27_Addicted 〈最果てのふたり〉
第三十八話「Addicted」。サブタイトルは「最果てのふたり」。
迷宮都市のど真ん中には魔術師たちが屋敷を構えている。
「橙」を除いた八つの迷宮の中央に当たるエリアは長らく入り口が隠されているのではないかと考えられ、捜索が為されていた。
結局真ん中には迷宮の入り口は発見されず、後から住宅街として利用されることになった。
既に周囲を囲むように建築が進められていた上、なんとなく、迷宮に囲まれているのは怖いから。
そんな理由で魔術師達が住み着いた「ど真ん中」では、望んだとおりに進めなくなるという異変が起きている。
困っていた街の住人からなんとかしてほしいと頼まれたのは樹木の神官長キーレイで、ニーロと共に調査に出かけると決まる。
ニーロはなぜかウィルフレドを誘い、三人で魔術師街へと向かった。
〇 ポンパ・オーエン
ニーロと懇意に?している魔術師。迷宮内の罠の研究をしており、魔術での感知や解除の方法を追求している。
初登場時の年齢は三十三歳。ひょろっとした体にぼさぼさの髪、左半分は癖ですべて抜いてしまって禿げているという目立つ外見の主。
残っている右半分の髪は長く、白髪が多い。
人付き合いは苦手だが、キーレイやニーロのような有名人には興奮してわけがわからなくなる。
基本的に口調もおかしな男だが、その理由は何度も罠にかかってきたから。
生き返りを繰り返すと人格は崩壊していくと考えられているが、度重なる恐怖体験も歪みの原因になる。
もともと内向的で、子供時代に虐められていたという経緯もあり、ポンパは他人とのちょうどいい距離感を学ばないまま大人になっている。
― 迷宮都市豆知識 ―
□迷い道現象
街の真ん中には用はなくとも、通り抜けができないとなると商人たちは困ってしまう。
迷い道の現象は以前から確認されていたが、少しずつ頻度が増し、もうまともに通ることはできなくなってしまっている。
配達や輸送、移動の不便など、問題点はいくつもあるが、魔術師をどうしたらいいのかわからない。
街の人々はそう考え、「キーレイ・リシュラならなんとかできる」理論で樹木の神官長へ解決するよう頼んだ。
□ウィルフレドも連れていく理由
キーレイはニーロに相談し、協力を取り付ける。
この時ウィルフレドの同行を提案したのは、キーレイとは違った圧にできると考えたから。
キーレイは逆らえない相手ではあるが、直接他人に圧をかけたりはしない。
小狡い考えで誤魔化してやろうとする者がいた場合、ウィルフレドならうまくシメられるはず。
□協力者ポンパ・オーエン
ニーロをちゃん付けで呼ぶ奇妙な魔術師がここで登場する。
ポンパは迷宮に足を運ぶ探索者であり、罠の研究家でもある。
ニーロとは偶然に出会い、ベリオと似たような感覚で声をかけ、縁が始まっている。
罠の種類の網羅や動作の仕方の解明などを目標にしているものの、成果は芳しくない。
ニーロも手を貸してはいるが、まだ数回程度で、今後の活躍に期待するしかない。
ちなみに食と器にはこだわりがあり、金をかけている。
□迷い道の仕掛け人
魔術師街で暮らしているからか、ポンパは悪戯をする三人の名をすぐに教えてくれる。
ニャンク、ローズィン、そしてホーカ・ヒーカムが人々を困らせている犯人だ。
主体となってやっているのはホーカであり、他の者は便乗しているだけだとポンパは言う。
ただし、魔術の力で敵わなかったり、交渉下手なせいで事態を静観していたようだ。
他の魔術師たちもスルーを決め込んでいるが、ポンパ同様相手が悪いと考えているから。
実力以上にキャラクターとして扱い辛い、触れてはならぬもの。
迷宮都市で暮らして二十年にもなる女魔術師は周囲からこう思われている。
□面倒なやりとり
最初の一人、ニャンクを訪ねると妙なやりとりが始まる。
ニーロとしても面倒臭いことこの上ないのだが、とりあえずは乗ってやらないと会話が始まらないので答えている、というのが実情。
ニャンクはキーレイの姿に気付くなりぺこぺことし始め、悪戯はすぐにやめると答えた。
□迷子のウィルフレド
二人目の魔術師ローズィンを訪ねに行こうとして、ウィルフレドは二人とはぐれてしまう。
ニーロとキーレイの微笑ましいやり取りに気が緩んだ瞬間の出来事で、戦士はしばし一人で彷徨うことに。
ヴィ・ジョンからもらった鍵が輝きだし扉が現れるが、一人でホーカ邸に向かう歩はどうかと考え、ウィルフレドはこれを無視した。
□夜の神官との再会
迷い道を彷徨っていたウィルフレドは、夜の神官ラフィと再会する。
魔術師街に起きた異変を知る為に歩いていたというラフィは、迷宮都市にある九つの神殿を巡っていると話した。あとは樹木の神殿だけで、神官長を紹介してほしいなどと言われ、二人で歩く。
自然と手を繋がれ共に歩いていくうちに、二人は「青」に近い街の北西に辿り着いている。
次の日に会う約束をして別れるが、並んで歩いているだけでどうしようもなく心が惹かれてしまい、ウィルフレドは平静を装いつつ、内心で悶え続けていた。
□なんとか帰宅
ラフィと別れた後、ウィルフレドは樹木の神殿へ向かう。
キーレにははぐれたことを誤られるが、ニーロは魔術師と共にいたのか問われる。
次の日にラフィを連れて来た際にも、神官らしくない、とニーロは言い放つ。
□ホーカ・ヒーカムの屋敷へ
ニーロに同行を提案され、ラフィを伴って四人は件のホーカ・ヒーカムの屋敷へ向かう。
ヴィ・ジョンが現れ四人の客を招き入れ、対応にもあたっている。
家主の魔術師は姿を見せず、なぜかキーレイとラフィの二人が向かい合って話を進めていくことに。
□迷い道の終わり
ヴィ・ジョンはあれこれと誤魔化そうとするが、夜の神官に目を向けた瞬間様子がおかしくなっていく。
急に汗を噴き出し、震えながら悪ふざけについて謝り、即座にやめると誓いだす。
最後にニーロにまた来てほしいと頼んでくるが、冷たくあしらわれて終わる。
□ふたりきり
ラフィと二人で残されたウィルフレドは、美しい神官と言葉を重ねていく。
迷宮に足を踏み入れているという台詞に驚き、会話の中で深く溺れていく。
「黒」の迷宮に足を踏み入れ、夜の神官の戦い方を見せてもらったりするが、それも些細なこと。
自身が迷宮都市へやって来た目的と、いくつかの心残りに後ろ髪を引かれているが、最後に残ったのは美しい神官への恋慕であり、ウィルフレドは正直に自身の心を伝える。
ラフィは戦士の思いを受け入れ、二人は唇を重ね、心を合わせた。




