしたからかな。凄まじい威圧感があるんだよね……こいつがこれから、あいや、もうすでに僕のモノになってると思うと、なんかこう、ゾクゾクって嗜虐心が湧いてきちゃうよねぇ。

 早速取り込もう。


「<悪夢を吸収する魔法>」


 変わらず、右の掌を起点に───集めて固めた悪夢を、身体に受け入れる。


 禍々しい力の塊が、グッ、と掌に引き寄せられる。掌に触れない、ギリギリの距離を保って、更なる改造を施した汎用魔法で吸収していく。

 球体から搾り取られるように、悪夢が掌の中へ。

 ゆっくりと時間をかけて……僕の肉体を構築する、月の悪夢に取り込んでいく。勿論何も感じないわけじゃない。すごい痛い。負荷が凄まじい。結構、キツい。でもまぁ、これぐらいならなんとかなるな。うん。余裕だわ……少し拍子抜け。


「っ、ぐっ…」


 ごめんやっぱキツいわ。頑張ろ。僕は魔法少女だぞ。


 みんなには気付かれないように、ゆっくりと悪夢の力を取り込んでいく。混ざってる状態でも自我を保って、この状態でもツマラナイ抵抗して、こっちを逆に乗っ取ろうとする気概は意味わからないが……大人しくしてろよ。

 正直身動ぎしてる程度の抵抗しかないが。

 その弱い抵抗でも、取り込んでる身としては邪魔でしかない。でも、そんな程度の抵抗で僕から逃げれると、僕を呑み込めると思うなよ。

 精神世界にいるマッドハッターが、そういう意思さえも叩き潰すだろうが。


 ……ふぅ、はァ……


 閉じていた目を開く。ずっと宙を見上げていた視界に、先程まで蠢いていた【悪夢】はない。全て僕という悪夢に取り込まれた。もう、この銀河には何も無い。無事、この有象無象を支配下に置くことに成功した。

 一つ残さず僕のモノ。ただ……

 あぁ、やっぱり。消化には至らないか。量が多すぎて、自分色に染め上げるには時間がかかる、か。うん。お腹がいっぱいってヤツだ。黙らせることはできても、まだ器に順応できてない。んー、どんくらいいるのかなぁ、時間。

 面倒いけど、仕方ないね。


「終わったか?」

「うん……でも、まぁ。かつてのオマエに成るには、まだ時間がいりそうだよ」

「そうか、それは仕方ないな」

「ぐぅ?」


 夢貌の災神を名乗るには、まだ少し悪夢が頼りない……こいつらを全部消化して、完全に自分のモノにすれば後はトントン拍子だろう。肩書きだけのようなもんだけどさ。悪夢としての格は、もう頭打ち。でも、完全に取り込んで一体化すれば、僕は純化した悪夢となる。

 定められた限界とか、乗り越えてやるよ。

 悪夢の大王も夢貌の災神も、肩書きが違う、位階的には似たり寄ったりの存在だけど……僕が本当の意味で、頂点なんだってことを、世界に思い知らせてやる。

 歴代最高の悪夢使いとして。

 かつては悪夢を祓った者として、過去の経験を活かして成り上がろう。


 んま、もう既に成り上がってるかもしれないけどね?


「……終わったんスか?」

「ちゃーんと終わったよ。完全純化に数日かかるけど……なんとかなるでしょ。僕だし」

「圧倒的な自信だな……だがよ、それで身を滅ぼしたの、忘れんじゃねぇぞ?」

「介護、いる?」

「手伝いますよ」

「大丈夫だって。同じ轍は踏まないよ。信じて欲しいな。あと介護はいらないから。つーかオマエらは介護されてる側だろ。主に僕に。世話しかしてないぞ」

「なんのことだか……よくわかりませんがありがとうとは伝えておきます」

「ナメてんな」


 配下からの扱いが雑になってきてるのは、ちょっとだけムカつくけどね。


 ちなみにこの後、ラスボス討伐と宣う頭おかなタイプの妖精女王に強襲されたが、慣れた手つきで適当に腹蹴って宇宙空間に追い出した。

 夢の国なんていらないもんね。

 悪夢をすこれ。


悪夢収集率100/100

悪夢変換率 24/100

完全掌握まで、残り───…

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