X8_Blocked the Passage
第三十話「Blocked the Passage」。サブタイトルは「嘘が導く」。
狭い路地裏をのろのろと歩いているのは、調査団員のチェニー・ダング。
仲間であった「五人組」へ酷い裏切りを働いたのち、彼女は本当に調査団へ戻ったようだ。
そんな彼女の前に現れ、ヌエルはデルフィの行方を知らないか問う。
そんなヌエルは古い友人との再会を果たすべく、しばらく顔を出していなかった馴染みの店へ向かう。
〇 ゾース
迷宮都市で酒場を経営している男。
南門の市場近くでひっそりと営業しているその店は、「はぐれ者」を受け入れる数少ない場所だ。
ゾースも同じ思いを抱えて生きてきた為、同性愛者などが安心して過ごせる場所を用意しようと考え、長年労働に耐えて「ゾースの小瓶」を開いた。
登場時の年齢は三十八歳。
マージ、ヌエルについてはよく知っており、迷宮都市に流れ着いた若い二人を世話していたことがある。
― 迷宮都市豆知識 ―
□チェニーとヌエルの再会
デルフィを連れ帰った日にチェニーは追放され、ヌエルとは久しぶりに顔を合わせている。
神官の行方を手荒に尋ねるヌエルに対し、チェニーは強気な態度に出る。
しかし女はやせ細り、随分弱っているようで、地面に組み伏せられてしまう。
□ゾースの小瓶
チェニーから情報を得られなかったヌエルは、街の南にあるゾースの小瓶へと向かう。
会いたいと願っていた友人が姿を現し、こちらも久しぶりの再会を果たしている。
普段は女の格好をし、マージと名乗るスカウトのジャファトへ、人探しをしていると打ち明けるヌエル。
背の高い男が好きなジャファトなら、どこかで目にし、気に留めたのではないかと考えてのことだ。
□探されているギアノ
ヌエルの口から出てきたギアノの名にマージは動揺したが、外見の特徴がうまく説明できないというギアノの特性のおかげでなんとか誤魔化せたようだ。
友人の不審な態度にマージは不安を抱き、なんとかギアノに伝えたいと考える。
マティルデへの相談はあまりうまくいかず、半端な情報が伝わってしまうことに。
□レテウスは面食い
ユレーの見立ては正しく、マージでは絶対にレテウスは落とせない。
□アデルミラとマティルデ
レテウスの様子を確認しにいったユレーたちと別れて、マティルデは一人、カッカーの屋敷を訪れる。
迎えてくれたのはアデルミラで、ティーオの救った女の子が無事だとわかって喜んでくれる。
マティルデはまったく覚えていないが、解毒や回復などの初期治療をしたのはアデルミラだ。
□一人で来られた
マージとユレーの姿がないことで、ギアノは一人でやって来たのかと尋ね、マティルデはついそうだと嘘をついてしまう。
回復や成長を喜んだギアノは、お菓子の試験販売の売り子をしてくれないかとマティルデに持ち掛ける。
□一日目の失敗
勢いだけで「できる」と言い張ったマティルデだが、案の定一人で歩くのは難しかったようで菓子の販売には間に合わなかった。
途中で会ったキャリンの手を借りてなんとか辿り着くも、仕事はすべてアデルミラ一人で請け負うことに。
尤も、マティルデが間に合ったところでアデルミラの仕事が軽減されることはないだろう。
□二日目も失敗
前日の失態を繰り返すまいと早く起きたマティルデだったが、結局二日目も辿り着くことはできなかった。
迷宮都市の通行量は場所や時間帯で大きく変わる。街の南側は労働者が住むところで、早く家を出る者が多い。
結局店に辿り着くことすらできなかったが、夕方になってギアノが訪ねてくる。
無理はしなくて良いと優しく励まされ、マティルデは自分の不甲斐なさに落ち込んでしまう。
□マージの異変
落ち込むマティルデに対し、マージはギアノへの伝言について尋ねる。
言わなくて良いと言ったはずの伝言に何故こだわるのか。マティルデは訝しみ、マージを追求する。
なんとか隠そうとしたものの、マージの動揺は大きく、いくつかのヒントをうっかりこぼしてしまうことに。
□不安に突き動かされて
マージの言動がひっかかり、マティルデは不安のままに家を飛び出す。
三日目の朝はなんとか道を駆け抜けて、ぼろぼろになりながらもなんとか一人でカッカーの屋敷に辿り着くことができた。
□ギアノへの伝言
取り乱しながらも、マージの友人の「ヌー」が、ギアノと「背の高い神官」と会っていないか探っていることが伝えられた。
□反省タイム
マティルデは自分の恋心の芽生えをはっきりと自覚していないが、ギアノと親しげにしているアデルミラに嫉妬の感情を抱いている。
そんな相手にこれ以上なく親切にされて、ついでに年齢に関しても大きく思い違いをして、さすがのマティルデも反省したようだ。
□いくつもの嘘
菓子の販売が無事に終わって、マティルデはギアノから労われる。
神官の知り合いについて、ギアノはもちろん気が付いているが、マティルデを巻き込まないため、デルフィたちの行方について不穏を感じ、嘘の答えを告げる。
このエピソードには大小さまざまな嘘が溢れている。
相手を想っての嘘もあるし、保身のための嘘もある。
いくつもの偽りが行き交い、登場人物たちの運命を動かしていく。
□アデルミラとアダルツォ
ギアノが立ち去り、マティルデのもとにアダルツォがやってくる。
雲の神官兄妹はよく似ていて、特に椅子に座った状態だと見分けるのが難しくなる。
とはいえ、声はもちろんアダルツォの方が低いし、話し方もかなり違うので、気付かなかったマティルデも相当にぼんやりしている。
□ギアノとマティルデの相性
マティルデとギアノの間に流れる空気にはほんのりと恋の気配があるのだが、マティルデは探索者になりたい気持ちが強く、ギアノは自身に恋愛の機会はないものだと刷り込まれており、進展はどちらかがかなり頑張らない限り望めないだろう。
□ガールズトーク
アダルツォからの質問を受け、ユレーとマージに「恋人になる方法」を知っているかとマティルデは問う。
ユレーもまともな恋愛にはあまり縁がなく、マージは憧れを語るばかりで現実味がない。
二人はとうとうマティルデの恋が始まったのか期待したが、そうでもなさそうだと気付いて肩を落とす。
探索者にはならずに、結婚して幸せになってほしいとユレーたちが願うのは、マティルデを可愛く思っているだけではなく、夢の大きさに対し努力ができない駄目な部分を見越してのもの。
魔術師になるためには、学ぶ努力と大金を支払うための労働がかかせない。
どちらも実現するにはハードルが高く、マティルデには無理だと感じているのだろう。
□ミッシュ商会の男
ヌエルの変わりように戸惑いつつもマージは街を歩き回り、背の高い男について友人に伝える。
薬草業者ミッシュ商会で最近働き出した男は、ひょろりとしていて背が高い。
だが、髪の色がデルフィとは違うし、無駄なおしゃべりを止められない馬鹿のようだ。
探していた神官ではないとヌエルは判断したが、この阿呆な新入りこそ、鍛冶の神官デルフィ・カージンだ。




