28_Run through a Night 〈罠の研究家〉
第三十九話「Run through a Night」。サブタイトルは「罠の研究家」。
探索者としての切り札を手に入れようと真摯に学ぶコルフ。
彼の通うグラジラムの私塾の隣では、 魔術師街の迷い道問題に力を貸した変わり者ポンパ・オーエンが暮らしている。
ニーロとキーレイという迷宮都市屈指のセレブリティの訪問、協力要請に浮かれているポンパは、豪勢な夕食を楽しもうと準備を進めている。
奇抜な外見に似合わぬ美しい食器を揃えていたポンパだったが、そこに不躾な態度の客が現れ、慌てて逃げ出すことに。
〇ジュスタン・ノープ
ポンパを訪ねてきた髭もじゃの大男。
へらへらとした態度で不躾に問いを繰り出し、魔術師から警戒されている。
登場時の年齢は26歳。彼の正体については、次のエピソードで明らかになる。
― 迷宮都市豆知識 ―
□脱出の魔術の練習場所
新たにグラジラム・ポラーの私塾に通い出し、コルフは脱出の魔術を会得しようとしている。
新しい師が言うには、脱出の魔術に向いているのは『黄」の迷宮らしい。
最初のうちは敵や罠の危険がなく、「橙」と同じ形で地形の把握がしやすいというのが主な理由。
他人を巻き込まない為にも人のいないところが良いと言われて、コルフはおそるおそる危険な迷宮へ向かっている。
□怪しげな訪問者
迷い道問題の解消の為にニーロたちに手を貸し、ポンパは浮かれて御馳走を用意している。
そんな中突然やって来た客がおり、誰が来たのか家主の魔術師は考える。
現れたのはヒゲの大男で、期待していたような相手ではない。
まともに名乗りのしない男の訪問をポンパは訝しみ、適当な答えでその場をごまかそうとする。
□追いかけられて
ジュプと名乗った男は去ったが、不穏な気配を感じてポンパは家から抜け出す。
魔術師の想像通り、自分を追う者がいると気付いて必死になって逃げるが、走力に自信はなく、思い切って目指す場所を変えた。
仲間たちの暮らす売家街よりも手前にある、「藍」の迷宮の入り口だ。
準備がなければ入れない場所だと考え、諦めてほしくてポンパは渦へ飛び込んでいるが、追っ手は諦めずに魔術師を追って迷宮に足を踏み入れている。
ちなみにポンパは決して外食はしない。気に入った店に人の少ない時間に訪れ、テイクアウトしておうちで一人で食べる。シチューは鍋で買いに行く。
□魔術師ザックレン・カロン
客に言及された魔術師ザックレン・カロンについて、ポンパは考えを巡らせている。
まだ若く、野望を持った危険な魔術師というのが、ポンパの抱いた印象のようだ。
三つも家を持つにはかなりの資金が必要だ。まだ若いうちに大金を稼ぐには、良い仲間を見つけて探索に励むか、悪事に手を染め稼ぐしかない。
□罠の研究家、ポンパ・オーエン
ポンパは魔術師だが、迷宮内の罠についての研究も進めている。
黄と青以外の迷宮の上層ならば罠の配置や仕組みのほとんどを把握しており、魔術を駆使しながら「藍」の道を駆け抜けていく。
ニーロから魔術の扱い方についても手ほどきを受けていて、弱い敵ならば軽くあしらうこともできる。
とはいえ、痩せた体で体力はなく、走るのも遅い。逃げながら魔術を振るうのは難しいことで、追っ手はなかなか振り切れない。
□迷宮内での追いかけっこ
ポンパが迷宮の中に逃げ込んだのは、諦めて去って欲しかったから。
ところが追っ手はどこまでもついてくる。追っ手が諦めなかったのはポンパを捕まえなければという焦りと、魔術師の足が遅いこと、見た目が弱そうだったからなど、いろいろとある。
ポンパが人間相手に魔術を使わないようにという教えを守っていた為に、追いかけっこは思いのほか長く続いてしまう。
□罠の発動
追っ手の足止めに利用しようと考え、ポンパは魔術を駆使し、逃げながらもいくつかの仕掛けを作動させていく。
積極的に危険な目に遭わせようとしているとしている訳ではないが、研究家としては人がひっかかるとどうなるのか、実際に目にしたいという欲望も抱いているようだ。
□六層目の大仕掛け
結局逃走は六層目まで続き、ぎりぎりまで迫る追っ手から逃れるべく、ポンパは大穴を利用しようと考える。
見た目にもわかりやすく有名でもある大穴に確実に落とすべく、壁を走ってスイッチを避け、天井から降る蛇まで利用して、ようやく男たちの手から逃れた。
□悪夢からの目覚め
追われた恐怖から悪夢にうなされるが、目覚めたのは樹木の神殿で、ポンパはほっとしている。
一方で世話役として現れた神官のロカは、おかしな頭のくたびれた男の正体がわからず、戸惑いながらも神官長の姿を探しに行く。
運よくカッカーの屋敷にはニーロがおり、ポンパに事情を聞き、現れた男やザックレンの問題について一緒に考えてくれる。
□ニーロとフォールード
売家街へ向かう為の護衛役として、ニーロはカミルとフォールードを連れて来る。
フォールードは恩人である「チュールの元仲間のラーデンの弟子であるニーロ」を気にしており、ここでやっと少し話せた形だ。
フォールードはポンパの髪型を容赦なくいじり、ニーロにも結った方がいいのではと言われてちょっぴりショックを受けてしまう。
□仲間は頼りにならず
夜の間に起きた出来事を聞き、ニーロは身を隠すべきだと話す。
協力関係にある探索者四人組に頼るべくそれぞれの家に向かうが、現れた「仲間」たちの態度はそっけない。
ニーロの家にも匿ってもらうことはできず、仕方なくポンパは自宅の護りを固めることに決めた。




