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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
新たなる星々の輝き

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293-本気になれないお年頃

本気と書いてマジと読む


 数分後。


「死んだわ」

「死んだな」

「死んだでござる」

「死んだんだけど?」

「ごめんなさい」


 異空間に定められたルールにより、五体満足で復活した元・将星たち。あと巻き添えを食らって蒸発したラピス。あまりの爆発に障壁を張る暇もなく、転移で逃げるよりも早く爆炎に呑まれたラピス。異空間内だからとすぐに命を手放したが、今回ばかりの特例である。

 自主的に正座して反省するライトを横目に、一応は鍛錬できたかと溜息を吐く。

 収穫はあった。あったが、文句は無限に出てくる。

 こんな狭い空間で、空間の七割以上を埋める巨大兵器を召喚したことにも不満が溢れ出るが、それはまた後で詰め直すとして。


「あの爆風なに」

「えーっと、破壊されて鉄屑になった時の最後の嫌がらせといいますか、万が一鹵獲された時は盛大に自爆させて、全てを無に返そうっていうのがコンセプトの超スーパーな分子崩壊光線を内包した爆発です」

「なんつーもん作ってんだオマエ……何作らせてんだ」

「俺だって初めて知ったよ。味方諸共消し飛ばすの本当にやめろよ。黄金にするぞ」

「心臓に森生やすぞ」

「サーセンした…」


 タレスの凝り性具合が改めてわかったところで、説教はおしまい。本題であるレオードたちの実力を図る云々は、概ね目的通りに遂行できたのだ。

 必要以上に求めるのもよくはない。

 そう首を振ってからラピスは総評を述べる。カリプスは双剣を手放す頻度を、タレスは思考の速度と動きの鈍さがアンバランスすぎることを注意され、レオードはかなりの辛口評価が下された。やれ刃を押す力が弱い、黄金変換のスピードが遅い、攻撃を躱すのが遅い、思考と目の動きが合ってない、足捌きが悪い、筋肉が足りない、髪質が少し落ちてる、目のクマがよくない、もっと牙鋭くしろ、僕を黄金にするならもっと工夫を凝らせ、黄金をもっと操れ、大鎌だけじゃなくて体術使え、寝室増やせ、ウルグラ全員悪夢堕ちさせろ、など。若干関係ないモノが混じっている気がするが、長文で酷評した。

 ちなみに強さの基準はエルナトである。あれよりもっと強くなれ、という無理難題が課せられている。

 哀れ、レオードの目は遠くなっている。


「手加減してくれよ」

「ダメだよ、総大将。ちゃんと強くないと……今でも十分僕と渡り合えてるけど、ダメだよ。あと本気出して。その手加減しちゃう癖、早く治してくれる?」

「……見抜いてたのか。流石だな」

「だって全力出してないじゃん。あの爆風も、極光だって本当は黄金化できるんでしょ?」

「……否定はしねぇ」

「嘘でしょ?」


 驚愕するライトは気付かなった。

 この男、まだ本気を出していない。否、出せていない。やろうと思えば、この異空間を外殻として空間諸共全てを黄金にすることもできる。だが、できない。

 レオード・ズーマキングは本気を出せない。

 本気を出す即ち、味方も手に入れるべき獲物も、全てが黄金となって“終わる”から。

 黄金とは死である。黄金からの完全解放は不可能。

 例え黄金が解けたとしても、それは表面上の話……一度でも黄金の支配下に置かれてしまうと、何度でもレオードの意思で黄金にすることができる。遠隔で、指を弾く動作一つで、今まで解放してきた、若しくは解放された黄金の被害者たちが、瞬く間に犠牲者となる。

 逃れられない黄金の呪縛。それはラピスもライトも同じである。


 そして───本気を出したレオードの黄金は、二度と、解けることはない。

 蒼月でも、天秤でも、天魚でも。

 完全な黄金となってしまっては───星を眺めることもできない。


 現に、今も尚。黄金から解けない惑星群が───初めて能力に開花し、黄金の暴走を抑えられなかったレオードの黒歴史が、暗黒銀河の異境に存在する。

 降り立てば最後、黄金像になってしまう呪いの地。

 将星レオードの脅威を、恐ろしさを垣間見せる立ち入り禁止区域。


 その元に戻せない絶望を、呪いの如き己の力に、獅子は恐怖している。


 金獅子の黄金が、己の野望を阻みかねないのだから。


 ……それでも、レオードが歴代十二将星でも上位の強さであることに変わりはないが。

 アルフェル>サジタリウス≒エルナト>レオード

 簡略的な強さの順にするのであれば、このような等式になるだろうか。尚、アリエスは言うまでもなく歴代最下位である。


「わかってはいんだよ……上手く使えば、どうとでもなることぐらい。味方を巻き込まずに、敵だけを黄金にして、簡単に勝てることぐらいは。だが、それは……粗大ゴミを増やすのと同義だ。意味がねェ」

「確かに、生き残りは残しておきたいよねぇ〜。なにせ、暗黒銀河の外にもやべーのはゴロゴロいるし。対応できる戦力はあった方がいいっていう……難儀ですなぁ」

「あー、俺の呪いも後戻りができねェからなァ……まぁ、俺はフルーフがいれば解決なんだが」

「いいコンビになってんだね」

「……あの人を擬似蘇生した甲斐があったよ。これからもよろしくしてね」

「おう」


 レオードの懸念に理解を示すタレスとカリプス。全てを黄金にするのも、全てを森に沈めるのも、戦後を考えれば宜しくない手段である。タレスの毒も同類だ。

 味方を巻き込みかねない点も、彼らの共通点。

 ただ殺すだけでは勝ちではない。勝った後を考えるのも必要条件だ。


 仲間思いで未来のことも考える。それがレオードという男の強さであり、弱さでもある。

 本気を出せない男は、自分の力に縛られている。


「色々とズリィだろうがよ。おいラピス、テメェ完全解除できるようになれ」

「無茶言うなよ。やるけど。それなら本気出せるでしょ」

「……そうだな。あっさり肯定できるテメェの強さには、ある意味尊敬するぜ」

「もっとしろ」


 夢星同盟の総督に求められし本気。それを引き出すに、味方は邪魔である。未来も邪魔である。全てが黄金の中に沈んだ世界が、獅子が最も生き生きとできる世界。

 だが、そんな未来をレオードは求めない。

 支配者として君臨すること。その為には、全てを滅ぼす手段は選べない。


 そんな彼の恐怖心を理解して、慈悲の心と言ってもいい手加減を理解して、ラピスは額に手を当てる。

 味方が本気を出せるように。恐れを捨てられるように。ささやかなことでもサポートするのが、ラピスの本懐……魔法少女時代から、その在り方は変わらない。ただ滅ぼすだけの女ではないのだ。今更だが。

 魔法少女が生きれるように、朝日を拝めるように。

 あらゆる手段を講じ、鍛え上げ、準備する……それが、無駄になった過去だったとしても。その本質は、人助けの精神に変わりはない。


 ちなみに、これから数時間後に完全黄金化解除の呪文の試作品が完成することは、レオードは愚か、ラピスすらも知らない未来だ。

 六割成功だとか。


「なら、魔法以外を鍛えよっか」

「取り敢えず、目標はエルナト超え。黄金魔法の手抜きは仕方がないとは言え、それ以外の要素は底上げするよ……今からね。わかった?拒否権はないからね」

「あいあい。よろしく頼んだぜ、我らが盟主サマ」

「従順なのはいいことだ。あ、君たちもだからね。全力でついてこいよ」

「ウッス」

「あいよ」


 力を高めることに異論はない元・将星たち。戦力拡充の為に始まった鍛錬は、2人の魔法少女主導で進められ……以前とは見る影もないぐらいの強化を齎す。

 カリプスの剣捌きはより速く、より強く、より硬く。

 呪詛の侵蝕スピードも、ラピスの魔法鍛錬によってより素早くなった。

 タレスの毒は種類が増え、二つの毒を同時に撃てるよう死蠍魔法自体に強化パッチが入った。本体の持久力なども改善された。不摂生な生活も二度と送れなくなったが。

 そしてレオード。彼はラピスが望むラインの及第点まで辿り着いた。流石にエルナトが持つ耐久力、魔法少女最強たちの全力攻撃でやっと傷が着くぐらいの硬さまでは手に入らなかったが……戦闘技能、回避技術、戦いながらでも戦術指示ができるような思考回路の獲得など、様々な面でラピスとライトの強化が成された。

 結局、異空間から出られたのは五日後……現実世界では半日以上過ぎてからで、男三人は勢いよくベッドに頭部をめり込ませたのは言うまでもない。

 尚、この後暇になったリリーライト主導の元、暇してた魔法少女全員が異空間でフルボッコにされ、強制的により上のステージに連れていかれるのだった。

 死んでいる為頭打ちの六花-1と違って、強くなれたのは新世代だけだが。


 ラピス?アレは例外である。


「これで盤石だね!」

「だといいけどね」


 半笑いで宙を眺めるラピス。その視線は、徐々に近付く戦場をただ見つめる。

 戦争の時は、すぐそこに。


 夢星同盟軍と暗黒王域軍……その本軍が衝突するまで、残りあと僅か。








꧁:✦✧✦:꧂








 そして。


「そろそろ……悪夢、集めよっかな」


 悪夢の大王から、夢貌の災神を目指して───ラピスの歴史の一頁に、新たな偉業が。宇宙を震撼させる伝説が、刻まれる。


鍛えるまでもなく最強の黄金

 vs

鍛えまくって強くなった蒼月

 vs

ダークライ        ファイ!!

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― 新着の感想 ―
蒼月「強化かぁ、、まあこんぐらいでいいでしょ」 へびさん「うおおおおおおお!!!!わーーい!!!!!」
「筋肉が足りない、髪質が少し落ちてる、目のクマがよくない」 過去の経験から見れば、「蒼月」はこれを言う資格がない人でしょう(笑 やはり不死身を頼りに眠らない仕事だ 「ウルグラ全員悪夢堕ちさせろ」 …
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